反省の色
テラス席に入ってきて私とジャンの座っているテーブルに許可も取らずに腰かけた人物が私の名を呼んだ。
「ど、どうしてあなたが……」
ジャンがクリスの顔を見て首を傾げた。
「だぁれ?」
「うん、お兄さんは君のパパの友達だよ」
「パパしゃんの?」
「クリスっ」
席をたち、クリスの手を引いてテラス席から降りる。
「ジャン、ちょっと食べててね!」
ジャンが見える位置に立ち、クリスをにらむ。
「何しに来たのよ!あんな……あんなこと……しておいて……!」
声を荒げればジャンが気にするだろうと声をひそめてクリスに詰め寄る。
「……いや、すまなかったよ。あれは人助けだよ……その、どうしても戦争で死んでほしくなくて……俺も苦渋の選択だったんだよ」
よく言うわ。
私をカモにしてひっかけたけれど金にならなかったから売ったって知ってるんだから。
「それで?」
「いや、だから……すまなかった。君に合わす顔がなくて逃げてしまったんだ」
お金を持って高跳びしたの間違いでしょう。
「それにしても、まさか子供が……」
「何しに来たのよ。まさか、あの時の彼に頼まれて?」
クリスがにやりと笑った。
「いや、君が彼のことを知らないなら教えなければならないと思って来たのさ」
「え?」
ジャンの父親のことは確かに気にはなっていた。ジャンが父親がどういう人なのかと気になったときに教えてあげられることが何もないままでは困ると。
本当は二度とクリスの顔なんか見たくない。だけど……。
ジンクスなど信じないと彼は言っていた。だけれど、部下のためにと大金を払って一夜の花嫁を求めた。
自分のためではなく人のために。そんな優しい人がジャンの父親なのだ。
テーブルでおいしそうにケーキを食べているジャンをちらりと見る。
ジャンがいると知れば無下にするようなことはないとは思う。だけれど……。
複雑な気持ちに胸がもやもやする。
「アリーは彼のことを何も知らないんだろう?」
「そうよ……生死さえも分からないわ。……彼は、無事に帰ってきたんの」
クリスは笑いがこらえられないとう表情をしながら死を語った。
「いいや。彼は亡くなったよ」
人が死んだというのに、なぜクリスはそんな表情なの?
「そう……なくなってしまったの……」
ジャンの父親は、本当にいないんだ……。
もしかしたらいつか現れるかもしれないと。
どこかで生きていてくれるかもしれないとそう思っていたのに。
一夜の花嫁のジンクスも役に立たなかったのね。
「クリス、何がおかしいの?」
「え?いや、何もおかしくはないよ?笑ってるように見えるのはいつものことだろう?」
言われてみればそうかもしれない。いつもへらへら笑っているような表情をしていたような気がする。
あの頃は明るくて優しい表情だと思っていたのに。今は軽薄で締まりがないようにしか見えない。
「彼が亡くなってしまったことを伝えに来てくれたのね。用がそれだけならさようなら」
背を向けてジャンの元へ戻ろうとすると、腕をつかまれた。
「待てよ」
「まさか、今更結婚しようなんて話をしに来たんじゃないわよね?彼のこと以外もう私に伝えるようなことはないでしょう?」
クリスが私の頬を指でなぞった。
ぞわりと背筋が寒くなる。
「そう怒るなよアリー。本当に俺は反省したんだよ、だから伝えに来たんだ」
腕を振り払って2歩後退して距離をとる。
距離をとったというのに、クリスは再び私に近づいた。
「大きな声では言えない話だ」
内緒話をすると言われればこれ以上距離をとることもできない。
さて、もうすぐ終わる、もうすぐ、クリスが出てきたもの。
ところで、クリスって、男性名だと思ってたら、女性キャラにクリスって付けられている作品を目にして、あれ、私間違ってた?と慌てて調べました。
クリストファーとかなら男性、クリスティーナとかだと女性、どちらにもクリスは用いられる名前ということらしい。ただ、現代では男性に多くつかわれるということらしい。(国や時代によってさまざま)
なるほど。
というわけで、作品を読むうえで男性か女性か混乱する名前(ただし、わざとどちらかに勘違いさせることは置いといて)を使うのは、私は避けるようにしたかったのに、うっかり使っていたという……。
あああ、もう、本当この作品、どこからどこまでも名前の付け方失敗してる……(血涙)




