婿
これ以上はだめ。
エディに好きだという気持ちがばれてはいけない。
初めにギルドに来た時のエディを思い出す。誘惑するような女性を嫌悪していたエディ。
恋愛感情を向けられていると気が付けば、私の前から消えるだろう。
いや、もしかしたら優しいエディはジャンのためにと私の気持ちに気が付かないふりをしていてくれるかもしれない。だけど、きっとそれは負担をかけてしまうだけだ。
知られてはいけない。
そして、この気持ちをこれ以上膨らませてはだめ。
いつかエディに好きな人ができたときに、その人へ笑顔で「ジャンの代理パパを買って出てくれるほどやさしい人なの。だからエディを今度は本物のパパにして、幸せにしてあげてね」と言えるように。
エディはくせ毛を直さずにひっこめた私の手を目で追った。
意識しているみたいに思われてはだめ。
「か、かわいいから、そのままでもいいと思うわ」
にこりと笑ってごまかすと、ジャンが「パパしゃん、かわいーね、よちよちよ~」とエディの頭を撫でた。
「ジャンの方がかわいいよ。ほーら、高い高いだ!いい子で待っていてくれてありがとう、ジャン!」
ジャンがキャッキャと喜んでいる。
「ほら、ご飯だよ、さっさと食べてギルドに行きな。依頼が他のやつにとられちまうよ」
アイシャさんの言葉にハッとして、テーブルに着く。
「いつもありがとうございます」
エディの言葉にアイシャさんがふんっと鼻を鳴らした。
「金をもらってるんだ礼を言われる筋合いはないよ」
エディさんが首を横に振った。
「それは違います。いつもより遅くなった僕のために、温め直してくれたんでしょ?」
アイシャさんが照れたように頭をちょっと書いてから、ふぅと息を吐きだした。
「まったく、ワシがあと10歳若けりゃ婿にしてやったのにねぇ」
「師匠、50歳くらいでは?」
思わず突っ込みを入れると、アイシャさんはあははと笑った。
「50歳若かったころにゃ旦那がいたから無理さね。いくら目の前にいい男がいても旦那以上の男ないない」
うわー。そうなんだ。
「アイシャさん旦那さんのこと愛してたんですね」
アイシャさんがふっと笑った。
「まぁ、そういうことだから、ワシの婿にはしてやれん」
エディが冗談に付き合って「残念です」と口にした。
「代わりに、シャリアが婿に貰ってやったらどうだ?師匠おすすめの男じゃぞ?」
ぶはっ。
口に含んでいたスープを少しだけ吐きだしてしまった。
「な、な、な、何を……」
テーブルに散ったスープを拭き取ってからエディの顏を見る。
エディは真っ赤な顔をしてこちらを凝視していた。
「エディも知ってるけれど、師匠も知っているでしょう!私はもう男の人はいらない。誰とも結婚するつもりなんてないしエディのことだって、パーティーの仲間としか見てない。ううん、代理パパもしてくれる大切な友人で……恋愛対象としてみることは絶対にありえないです!」
力いっぱい主張すると、エディがふっと笑って、先ほどと同じようなテンションで「残念です」と口にした。
冗談に付き合って返した言葉だって分かっているけれど……。
私の婿になれないのが残念と言ってくれるんだ。迷惑ですと言われなくてよかった……と思うなんて自分でもどうかしている。
「この世に絶対なんてないと思うがのぉ」
ぼそりとアイシャさんが何かつぶやいた。
嫁になるのではなく、婿にする
強い女アイシャ師匠のお言葉でございます。




