心を入れ替えた?
次の日。
朝食を終え、エディがアイシャさんの手伝いを買って出ているうちに、ジャンと家を出た。
「よく来たね、アリー」
クリスに渡されたメモの場所を訪れる。1階が酒場になっている、どこにでもあるような宿の1室だ。
「協力してれるって言ったわね。お願い、私とジャンを逃がして」
クリスがうんとうなづく。
「幸い、この町までは突き止めたけれど、二人は見つかってないようだ。見つかっていればすぐに接触があるはずだからね」
西地区から移動したことを知らないのかもしれない。
住んでいたときの知り合いにはどこへ引っ越したか言っていない。
それに、アリーという名で探しているのかも。
あれ?でも、私のことを探せないのに、どうしてジャンの存在を知ったんだろう?
「馬車を手配する。そうだな、他に女性も雇おう。子連れの女性がいいかな。それでアリーが男の格好をするのはどうだ?」
「え?男の格好?」
「そうすれば、ジャンともう一人の子供と女性、それから男の格好をしたアリーで、夫婦と2人の子供の家族に見えるんじゃないか?」
「すごいわクリス!そうよね、きっと探すなら、母と子の親子を探すわよね?夫婦を探したりはしないわよね?ありがとう!そこまで考えてくれて!」
念のためジャンに女の子の格好をさせようかしら?そこまでする必要はない?
「じゃあ、男物の服を買って、それから馬車の手配と協力してくれる親子を探して来るよ。君はここで待っていてくれるかい?」
うんとうなづく。
「悪いけど、そのためのお金をもらえるかな?」
ぎくりと体がこわばる。
いいえ、これは想定していたこと。ここに来る前にギルドでお金をおろしてきている。
「どれくらい必要かしら?相場が分からなくて……」
いくら吹っ掛けられるだろうか。
「そうだな、金貨2枚もあれば」
「え?」
驚いて思わず声が出た。たった金貨2枚でいいの?もっと大金を提示されるかと思ったのに。
……ってことは、本当に必要な分だけの金額を口にしたってこと?
「手持ちがなければ、僕が補うよ……。ほら、もともと、償いのつもりだったし」
私が声を上げたのが、そんなお金はないから驚いたとでも解釈したのか、クリスがすぐに答える。
「……ごめんなさい、クリス……」
財布から金貨3枚取り出してクリスに渡す。
「え?金貨3枚?」
「残りのお金で、ジャン用の女の子の服もお願い。それから当面の携帯食など移動に必要なものも買ってきてくれる?残ったお金は……クリスへのお礼よ」
クリスがにやっと笑う。その顔に一瞬ひるむ。悪だくみしているような顔だ。
「お礼なんて……でも、ありがたくもらっておくよ。じゃあ、ちょっと待っていて」
お釣りがもらえるというので笑っただけだよね。それだけで、悪だくみだと思うなんて、私はよほどクリスのことを疑う癖がついているのだと思う。
一度クリスは部屋を出て行ってから、数分で戻ってきた。
「これ、もしかしたら少し時間がかかるかもしれないから。お腹がすいたら食べて。部屋から出ない方がいいだろうから」
下の食堂でもらってきたのだろうか?
パンと水を手渡された。
私への償い……か。
さすがのクリスも、まさか自分のせいで私に子供ができたと知って良心が痛んだのかもしれない。
一晩だけのつもりが、この先の人生全部が、あの一夜で変わってしまったのだから。
「ありがとう」




