守ゆ *3行抜け落ちてました。冒頭たしました
「いや、足手まといにならない者もいるから、話が厄介なんじゃよ……」
ん?どういうことかな?
首を傾げると、なぜかエディがスプーンを取り落とした。
「どうしたの?なにかジャンがやらかした?」
アイシャさんとの会話に夢中で、すっかりジャンをエディにまかせっきりにしてしまっていた。「いらにゃいっ」とか言って手を振り回したのだろうか?
「いえ、あの、首を傾げるだけでもかわいいっていう言葉を思い出して……」
エディの頬が赤い。
「ふふ、でしょ、ジャンは何をしてもかわいいでしょ?」
「いや、ジャンじゃなくて……」
「え?」
ジャンじゃないとすると、……思い出したのは、私の言葉で、もしかして、このかわいいジャンに自分は似てかわいいのかと思ったとか?
私がエディをジャンのそのかわいい姿と重ねていたのに気が付いて、ショックを受けたとか?
「パパしゃん、もっとたべゆ、ジャン、おかわい!」
こんな子供扱いされていたのかと恥ずかしくなったとか。
いろいろぐるぐる頭をめぐりものの、エディはジャンのせっつかれて食事を再開したのでそれ以上尋ねることはできなかった。
アイシャさんも話がそれたためそれ以上続きを口にすることはなかった。
「いや、いや、いやぁーっ!」
これは、本日3回目のジャンのイヤイヤだ。
「パパといっちょ、パパといっちょがいいの!」
イヤイヤを始めるとパパしゃんがパパになってしまっている。
「食事ありがとうございました」と、帰ろうとしたエディにしがみ付いてイヤイヤしたのが1回目。
エディが気を遣って本読み終わってからにするよと、絵本をジャンに読み聞かけてくれた。
本をパタンと閉じたときに、ジャンが絵本の1ページ目をめくりながらイヤイヤしたのが2回目。
泣き出したジャンをエディが抱っこしてゆらゆらしているうちに、うとうとし始めたジャンを引き取って。
「じゃあ、また明日」とエディがドアを開いた音に、目を覚ましての3回目だ。
エディがどうしたものかと困った顔をする。
「ごめんね、きりがないわね。エディ、気を遣わせてごめんね。大丈夫だから。また明日ね」
と、声をかけると、エディがジャンの頭を撫でた。
「ジャン、よく聞くんだ。僕もジャンとずっと一緒にいたい。だけど、ジャン、ママの顏を見てごらん」
ジャンがぴたりと泣き止み私の顔を見る。
「僕がジャンを独り占めしたら、今度はママが寂しくて悲しくなっちゃうだろう?」
ジャンが涙をためた目で私を見た。
「ママ、悲ちい?」
「そうね、ジャンがエディとばかり仲良くして、ママは寂しいな……」
嘘だ。
寂しいのは本当だけど……。ジャンがエディと楽しそうに過ごしているのを見ているのは幸せだった。
私のことなど忘れたかのようにエディと仲良くしているのを見ても、寂しくなかった。
でも、今は寂しい。エディが帰っていくのが、寂しい。
また、明日会うというのに……。この疑似家族の時間が終わってしまうのが……。
「いいかジャン、男ならママを守ってやらなくちゃだめだよ」
ジャンがうんと頷いた。
「僕がいない間、ジャンはママを守れる?」
ジャンが再びうんと頷いた。
「ジャン、ママを守りゅよ、ジャンね、英雄になりゅんだ!」
ジャンの言葉に、ふっとエディが表情を崩した。
「流石僕の……いや、さすが男の子だ!じゃあ、頼んだよジャン!」
ポンポンと頭を軽く叩くいてエディが出て行った。
ジャンは4回目のイヤイヤはせずに、キリリと顔を引き締めて私の頭を撫でた。
「ママ、ジャンが守ゆ」
きゅううぅぅぅーんっ!
なんて、かわいくてかっこいいの!私の小さな騎士様誕生よ!
幸せ、幸せすぎる。と、ほこほこ顏をしていると、アイシャさんが盛大にため息をついた。
「……こりゃまた、大変だよ……シャリアは分かってるのかねぇ……」
うん?何が大変って?
ジャンがマザコンになって大変ってこと?……だ、大丈夫。ちゃんともう少し大きくなったら子離れ……す、するか……。
やだー!息子はどこの馬の骨とも分からん女にはやらんっ!
ジャンをぎゅーっとしてフルフルと体を震わす。
「……シャリアが何を考えているのか手に取るように分かるがの、そっちじゃない。大変なのはそっちじゃないよ」
え?なんでわかるの?というより、大変なことって何?
「まぁしょうがあるまい。ワシの方でも対策を考えておくかねぇ……」
アイシャさんがため息交じりにつぶやくと、部屋に戻っていった。




