ジャンとパパ
「ただでさえかわいいのに、女の子らしい恰好なんてさせたら、かわいすぎて危険ですよ!」
エディさんの言葉に、アイシャさんが首を傾げた。
……うーん。やっぱり首を傾げてもかわいいと思わないんだよねぇ。
「そ、それに、冒険者として活動するのにスカートを履いていたら危ないですっ」
「冒険者?ジャンを冒険者にするつもりはないけれど!」
エディが首を傾げた。
かわいい。
「いや、シャリアが危ないって言う話で……」
エディの言葉に顏が赤くなる。
「それ、かわいすぎて危険って……」
私のこと?
いやいや、私がかわいいなんて……!
「それは私がエディを見てジャンに似てると思ってかわいく見えるのと同じ理由ってことね?そうでしょ、かわいいものに似てるとかわいく見えるよね!」
うんうんと頷ずくとエディが複雑な表情をしながら口を開く。
「あー、うん、まぁ、そう、そうかな」
「これで、私がエディがかわいく見える理由は分かってもらえたよね」
ニコッと笑うと、エディが頬を染めてちょいっと視線をそらした。
そらした先にはジャン。
そうですか、そうですか、かわいいジャンを見たくて仕方がないのね。
「抱っこする?」
はいっとジャンを差し出す。大サービスだよ。
「え?ぼ、僕が?」
びっくりして腰が引けている。
そうだよねぇ。子供と接したことがない大人の反応はこんなもんだよね。
私もはじめてジャンを抱っこしたときには落っことさないかと壊さないかとバクバクだった。
……貴族だと何歳か離れた妹か弟が生まれない限りそんなもんだよね。
庶民は違う。近所の子だったり兄弟だったり、兄弟の子供だったり身近に小さな子がいることも多いうえに、5歳にもなれば、母親が家事をしている間に子供を見ているのも普通だとか。
で、みんな抱っこくらいでぎょっとすることはないし、ちゃんと首を添えて横向きに抱っこするとか知ってた。
ジャンが両手を伸ばしてエディさんに抱っこしてもらう体制をすぐ作る。
おや?人見知りが少ない方ではあるけれど、ここまで恥じらいもなくすぐに手を伸ばすのは珍しい。
エディがジャンを可愛いと思っている気持ちが伝わっているのかな。そういうの子供は敏感だって聞いたことがある。
エディがジャンを抱っこした。
ジャンはぎゅーっとエディにしがみ付く。
「……かわいい……」
エディがまたもや聞こえるかどうかわからない小さな声を漏らした。
うんうん。そうでしょう、そうでしょう。
「さ、料理が冷めちまうよ!座った座った。エディはそこに座りな。ジャンの席はそっちだよ」
アイシャさんの言葉に、エディはジャンを子供用の椅子に座らせようとしたけれどジャンが抵抗した。
「いや、いや」
「どうしたの、エディ、まだご飯食べたくないの?」
ジャンはエディの腕にしがみ付いて椅子に座るのを拒否している。
「いっちょ、いっちょがいい」
一緒?
「エディと同じ椅子に座りたいってこと?」
自分だけ子供用の椅子に座るのが嫌ってことだろうか?なんでも大人の真似をしたがるということはあるけれど……。
大人用の椅子ではテーブルに頭しか出なくて食べられないし、椅子から転げ落ちる危険もある。
「これで、いい?」
エディは戸惑うことなく、ジャンを膝の上に乗せて椅子に座った。
ジャンはニコニコしながら「パパといっちょ」と口走った。
「パ、パパ?」
エディさんがぎょっとする。
もちろん、私もだ。
「ご、ごめんなさい、ジャン、違うからね、エディさんはパパじゃないから」
ジャンが首を傾げた。かわいい!
って、違う違う。
アイシャさんがあーっと額を抑えた。




