高みへ
侵略戦争をしようとしている陛下をとめるために、意見を言えるようミスリル級冒険者を目指すと言っていた。
ミスリル冒険者といえども、平民という立場なら軽んじられるだろう。貴族であれば、話を聞いて賛同してくれる派閥を作り、陛下を動かすこともできるかもしれない。
……エディは、完全に貴族という立場を捨てることはできないんだろう。
私が伯爵家から出て平民として暮らしているように簡単にはいかないんだろう。
「もし、家族になれたら、と、ありもしない未来を想像して……」
首を横に振る。
「私も……エディがジャンの本当の父親だったらいいのにって思ったことがあるの。だから、その、お相子だよ。思うだけなら自由。」
「僕が……本当の父親?」
「ふふ、そう。同じように寝癖つけて髪の毛跳ねている親子なんて、かわいくてしょうがないでしょう?」
わざとらしいくらいに明るい声を出す。
「かわいいと思うなら、ジャンと同じようにかわいがってもいいんですよ?寝癖を直してくれたり」
エディも話題を変えるためにわざと明るい声を作っていると気が付いたけれど、気が付かないふりをしてバカな話を続ける。
私はエディが好き。
エディは私と結婚したい。
でもエディは私に恋愛感情はない。
そして、私たちは結婚できない。
だけど、一緒にいて、笑いあっている。
こんないびつな関係がいつまで続くか分からないけれど。
今はそれで幸せなのだから、もう、これ以上考えなくてもいいのかもしれない。
「さぁ、今日は師匠が角土竜が食べたいっていってたから、依頼の他に角土竜叩き頑張りましょう!」
エディがびっくりした顔をする。
「え?角土竜って食べられるんですか?」
「えーっとね、肉は臭くてかたくてとても食べられないんだけど、角が食べられるのよ」
「角?」
「そう。東の方の国に生えてるタケノコという植物に似ているって言われても分からないわよね?角の皮をめくった内側の部分が食べられるの」
「へぇ~どんな味なんだろう。楽しみです」
あれから、半月。
少しぎくしゃくしたエディとの関係も、ジャンのおかげですぐに元に戻った。
好きだという気持ちは日に日に増しているけれど、だからエディとどうにかなりたいというわけでもない。
ただ、エディがいなくなる日への覚悟だけは忘れずに過ごしている。
「おめでとうシャリアさん!」
冒険者ギルドのカウンターに依頼の品を提出するとミミリアさんが拍手をしてくれた。
「へ?」
「これで、シャリアさんは銅色から銀色へ昇格です!」
「う、うそ、本当に?だって、まだ1か月くらいしかたってないのに?」
鈍色から銅色に上るのに途中リセットさりたりいろいろあって3年もかかったというのに!
ミミリアさんが頷いた。
「そりゃそうよ。銅色なのに、銀色依頼を毎日いくつも同時に受けてたでしょ?ついでに銅色と鈍色もこなしてたんだから、1日でどれだけの昇給に必要なポイントが加算されてたか……」
言われてみればそうかも。
銀色ばかり受けて目立つなと言われたので、銅色と鈍色の依頼も同じ数かそれ以上こなしていたよね。
そうか、私もついに銀級冒険者になるのか……。銅色から銀色に上るのは早いほうだけど、でも登録してから3年と数か月ってことは、普通のスピードではあるよね。トータルすると。
「エディさんは、あともう少しですね。このペースなら、10日くらいで銀色に昇級できるかと」
な、なんだって?
この間冒険者に登録したばかりだよね?鈍色から銅色にあっという間に上がったと思ってはいたけれど、銀色にもあっという間に……。
エディがちょっとそわそわとしている。
「あの、この後少しソロで依頼を受けようと思うのですが……」
エディ、銀級に上るつもりだ。
ラストスパート書いてるよ。
無事に終わるよ。最後までよろしくね!




