乗馬風
「なぁ、ジャン、あれに一緒に乗ろう!」
エディが指さしたのは、本物の馬と同じくらいの大きな木馬だ。
小さな子供だけでは乗れない。
大きな子供や、大人に支えられた子供が使うくらいだ。
「うんっ!」
エディは、ジャンを抱っこしたまま器用に木馬の背にまたがった。
前にジャンを座らせると、手綱を握らせる。
「ほら、ジャン、馬だぞ、うん、まるで同じような視線の高さだな。高さに慣れるにはいいかもしれないな」
騎士だから当然乗馬もできるんだね。
ジャンを前に乗せて、手綱を握るエディの姿に、公園にいる女性たちの視線が集まる。
木馬だというのに、背筋が伸びてとても姿勢がいい。乗馬をしたことのある訓練された人だというのがすぐにわかる乗り方だ。
「ジャン君、今日はパパも一緒なのね」
時々公園で顔を合わせて会話をする人が話かけてきた。
「あの」
エディは違うんですと否定の言葉を口にする前に、女性が話を続ける。
「いい男だねぇ。いや、顔がいいとかそういうんじゃないよ。あんなに子供の面倒を見てくれるなんて羨ましいよ」
「ありがとうございます」
エディを誉められて、ついお礼を言ってしまった。
違う、父親じゃないの。父親じゃないのに、ジャンの面倒を見てくれる。いい男なんです。と、言おうとしたら、女性は子供に呼ばれてその場を離れた。
「ママー、ママー!」
ジャンが木馬の上から私に手を振っている。
見上げると、エディと視線が合った。
「シャリアも乗る?」
エディが私に手を差し出す。
「え?いや、私は……」
乗馬はしたことがない。いや、それが普通なんだけれど。
私も、乗るの?
「ママも、ママもよー」
ジャンが呼んでいる。
「さぁ、お姫様、お手を」
ジャンが王子のような顔でいうものだから、うっかり手を出してしまった。
普通の人なら絶対に無理だろう。いや、ギルド長とかできそうな人はたくさんいるか。
馬上から体を引き上げられ、横向きで木馬の上に座る。ジャン、私、エディの順だ。
本物の馬と違い、丸太の上なので、難なく3人座ることができるけれど……。
それでも十分な広さがあるわけではなくて、エディの体に密着する。
ひゃー。冒険者の服と違って、今日はラフだ。薄っぺらなシャツ越しに、エディの鍛えた筋肉の感触が。
「さぁ、しっかりつかまって。どこへ行く?」
「うんと、パン屋しゃんっ!」
ジャンの言葉にエディが田主名を握りなおした。
「じゃあ、パン屋へ行こう!」
「パカパカパカ」
ジャンは上機嫌だ。
「パン屋に到着!次はどこに行く?」
「うんと、うんと……パン屋しゃんっ!」
ジャンの言葉にエディが笑った。
「あはは、またパン屋。いいよ。パン屋へ行こう!しゅっぱーつ」
「パカパカパカ」
キャッキャと笑っている。
「よーし、到着だ。2つめのパン屋だぞ!次はどうする?」
「うーんと、うーんと、ママ、ママが決めて」
ジャンの言葉に、エディが私に言葉を落とす。
密着した状態、エディの息が私の髪を揺らすほどの距離に緊張する。
頭が働かない。
「エディは?エディの行きたいところへ行きましょう!」
エディがピクリと反応する。
「僕は……遠くへ。このまま3人で遠くへ行きたい」
3人で遠くへ?
「よしジャン、全力疾走だ右へ進むぞ~次は左だ~しっかりつかまってるんだぞ~ドドドドドド~!」
エディが私とジャンの二人に手をまわして落ちないようにしっかりつかみ、揺らす。
「きゃー」
エディの腕に必死につかまる。
落ちるようなことをエディはしないと分かっていても、揺らされると怖い。
ジャンは大はしゃぎだ。
「あはは、ごめん、怖かった?」
木馬から降りて、青い顔で息をすーはーと大きく吸って吐く。
顏だけじゃないいい男にちゃんと書けてるでしょうか?
ご覧いただきありがとうございます。
馬にのって……そろそろ右に……左に……あ、うん、替え歌でも規約に関わるから書けないのですが、頭にあれが浮かんだ人は歌詞を書かないようにお気をつけください。感想欄やレビューに歌詞を書いても、イエローカード(アカウント停止)になるそうですので。
引き続きよろしくお願いいたします。




