師匠の先見の明
「あの、休みの前日にご飯を食べに来てくれるとか、そういうのを……お願いしても……」
言葉が尻つぼみになっていく。ずいぶん勝手なお願いだと思う。
でも、次はいつ来るよと言えればジャンの気も晴れるような気がする。ママのお仕事の休みはなんとなく理解しているし、休みを楽しみにすることもしてる。だから、休みの前の日だと言えば、あと何日?と楽しみにして待つことでイヤイヤが減ってくれれば……。
根本的な解決策にはなってないんだけど……。もう少し成長して、ジャンがいろいろなことを理解できるようになれば……。
「え?いいんですか?また一緒にご飯食べても」
私の申し訳ない気持ちとは裏腹に、エディは満面の笑みを浮かべた。
「エディはツデラ鳥を捕まえられる?」
「ツデラ鳥?」
「20階層で飛んでいるやつよ。人を襲うこともないから無視して進んでるけど……お肉がとてもおいしいの!師匠の好物なのよ!」
エディが頷いた。
「じゃあ、休みの前の日には獲って持っていきましょう」
うんと頷く。飛んでいる上に動きも早くて私にはどうすることもできないのよね。
「師匠も喜ぶわ!……っと、師匠と言えば……手紙を預かっていたんだ」
アイシャさんからエディへと渡すように言われた手紙を渡す。
すぐにエディは封を開いた。
「あ、宿の追加料金のお知らせですね」
え?
宿を値上げするの?聞いてないというか、エディは1年分支払ったんじゃないの?途中で値上げなんて怒っていい話だわ。
いいえ、それよりも、アイシャさんがそんな詐欺みたいなことするなんて……。
「何かの、間違いでは……?」
エディが手紙を私に差し出した。
「間違いじゃないといいんですけど」
間違いじゃない方がいい?だって、追加料金が必要って……。
手紙を確認する。
『素泊まりの宿だったが、試しに1年食事付きの宿になるよ。
朝食付きならプラス銅貨1枚。夕食付きならプラス銅貨5枚だ。
宿まで運ぶ手間がかかるからこっちで食べな。』
「え、これって……」
「追加料金を払わないと!払えば、毎日一緒にご飯が食べられますね!」
にこりと笑うエディ。
「いいの?」
「1人で食べるのは味気ないですし、毎日食事を用意するのも手間ですし、それにアイシャさんの作った食事はおいしいですし……何より、かわいいジャンに会える」
その笑顔に嘘はないと思う。
「……師匠は……やっぱりすごいな……」
ジャンがパパしゃんに会いたいと言い続ける問題を予想しただけでなく、エディの負担にならないよう、そして、私が気を遣わなくて済むような解決策を用意しちゃうなんて。
朝食を食べ終わるとエディが席をたった。
「じゃあ、さっそくツデラ鳥を獲りに行きましょう」
「ふふ、20層関係の依頼がないか依頼票を確認しないと」
銀級の依頼は残念ながら20層では見つからなかった。金級からしか。
ということで、依頼ついでは無理そうなので、16階層の依頼2つと、20階層にある常時買い取りしてるものをチェックしてからカウンターに足を運ぶ。
「ミミリアさん、依頼受付お願い」
と、依頼票を出す。
「シャリア、昨日の査定なんだけど」
あ、そういえばあとでと言って慌てて帰ったんだっけ。
「今日の分とまとめて帰りにお願いしていい?」
「それは問題ないけれど……」
ミミリアさんの後ろからギルド長が顔を出してカウンターに出した依頼表を見た。
「なんだ、銀級の依頼が今日はたった2つか?昨日は銀色依頼3つに常時買い取り依頼を4つとすっ飛ばしてたみたいだが」
ギルド長にニンマリと笑ってみせる。
「ツデラ鳥を捕まえてくるんです。だから、依頼は2つ」
ミミリアさんが口をあんぐりあける。
「20階層のツデラ鳥ですか?銅級パーティーが?……って、シャリアさんとエディさんの組み合わせなら問題ないでしょうけれど……」
ミミリアさんがちらりとギルド長の顔色をうかがう。




