決意
「ジャンが待っているのだから、話があるなら早くしてよ」
せっかくおいちいおいちいって言ってケーキを食べているかわいいジャンの顔が見られると思ったのに。
ジャンが食べ終わっちゃうわ。
「あの時の彼……ジャン君?の父親が亡くなっただろう?」
勿体付けた話し方にイラつきつつ次の言葉を待つ。
「息子が亡くなったことでショックを受けた父親、つまりジャンの祖父がどこでかぎつけたのかジャン君の存在を知った。それで狙っている」
え?
「ね、狙っているって……?引き取りたいってこと?」
クリスがさらに声を潜めた。
「母親はいらない、跡継ぎだけ欲しいそうだ」
ショックで顔が青くなる。
「それって……」
ジャンだけを連れて行こうとしているということ?
私からジャンを奪って……跡継ぎとして……引き取る……。
はぁ、はぁ、はぁ……。
あまりのショックに呼吸がうまくできない。苦しい。
「この町にいる限り、すぐに見つかると思う。ジャン君を手放したくないなら、早く逃げた方がいい」
に、逃げる?どこへ……。
「逃げるつもりなら連絡をしてくれ。馬車の手配とか、できるだけ協力する」
クリスが協力?
「どうして?」
もしかして私が冒険者として稼いでいることを聞きつけて、お礼にお金をくれということ?
「言ったろう、さすがに申し訳ないことをしたと思っているんだ。まさか、子供を一人で育てているなんて思わなくてさ。せめてもの償いだよ」
クリスは紙切れを私の手に押し付けると去っていった。
「マァマー」
ジャンの呼びかけにハッと意識が戻る。
「ジャン、どうしたの?」
ジャンの皿はすっかり空になっていた。
「あにょね、ジャンね、もっとたべえる」
「じゃあ、ママの分けてあげるね」
勝手に食べないところがジャンのいいところ。本当にいい子に育っていると思う。
……可愛くて、いい子で、大切な、私の宝もの。
この子を奪われるの?
「どちたの、ママ?いたい、いたいちたの?」
ジャンがいない生活を想像しただけで、涙がこぼれてしまった。
ジャンが心配してケーキを食べる手をとめている。
「ううん、大丈夫。目に、ゴミが入っただけ。それで、ジャン、どれを買って帰ろうか?どれがおいしかった?」
「じぇんぶ!じぇんぶじぇんぶ!」
両手を万歳してジャンが主張している。
「ふふ、全部は無理よ。私とジャンと、アイシャさんとエディと4つ」
指を1本ずつ立てて4を作る。
「えっちょ、ジャンと、ママとあいちゃばぁたんと、パパしゃん、よっちゅ」
ジャンが真似して4本指を立てる。二歳の二本はできないけれど、4は得意だ。
ケーキを4つ包んでもらう。
……4つのケーキ……。
4人分の、ケーキ。
重たくないはずなのに、やたらと重く感じる。
ああ、そうか。
もう、これが最後かもしれないからだ。
大切で幸せな時間……。4人で食卓を囲むのは、今日で最後になるかもしれない。
最後の晩餐の重みなんだ……。
ジャンと手をつないでのろのろと街を歩く。
この町にいればすぐに見つかると言っていた。
ならば、町を出なければ。
ジャンと二人で。
だけど、親子で町を出る人なんてそれほど多くはない。門番の記憶に残るだろう。あとを追おうとすればすぐに足取りがつかめてしまうはずだ。
どうしたらいい、どうしたら……。
ジャンを奪われないように家にずっといてもらう?
師匠なら守ってくれるはず。
……いいえ。これ以上迷惑はかけられない。
相手は、たぶん貴族だ。ヒガナカさんは戦争に向かった。部下がいた。貴族のクリスと友達で、親は跡継ぎにとジャンを狙っている。
庶民ならそこまで跡継ぎが必要な者は少ないだろう。
それに、母親である私ごとジャンを迎え入れる気がないのは「息子をたぶらかした女」だとか「母親が庶民など体裁が悪い」とかいくらでも貴族なら理由を並べるだろう。
……平民であることが気に入らないというのなら、伯爵令嬢であることを伝えれば解決するのだろうか?
いや、そんな簡単な話ではないかもしれない。私やジャンの気持ちを無視して連れ去ろうと考えるような人たちなら、たとえ私もジャンの傍にいられると言われても、どう扱われるかわかったものではない。ジャンが不幸になるのは受け入れられない。
貴族相手では、いくらアイシャさんの腕っぷしが強くても抵抗できないこともあるだろう。ジャンを守ってなんて頼めない。
やっぱり、逃げるしかないのだろう。
あんまり関係ない話をあとがきにかいてあるのが嫌いな方はごめんなさい。読み飛ばしてくださいね。
ふるさと納税でジャムを頼みました。
はじめて「あんずのジャム」を食べました。たっぷり果肉がゴロゴロ入ったあんずのジャムです。
そもそも「あんず」を「あんず」だと意識して食べたことがなくて「あんず」ってどんな味?すら知らなかったので「ほほー、これがあんずか」ともぐもぐ食べたのですが。
いや、あんずってなんなん?!名前は知ってるけど、売ってるの見たことないんだけど!となって調べた。
アプリコット……あ、なんか急に異世界ロマンスっぽくなったぞ。
そうか、アプリコットのことだったのかぁ!
って、アプリコットってなんなん?売ってるの見たことないよ!となり、再び調べる。
……うん、梅みたいな見た目?いや、画像みたら桃みたいなんだけども?
というか、この花……。
調べたら「桜、梅、杏子、桃」の花の見分け方みたいなサイトがガンガンヒットしたんだけど。
これって、つまり……異世界転生した主人公が桜の花がうんたらかんたらのところに、アプリコットの木があれば「あ!」ってなるってことだよね?
……。「桜じゃなかった……」みたいになくも良し。「懐かしい気持ちになる」と癒されても良し。
一つ賢くなったわ。桜よりも梅や桃っぽいとはいえ、どちらにしてもアプリコットは和風。
以上、このジャムのケーキに関して執筆メモでした。普段こんな感じで調べものしてアイデア蓄積してるんよ。




