ジャンの将来
「そう……か。その、それは貴族とかかわるのも嫌ってこと?」
不安げに問うエディに、はっとする。
「違うよ、その別に貴族を嫌っているとかでなくて、エディが貴族でも好きだし」
「好き?」
エディが頬を染めた。
「あ、ああああ、その、そういうんでなく」
口からするりと出た言葉に、焦って言い訳をする。
「ジャンもパパしゃんしゅき。だいちゅき」
エディにジャンがぎゅっと抱き着いた。
「僕も、好き」
エディのつぶやきにほほが赤くなる。
私にじゃない、私にじゃない。今のはジャンのことだ。
「僕も、大好きだー!」
エディが大声を上げ、ジャンを高い高いしてソファから立ち上がった。
「きゃっ、きゃっ、たかーい、たかーい、きゃっ」
ジャンが大喜びだ。
ジャンははしゃぎすぎたのか、食事の途中からこっくりこっくりし始め、食事が終わるころにはすっかり眠ってしまった。
「アイシャさん、食事おいしかったです。あの、これ」
エディが食事を終えるとアイシャさんにお金を差し出した。
「1年分の朝食と夕食代です」
アイシャさんがエディが差し出した金貨に視線を落とす。
「1年分かい?食べない日があっても、返金はしないよ」
エディがにこりと笑った。
「問題ありません。毎日来ます」
「そうかい?じゃあ、計算して釣りを」
「必要ありません。その分時々、ジャンの好きなおやつを、僕にも出してください」
エディは寝てしまったジャンを横抱きにしてソファに座っている。いとおしそうにジャンを見つめていた。
「私……分からなくなってきました」
「え?何が?」
「……ジャンを学園に通わせてあげたいと思っていたんです。そのためにお金も貯めないとと思っていて」
貴族の中では男子は当たり前のようにみな学園にかよった。
女子は半数ほどしか通わなくて、私は親に通わなくていいと言われ通っていない。
3割ほどは平民が通う。騎士科で騎士を目指しす者が多いらしい。ほかに文官を目指したり、貴族とのつながりを求めた商人の息子や娘だったりが通うらしい。
姉は学園に通っていた。学園の話を聞いて、うらやましくて、私も通いたかったと、そういう気持ちをジャンに押し付けているのかもしれない。
貴族が7割も通う場所に行って肩身の狭い思いをするかもしれない。
将来騎士になったとしても戦争に行かされて……。
「だけど、学園に通うことや、騎士を目指すことがジャンにとってどうなのか分からなくくなって……」
エディさんが言葉を選んでゆっくりと話し始めた。
「学園の入学年齢になるころには、親がどう考えていようが子供は子供で思うことがあるから……」
そうか。いつまでも小さな子供じゃない。
「その時、本人の気持ちを尊重してあげればいいんじゃないかな。騎士になりたいと言ったときのためにお金をためて、入学試験に合格できるように勉強を教えて、剣を訓練して……。お金も勉強も訓練も学園へ行かなくても無駄になることではないし」
エディが顔を上げた。
「僕が、ジャンに教えてもいいかな?」
「え?お願いできるなら、嬉しいけれど……いいの?なら、授業料を決めないと」
私の言葉に、エディがひどく傷ついた顔をする。
「授業料なんていらないよ」
「そういうわけには。家庭教師はもともと探そうと思っていたし、元騎士のエディなら願ってもないくらいで、その、あまり多くは払えないけれど……」
「いらないっ!」
エディが大きな声をだした。
びくりとジャンの肩が震え、身じろぎをした。
「ご……ごめん」
エディが頭を押さえてうつむく。
「お金はいらない、家庭教師なんて思われたくなくて……僕がジャンに教えたいんだ……その」
エディが私の顔を見た。




