昇級したいエディの思い
「ギルド長を超えたいと、昨日、そう思った時に頭の中がクリアになったんだよ」
えーっと、なんでギルド長を超えたいなんて突然思ったんだろうか。仲が悪いようには見えなかった、いや、仲良くもないかもだけど、殴り合いするほど仲が悪いようにも見えなかったけどな。
いや、初日に剣を向けられたりしてたか?あれ?
「ミスリル級まで上がれば、国にとらわれる必要がないどころか、国にも意見が述べられる立場になる……。戦争に行きたくないと逃げるどころか……」
エディが決意に満ちた顔をする。
「無益な戦争を止めることができるんじゃないかと」
戦争を止める?
「……さすがに、そこまでできるのかな?」
ギルド長が戦争を止めることはできなかった。
「流石にミスリル級冒険者一人の力じゃ無理でしょう。ですが、戦争に反対する一派をミスリル級冒険者が支持すれば」
「あっ、貴族を動かすんですか!」
冒険者の大半は貴族とは距離を置いているというか……。貴族が無理な依頼をしたり、横柄な態度をとったりすることが原因で嫌っている冒険者がほとんどだ。だから、貴族は貴族、俺たちは俺たちみたいなところがある。
国がどうにかなるなら、別の国で冒険者すればいいという位の気持ちだ。
……冒険者ギルドに所属するということは国にとらわれなうということでもある。
でも、貴族だったエディさんはそうじゃないんだ。
国を捨てることはできない。かといって、国……侵略戦争を考えるような今の陛下には従うことはできない。
貴族の身分を捨てても、貴族としての領民や国民のために……いや、もしかすると一緒に戦争に行った人たちのことを思ってかもしれないけど、全ても捨てることはできないんだ。
「そういう手もあるんじゃなかって。ただ、もう戦争はこりごりだと思っているだけでなく、戦争をさせない手段があるなら挑戦してみたいと……」
なるほどと頷く。
「つまり、エディはミスリル級を目指そうと思ったということですね?だったら、私が上を目指そうとするということと利害は一致しますよね?」
うんうん、よかった。
「えーっと、シャリアの上を目指す理由は?」
「私、アイシャさんの弟子なんです。なんでお前がアイシャ様の弟子なんだよ!って言われないように、流石アイシャ様の弟子だ!アイシャ様は見る目があるって……そう言われたいんです」
「はぁ……」
「お世話になっている師匠に恩返しするには、きっと、それが一番なんです。師匠の名誉に傷をつけないためには、弟子の私が……銅級で満足していてはいけないと思うんです。銀級で一人前と言われ、金級で一流、プラチナ級で一目置かれます。流石にミスリル級は無理だと思いますが、せめて金級。師匠の弟子ならば、一流といわれる冒険者にならなければと思ったんです!」
なるほどとエディが頷いた。
「では、二人で上を目指しましょう!」
ぐっと握手をする。
「でも、週に2日は休んで、鐘がなったら終わり、日帰りの依頼しか受けないなどの条件は変わりませんよ?」
と言うと、エディさんがふふっと笑った。
「もちろん」
「じゃ、依頼を見に行きましょう!」
依頼票を見る。
銅級だけれど、パーティーであれば銀級の依頼まで受けることができる。
「これと、これと、これにしましょう!」
3枚手に取ると、エディさんが首を傾げた。
「3つも、ですか?」
「いくつでもいいんだよ。達成できないとペナルティがつくけれど。最高で7つ同時に受けた冒険者もいたよ。護衛依頼がてら道中の採取依頼と討伐依頼。護衛主が途中の宿泊地でのんびり観光しながら移動するっていうので、宿泊地周辺の依頼を受けていたの」
「なるほど」
「で、この3つは、1つはダンジョンの6階層、ほか二つは12階層。6階層は採取依頼。掘り出して運ぶのが大変なんだけど、それは私に任せて。力仕事は得意なの。で、運ぶ途中に襲ってくる魔物はエディが倒してね。12階層は片方は動きが早くて、片方は硬いの。私たち向きでしょ?」
エディがにやりと笑った。
「なるほど。確かに」
それからエディは常時依頼の紙を眺めて、このあたりもいたら持って帰りましょうと、いくつか指さした。
「初日から欲張りすぎでは?」
と、苦言を呈したけれど、全然問題なかった。




