別視点 ギルドにて2
「自慢だと受け取られると困るのですが、生まれてこの方年下の女性からカッコいいという言葉をもらうことはあっても、かわいいというのは始めて言われたので、かなり困惑しました」
と、いう者の、ミミリアさんはああと手をぽんっと叩いた。
「確かに、ここってギルド長をはじめとして、ごっつい男の人ばかりですもんねぇ。カッコいいは筋肉が基準だと思ってる人も多いし」
「ええ、それは僕もシャリアに言われました。ここでは女性はトラのような強い男性を狙うと」
ギルド長がエディの顔をしげしげと眺める。
「……にしても、かわいいか?」
ミミリアに尋ねている。
「うーん、そうですねぇ……流石に、ギルド基準で見ても、町娘基準で見ても、かわいいというよりも美男子?洗練された美しさがあるとか?かわいいって言葉で表現はしにくいかなぁとは思いますけど……」
エディがうんと頷いた。
「ですよね……もしかしたらと思うんですが……。シャリアは先輩冒険者として僕の指導役だったでしょう?だから、その、いろいろなことを教えてあげなければならない相手ということで、弟子のように思ったのかもしれないです」
ギルド長がぽんっと手を叩いた。
「かわいい弟子ってことか。まぁ、ばぁちゃんの弟子なんだから、その線はありだな」
ミミリアがギルド長の言葉にはぁとため息をついた。
「……あの、どっちかというと、いろいろ教えてあげないといけない相手って、シャリアさんの場合は弟子ではなく子供だと思うんですけど……」
ミミリアの言葉に一瞬固まるエディとギルド長。
いち早く我に返ったのはギルド長で、大笑いをしながらエディの背中をバンバンと叩いた。
「あははは、そうか、エディ、お前はシャリアから見たら手のかかる子供みたいに思われてるのかっ!あはははっ」
「は?いや、手はかからない……いえ、魔石を砕いてしまったり、かなりシャリアにとっては信じられないという行動をしてしまっていましたけど……子供扱いされていなかったと……」
いやまてよ、頭を撫でられたりしなかったか?
しかも、息子のジャンがどうのと会話に出てきて……。
「はっはっは、じゃあ、俺が兄なら、お前は弟だな。シャリアの弟して守ってくれよ」
エディがうんと頷いた。
「家族のように……そうですね、たぶん僕もそういう関係がいいです。……その、誰かと男女の仲になりたいと思うこともないですし……結婚も考えていません。そもそも、そういうわずらわしさから逃げたくて冒険者になったっていうのもありますし……」
ミミリアさんが目を細めた。
「ふぅーん。結婚が義務だとか世継ぎを残せとかそろそろいい年だろうとかそういうの貴族はめんどくさそうだもんねぇ。ああ、あとうちの娘はどうだという人や私と結婚してっていう人なんかも後を絶たなかったのかなぁ……」
ギルド長がエディの背中をもう一度叩いた。
「そういやぁ、北の戦線から帰還した男たちの結婚フィーバーが王都であったって聞いたな……」
エディが遠い顔をする。
「お前も苦労したんだな……大丈夫だ。シャリアは男に迫るような真似は絶対しない。それどころか……迫られててもまったく気が付かないくらい男には興味がない」
ミミリアさんが首を振った。
「男の人の言葉を信用してないんですよ。……騙されたことがよほど心の傷なんでしょうね……」
エディがぐっとこぶしを握り締めた。
「もし、僕がシャリアを傷つけるように見えたら、追い出してください。このギルドから。僕を悪者にしてもいい」
「はっ、追い出す前に、俺がその根性を鍛えなおしてやるさ」
「頑張ってくださいねぇ、エディさん。ギルド長のしごきだけで終わらずアイシャさんのしごきも加わると思いますよ?」
アイシャさん……箒の持ち主。
エディは避けるのもやっとだった老婆の箒裁きを思い出し、そしてその箒が仕込み杖で引き抜けばギラリと鋭い刃が輝くというのを知り身をを縮める。
だけれど何より……。
シャリアに頭を撫で垂れたことを思い出し、彼女を傷つけるようなことをする自分を想像して奥歯をかんだ。
許せない。たとえ自分であっても、許せないだろう。
エディが去った後、ギルド長が表情を引き締めた。
ミミリアがほぉーっと息を吐き出しニコニコと笑っている。
「よかったですねぇギルド長。有望な新人がまた入ってきて。しかも誠実でよさそうな人じゃないですか」
「ああ」
「いくら強いといっても、いつまでもソロで活動するのは危険ですもんね……怖いのは魔物じゃなくて人間の方ですけど」
「ああ」
「って、ギルド長、上の空で何を考えてるんですか?大丈夫ですよ。エディさんちゃんとした人ですって」




