結婚したいと言われた
ごはんを食べ終わり、ジャンの見送りで家を出る。
「あの……恋愛対象じゃないというのは」
並んで歩きながら、エディが言いにくそうに尋ねてきた。
こ、これは。
もし少しでも誘惑するような行為をしたら一目散に逃げようとでも思っているのか。確認しようということだよね?
「ほ、本当に、そうだから」
「……」
エディが黙り込んでしまった。
疑われている?
……どうしよう。エディのことが好きだなんて自覚しなければよかった。この気持ちを知られたらおしまいだと思うと、鋭いエディにいつバレるんじゃないかとひやひやして、下手なことを言えない。
今までどうやって接していたっけ……。
「本当に?」
エディが首を傾げた。
くぅー。かわいくて、愛しい!
「ずっと言ってるよね?エディはすごくかわいいの。私にはかわいく見えちゃうから、恋愛対象というより、その……」
エディがふっと笑った。
「子供?」
ここで、はっきりそうだよと言えればいいんだろうけど、さすがに子供じゃないだろうという冷静な気持ちが動いてしまって、あいまいに笑った。
「……そういうのもいいね。僕をシャリアの子供にしてよ」
「はぁ?」
大きな声が出た。
「師匠の子供ならまだしも、私の子供?いやいや、さすがにそれはいろんな意味で無理」
エディが残念だというように眉尻を下げた。
「子供になれば、寝癖を直してもらえて、胸に飛び込んだら抱きしめてもらえる。それに、ずっと一緒にいてくれるんだよね」
何を言っているのか理解できなくて、固まると、エディがハッと我に返った。
手で顔を覆って首を横に振っている。
いやもう、だから、かわいい仕草したって子供にしてあげないから。全部愛しくて好きだけど、子供にはしてあげない。などと頭の中でパニックになっている。
「ご、ごめん、今のは忘れて……さすがに、自分でもおかしなこと言ったという自覚があるから」
「あ、うん……」
よかった。
「自分でもよく分からないんだけど、その、居心地がよくて……」
エディが手を覆う指の間から、顔色を窺うように私を見ている。
「シャリアとジャンと一緒にいる時間が、いつまでも続いたらいいなって……それで……その」
エディがふっと息を吐き出した。
「……結婚したら一緒にいられるかなとか、いろいろ考えだしたら昨日はなかなか眠れなくて」
「け、結婚?」
エディはもしかして私のこと?
両想いなの?
「僕が居心地がいい場所を確保するために結婚するなんて、間違っているとはわかっているんだ」
あ。好きだから結婚したいというわけじゃないのね。
「でも、もし、君がジャンの父親になってほしいと……僕のことを愛してくれなくても、そう言ってくれたらいいなぁなんて思ってみたり……」
はははとエディが乾いた笑いを漏らす。
「結婚できるはずがないのに」
「それは……!」
私がジャンのために結婚してといえば。ごくりと唾を飲み込む。
「僕の住む世界はシャリアとジャンを不幸にしてしまうだろう。二人を不幸にするわけにはいかない。だから、結婚できるはずがない」
エディは貴族だろう。騎士として命の危険がある戦争に赴いたということは嫡男というわけではないのだろう。
それでも、貴族令息であれば、ましてや騎士ということは騎士爵の爵位がある貴族ということになる。
貴族が平民と結婚すれば社交界でどういう扱いを受けるのか。ましてや連れ子など……。
いくら家から出たといっても、嫡男に何かあって呼び戻されるようなことが万に一つもないとは限らない。
それに、エディ……。




