スープ
「大丈夫。明日で」
アイシャさんが私の顔をじーっと見た。
「何をのんきな!エディも困ってるだろうが、自分のじゃない冒険者カードを持っている方も、相手が盗んだと騒ぎ出したらアウトなんじゃよ?」
「大丈夫だよ、エディはそんなことするような人じゃないよ?」
アイシャさんが私のほっぺたを引っ張った。
「まさか、顏がいいからって簡単に信用しちゃいないだろうね?」
「痛たた、違うよ、違うって、パーティーを組んだの。ギルドに申請も出して処理済だから、パーティーの冒険者カードを持っていたからって、何か起きたりしないでしょう?」
アイシャさんが私のほっぺを引っ張ったまま固まる。
固まるなら、ほっぺを離してからにしてぇ!
「パーティー?」
アイシャさんが難しい顔をした。
「この街に来たばかりの男とパーティーか……冒険者の腕前は見りゃ分かるが、人間性は1日や2日でわかるもんじゃないんじゃぞ」
え?もしかして、弟子が勝手にパーティーを組んだことを怒ってる?
アイシャさんがはぁーとため息をついてエディのギルドカードをにらんだ。
「……フェンリルの牙……。その辺の冒険者がシャリアに不埒な真似を使用としてもどうとでもなるだろうが、さすがに、これ相手じゃどうなるか……」
ぼそりとアイシャさんがつぶやいた。何を言っているんだろう。
「はやーくー」
トントントンとテーブルをジャンがたたき出した。
「ああ、ごめん、ジャン、おとなしく待っていてくれてありがとうね」
慌てて食器をテーブルに並べる。
「明日だ」
アイシャさんが大きな声を出した。
「え?」
「明日、エディを連れてこい。ワシがエディを見極めてやる」
ああ、やっぱり師匠に相談してからパーティーを組むべきだったかぁ。
エディさんを面接するってことね。
「シャリアにふさわしい男かどうか、確かめてやるからの」
ふっと思わず笑いが漏れる。
「アイシャさん、その言い方だと、彼氏を連れてくるみたいな感じじゃないですか。エディはパーティーを組む相手ってだけですよ」
アイシャさんがふんっと鼻を鳴らす。
「はっ。パーティーを組む男ってのはね、彼氏以上に大事な相手なんだよ。なんせ命を預けるんだ」
どきりと心臓が跳ねる。命を預ける相手。
「もちろん、シャリア、お前も相手の命を預かるんだよ。ちゃんと覚悟はできてるかい?」
命を預かる覚悟……。
「ちゅーぷ、ちゅーぷ」
ジャンのスープをお皿に次いで出しながら考える。
ジャンの命は、私が守る……。そういう覚悟ってことかな。
「えーっと、エディさんもジャンのように守ってあげないとって、そういうことですよね?」
アイシャさんがは?と口を開いた。
「大丈夫です。エディさんを見てると、時々ジャンみたいにかわいく見えるので、守ってあげようって気持ちになりますから!」
ドンっと胸を叩くと、アイシャさんが笑いだした。
「あはははっ、そうかい、そうかい。あの色男がかわいく見えるのかい。かっこいいと惚れるどころか、子供あつかい……あははは」
アイシャさんがスープをごくごくと飲み欲してテーブルに肘をついた。
「じゃあワシも子供にはいろいろと言って聞かせないといけないねぇ。いーしっしっしっし」
うん、なんか絵本の魔女のように笑い出したよ。
明日、エディさん無事に帰れるかな……。
スープは、大きなお鍋でアイシャさんが丁寧に煮込んでおりますわ。ぐるぐるかき混ぜながらね。
ねればねるほど……いや、スープはねらない。




