表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子連れ冒険者シャリア~婚約者に売られ妊娠したけど元騎士様が代理パパになってくれるそうです~  作者: 富士とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/94

私を探す人

 ジャンを抱っこして街の西側へと足を進める。

 そのケーキ屋は、2か月住んでいたアパートのさらに先にある。

 ……クリスのことを反対されて家を出て住んでいた場所だ。騙されているとも知らずに、結婚できると思って引き払ってからは一度も近づいたことはない。

「おや、アリーちゃんじゃないか?」

 声を掛けられ振り返ると、アパートの大家さんがいた。あの当時はクリスが私をアリーと呼んでいたので、周りの人にもアリーですと自己紹介していたんだ。

 すぐに大家さんの視線はジャンに向けられる。

「結婚するって言ってたけれど、子供も生まれて幸せそうだね。よかったよ」

 大家さんはうんうんと小さく頷いた。

「なんか訳ありそうだったから、心配していたんだよ」

 大家さんの言葉に胸がギュッとなる。あの頃は怪しいものを見るような目で見られているとちょっと警戒していたけれど、あれは心配してみていてくれたんだ。

「悪い男に騙されそうでね」

 はははと豪快に笑う大家さんに、苦笑するしかない。

 しっかり、だまされてましたと心の中で返す。

「賢そうな子だね」

 大家さんがジャンの顔を覗き込んだ。

「おや、不思議な目の色をしているね。なんてきれいな色なんだい」

 ジャンを誉められて自分のことのようにうれしくなる。

「ジャム、ジャムぅ」

 立ち話をしていると、ジャンが退屈そうに私の腕を叩いた。

「はいはいジャン。ジャムのケーキね」

「ああ、あの店に来たのかい。じゃあ元気でね。店子だった子はみんな私の子供みたいなもんさね、また顔を見せにおいで」

 手を振って忙しそうに立ち去る大家さんがくるりと振り返った。

「そうそう、アリーを訪ねてこの間人が訪ねてきたよ」

「え?」

 誰が?

 あのアパートに私が住んでいたのを知っているのは、クリスだけだったはずだ。

 いや、私はどこにいるのかと、誰かがクリスに尋ねたのかもしれない。誰が?

 考えられるのは家族だろうか。クリスと結婚すると家を出たのに、クリスと結婚していないと分かって、私を探している?

「どんな人でした?」

「んー、そうだね、帽子を目深にかぶって半分顔を隠した男だったよ。どうにも風体が怪しかったからね、気を付けなよ」

 顔を隠した男……?

 顔を見られたくないってこと?私を探していることを知られたくない……?

 それはどうして?……まさか、クリスの被害者仲間のヒガナカさん?

 戦争が終わっても現れなかったのに、今更どうして?アイシャさんの宿にいると思わなくてクリスに住んでいる場所を教えてもらったとか?

 ……生きてるの?

 ジャンの父親が、生きてる?

 バクバクと心臓が鼓動を早める。

 生きて、私を探している?子供ができているなんて知らないだろうし……。

 はっと、ヒガナカさんの言葉を思い出す。

『必ず君の元へ帰ってくる』そう言い残して部屋を出て行った。

 誠実そうな人だった。自分のためではなく仲間のためにジンクスにすがろうとするくらい。

 もし、ヒガナカさんが現れたら?

 ジャンを見て、誠実なヒガナカさんなら結婚してジャンの父親になろうとするんじゃない?

 え?結婚するの?私が、ヒガナカさんと?

 代理パパじゃなくて、本当のパパだよとジャンに紹介するの?

 アイシャさんの家を出て、家族3人で暮らすの?

 クリスが自慢するほどの大金を支払える人なら、生活費に困るようなことはないのだろう。

 冒険者を辞めるの?

 家も、仕事も、失うの?

 私を助けてくれたたくさんの人たちの顔が浮かぶ。師匠、ギルド長、冒険者ギルドの同僚たち……それから……。

「エディ……」

 公園へ出かけたあの日のような、三人で過ごす幸せな時間が無くなるの?

 落ち着こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
盲人象を評する。全体像を俯瞰して把握できない者が、部分部分だけを見て見当違いの評価を下す姿を指す諺 下手な判断を下す前に、人を見る目がありそうな大家さんの言葉をもう少し考慮に入れてあげて(苦笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ