勘はあてになるのかならないのか
「彼氏はいないけれどね。あと、エディさんは私のことを恋人より大事なんて誰にも言わないでくださいよ?」
「え?なぜです?」
「……エディさんの恋人に、嫉妬されて刺されたり嫌がらせされたくはないので」
貴族の女性たちはえぐいからなぁ。嫌がらせ。
金や地位を利用して逆らえない逃げられない状態でこられると困る。死にたくない。
それ以上に、大事な人を巻き込みたくない。特にジャンに何かあったら困る。
「大丈夫ですよ。恋人も婚約者もいません。作るつもりもありません。……あ、そうなってくると……」
ぽんっとエディさんが手を打った。
「シャリアは僕の一番大切な女性ですね」
ニコニコといいことを言ったと言わんばかりの笑顔を向けてくるエディ。
イケメンの天然発言に心を貫かれる場合じゃないよ。
怖っ。知らない間に恨みを買って夜道で誰かに刺されそうだ。
パーティーを組む相手として、命を預ける相手として、それは男女関係なく大切なって意味でしかない。
そして、私は……。
「私の一番はジャンだから」
と、答えるしかない。これは揺るがない。
「はい。知ってます。で、いろいろと話をというのは?」
そうだった。椅子に座り直して背筋を伸ばすと、エディも同じようにピシッとする。
こういう姿勢の良さが貴族らしい。
「パーティーとしての姿勢なんですけど……。昨日はその、ギルドの臨時職員を首になってしまった勢いで、あまり深く考えずにパーティーを組もうと思ったところが正直な話で……。細かいことは何も考えていなかったんです」
エディさんが頷く。
「はい、流れは見ていましたし、僕も細かい話を聞かずに決めてしまいましたので。ですが、直感と言いますか……シャリアとはよいパーティーになれると思ったんです」
うんと頷く。
連携が取れそうだとか、役割分担が出来そうだとか、そんなことじゃない。
「私も……エディならと、不思議と感じました」
師匠もギルド長も勘というものは案外役に立つと言っていた。
だから、直感というのも馬鹿にできないんだろう。
……とはいえなぁ……。
クリスは私の運命の相手なのと思いこんだのも、勘だった気がする。
あてにならないぞ、私の勘。いや、回りまわって、クリスと関わったことで、世界一かわいいジャンと出会うことができたのだから、あながち悪い話ではないのか?
……のか?
「では、問題ないのでは?」
エディが首を傾げる。
ジャンを思い出すそのしぐさ、その髪色、その……。
グイっと身を乗り出してエディの目の色を見る。
室内やダンジョンで、影になってたから気が付かなかった。
窓際で日の光が入って明るい場所で見れば、ジャンの瞳の色と同じだ。
「青い瞳かと思ってたら、青にオレンジが少し混じってる、アースアイなのね!」
エディががたりと椅子を鳴らして後ろに上体をそらした。
「あ、ごめんなさい」
突然顔を近づけられたら驚くよね。貴族はそんなことしないだろうし。
いや、私も伯爵令嬢だった時はそんなことはしなかったよ。もっと優雅に行動してた。
でもね。素早い動きができないと、子供が死ぬ。
うっかり熱いスープに手を伸ばしたときにバッと近づきガッと腕を抑えないと。
……なんて言い訳しても仕方がない。冒険者に染まったのだ。しっかりと。
「い、いや、その……」
エディがちょっと顔をそらせて口を押えた。
「びっくりしただけで、えっと、不快に思っているわけではないから、ちょっと気持ちを落ち着けるから待って……」
エディの頬がちょっと赤い。
そこまで驚いた?いや、驚くか。テーブルに乗り出して顔を覗き込んだんだもんね……。
私も普段はそんなことしないよ?食事中に立ち上がるのすら貴族ではマナー違反だもん。




