お金の計算
「え、あ……、そうだ、私、えっと、エディさんの指導ちゃんとできませんでした、依頼達成できなかったということで、銅色昇級はなかったことに……」
ギルド長に泣きつく。縋りつく。
「はぁ?お前、あんだけ早く昇級したいって言ってたのに、何言ってるんだ?」
ギルド長があきれた顏をする。
「だ、だ、だ、だって、だって、そう、私には家で待つかわいい息子がいるんですよ?ひどいじゃないですか!ギルドの臨時職員クビだなんて、そんなの、ジャンが飢え死にしちゃうでしょうっ!」
「やめろ、泣きおどしするの!」
ぺっと、引っぺがされた。
「銅級になれば、銅級の依頼を受けられるようになる。そうだなパーティーを組めば、一つ上の銀級の依頼もギルドが許可を出せば受けられるようになる。単純に1つ依頼をこなすだけで」
「あ、そっか、そっか、銅級の依頼の平均価格は鈍色の倍、ものによっては4倍~8倍でしたよね!銀級の依頼ともなれば、鈍色の20倍が相場……!」
ギルド長があきれた声を出す。
「お前は、本当、金勘定だけは早いな」
「当たり前ですよっ!お金を稼がないとジャンを養っていけないんですから!ジャンを学校にも通わせたいし、それにアイシャさんに恩返しもしたい」
「うん?ばぁちゃんに恩返し?それなら俺と一緒に」
ごにょにょとギルド長が何か言いはじめたので、びしっと指を立てて左右に振る。
「は?ギルド長はギルド長でアイシャさん孝行してください!私は私でアイシャさんに恩返ししたいんですっ!」
「あ、いや、そういうことではなく……」
「今日だって、こうして大切な武器を貸してくれたんですよ。もう返せないほどの恩があるんです。それなのに私はまだ自分の武器を買うこともできない……。お金は大事ですっ!」
ギルド長が遠い目をしている。何だろう、その目。
「パーティーを組むと20倍……あ、でもパーティーが4人なら4分の1になるから鈍色の5倍か。なら銅級の高いやつを狙って……それとも少人数パーティーに……。2人組のパーティーに入れてもらえば3人だから、6~7倍か。
ソロの人とパーティーを組むと……10倍?
「パーティー……」
4人組で今の5倍くらいの収入。ギルドの臨時職員をしているのとそう変わらない。
3人組で今の7倍くらい。うーん、銅色級でコツコツ活動すれば問題なさそう。
2人組だと今の10倍!これなら、かなりおいしい。
「そうだ!受付をしているときに何度かパーティーに誘われたんだ!週に1回でも2回でもいいよと言ってもらったこともあるし!」
新人冒険者や他のギルドで活動していた冒険者と話をしていてちょこちょこ声がかかったっけ。
高ランクパーティーからもお誘いはあったけれど……。流石に足手まといだろうに。金級冒険者がどうして私に声をかけたんだろう?
もしかして、臨時とはいえギルド職員をパーティーに入れておくとまだ表に出していない美味しい依頼をまわしてくれるとか食堂で割引価格で食べられるとか期待されたのかな?
そんな特典なんて何もないんだよね。ギルド長に訓練をつけてもらうお願いくらいならできるけれど……。
それとも師匠のファンとか?弟子の私とパーティーを組めば師匠に近づけると思った?
「えーっと、今の級で合いそうな人は……。パーティーを組むなら同じ級か一つ違いがいいんだったよね?」
銅級になったから、鈍色か銅か銀……銀はさすがに、まだ銅に上がったばかりだから銀級はやめたほうがいいよね。もうすぐ銀だぞって銅とは違うわけだし。
「んー、そうなると、カンブリッチ君か、ドルドックさんに声をかけてみ」
ばんっとギルド長がカウンターを叩いた。




