パパはいない
本日2話目
「こりゃしまったねぇ……。家にいる男の人のことをパパって言うんだって教えたんだよ」
エディさんがああと納得したようだ。
「ジャン、家にいる男の人にも種類があってね、パパ以外にお爺ちゃんやお兄ちゃんやおじさん……いろいろいるんだよ」
ジャンが首を横に振った。
「ちらない、パパはパパ」
ジャンがエディにぎゅっと抱き着く。
「ジャン、女の人だって、家にはアイシャさんと私、おばあちゃんとママがいるでしょう?パパ以外も家にいることもあるんだよ」
そう言うとジャンが泣きそうな顔になってエディの顏を見上げた。
「パパちがうの?」
エディがジャンの頭を撫でた。
「アイシャさんの説明が分かりにくかったね。ジャンのパパはね、家にいる男の人じゃなくて、うーんそうだなぁ……ママとキスしている男の人がいたら、その人がパパだよ」
キ、キ、キス?エディったらなんて説明をするの!
思わず顔が赤くなる。
「チューしてるの?じゃあ、ジャンがジャンのパパ?」
ジャンが首を傾げた。
あ、そうよね。私、ジャンにチュッチュしてるわね。
「あはははははっ、それじゃあ、ジャンがパパって呼ぶ相手がいなくなっちゃうな」
ジャンが悲しそうな顔をする。
「パパ、いない……」
まだ、父親とは何かというのはよくわかっていないとは思う。
けれど、どこで覚えたのか。他の子がパパの話をしていたのか、パパとママと一緒にいる姿を見てうらやましくなったのか、理由は分からない。
他の子にはパパという家族がいるけれど自分にはいないと知ってしまったのだろう。
……まだ、単に自分の分のパンがないくらいの気持ちかもしれないけれど……。
それでも、父親がいないということを悲しんでいることに違いはない。
真実を話すつもりはない。でも嘘をつくつもりもないから「父親は戦争に行って帰って来なかった」と伝えるつもりだ。
もう少し大きくなれば、それがどういう意味を持つか分かってくれるはずだ。
だけどなぁ。どういう人だったか?と聞かれると困る。暗闇で姿は見えなかったし。一言二言話をした声もよく覚えていない。
クリスに聞けばわかるのだろうけれど、クリスは逃げて今どこにいるのかもわからない。
クリスの実家にクリスの居所を尋ねれば教えてくれるのだろうか?
……でも、クリスは家族から疎まれていると言っていた。真実かは分からない。もしかすると私の他にもだました女性とかいたり、他にもいろいろと素行の悪いことをして家族が距離を置いていただけの可能性もある。
すでにクリスとは縁を切った、居所は分からないと言われるかも。
……それに……。
私の実家に知られたくない。
私とクリスのことを反対していて、家出するように出てきた。クリスに騙されて子供までできたなんて知られたら……。
ジャンをどこか養子に出して、私の子どもを産んだことはかくして私をどこかに嫁がせるかもしれない。
貴族社会とはそういうものだ。
いやだ。絶対に。ジャンと離れ離れになるのは絶対にいや。
クリスと接触を図ろうとはしない方がいい。……もし、クリスと会うことがあっても、一夜の花嫁のあの時の相手がどんな人だったかなんて尋ねるわけにはいかない。怪しまれてしまう。
クリスには結婚して子供が生まれて幸せに過ごしているとでも伝えた方がいいだろう。
ってことで、ジャンの父親の情報はずっと分からないまま、ね。どうせ会うこともないならどんな人か尋ねられたら適当に答えておけばいいかな。
「ジャンのパパ、ない……」
ジャンの大きな瞳にみるみる涙がたまっていく。
「パパ、ない、ジャンのパパ、ない~」
泣き出してしまった。
2歳と言っても、成長が早い子遅い子もいるし、2歳0か月と2歳11か月じゃ全然別物ですよね。
ちなみに、ざっくり3年なので、えーと、ざっくり生まれるまで10か月、生まれてから2年2か月……
細かいことは書きませんので、まぁ、およそって感じでお願いします。




