公園へ出かけましょう
アイシャさんの家から南門まで歩いて1時間と、決して近くはない。
「うわー、人が多いですね」
南門に近づくにつれ、親子連れの姿が増えてきた。
「庶民の娯楽は多くはないから……それに今日は空いている方じゃないかな。仕事の休みが集中する月末日と月中日はすごい人手よ?」
エディさんが頭をかく。
「……そうか。庶民は使用人に任せて足を運ぶわけにはいかないですね。娯楽、そういえばあの家には当たり前に絵本があって、シャリアも読んでましたけど、読み書きができる人も少ないんでしたっけ」
エディが私のことを詮索する気はない。事情もちだということは知られているけれど、元貴族だとは思ってないんだろうな。過去はすべて捨てたのだから、それでいい。
南門を出てすぐに目に飛び込んできた光景にエディが声を上げた。
「王宮を真似たって、あれですか!」
「ふふ、そうよ。植木で作られた巨大迷路。どう?王宮と比べて」
エディの目が輝いている。子供のようだ。
ジャンの目もキラキラだ。
「いくにょ、いくにょ!」
ジャンにせかされて、エディの足も早まる。
巨大迷路の中に入ると、迷路の中にちょっとした開けた場所がある。
「王宮だと東屋が設置されていお茶を飲んだりする場所になっているんですよ……こちらの方がずっといい」
広間には大きな木が何本か植えられていて、枝にロープが括りつけられブランコがある。
すでにたくさんの子供たちがブランコで遊んでいる。
「あっちよ、あっち!」
エディがブランコには目もくれずにその先を指さす。
「まだ、何かあるんですか?」
「そう。全部で10か所くらいあるのよ。ここはブランコ広場。迷路も楽しめるし、迷路の先にある遊具も楽しめるの」
エディの目がまた一段と輝いた。
「最高だ!ジャン、案内して、次は何?」
最高……うん。そうなんだと思う。
この町は最高だ。
この公園の維持費を領主が出してくれている。
そして、その費用で公園の維持管理の依頼がギルドに出される。
木の剪定、草むしり、遊戯の手入れ、修復……。
そういった仕事は、孤児院の子供たちや、怪我などで冒険者として活動できなくなった者へと回される。
冒険者ギルドが維持管理にかかわっていて、常に何人か依頼を受けた冒険者がいることで悪さをする者もいないので、子供たちも安心して遊べるのだ。家が近い子供たちは子供たちだけで遊びに来ていたりもする。
ジャンのお気に入りの木馬広場についた。
エディに卸してもらうと、一目散にお気に入りの木馬へと走っていく。
「貴族の家には木でできた馬のおもちゃがあるらしいと聞いて、作ったらしいの」
貴族の家にある木馬は、乗るとゆらゆらと揺れるもののことだ。
この広場に設置されているのは、丸太をいくつか組み合わせて背中に乗れるようになっているだけのもの。
小さい子用と少し大きい子用と、大小さまざまな丸太の馬が設置してある。
一番低くて、自分の力でよじ登れる木馬がジャンのお気に入りだ。てとてとと走っていくと、近くにいたジャンより少し大きな子がさっと乗ってしまった。
「あ、ジャンの!」
「いけないっ」
慌ててジャンに駆け寄り、捕まえる。
「ジャン、順番よ、順番。別の子が先に使っていたら、終わるのを待つの」
4歳くらいの子が乗ってしまった。ここで、ジャンが泣きわめくと、乗っている子を追い出してしまうみたいでいたたまれない。
ジャンを抱き上げて、少し距離を取ろうと思ったら、さっと手が伸びた。




