お仕事、首になります
「はい。エディさんって攻撃魔法も使えるんですよ。でも、フェンリルを倒して魔力を使い切ってしまったようで」
エディさんが提出した素材にはフェンリルの牙もあった。フェンリルの魔石は、残念ながらあの魔法で燃え尽きた。毛皮とともに。燃え残ったのは牙だけという。爪すらも残らなかった……どんだけすごい魔法だったんだろう。
エディさんがカウンターの上に置いた魔石や素材の中から、フェンリルの牙を見つけてつまみ上げる。
「エディさん、これ、どうします?結構高値で買い取ってもらえるらしいんですが、いざというときに売るための貯金にこうやって持ち歩くといいって師匠に教えてもらいました」
服の中にしまってあったギルドカードを取り出し、ぶらぶらと釣りさててあるフェンリルの牙を見せる。
「あー、じゃあ、そうしてもらおうかな?」
「それじゃあ、加工してもらいますね。その金額を魔石の買取価格から引いてもらいますけどいいですか?」
「はい」
エディさんが私のギルドカードを見てふっと笑った。
「おそろいになるんですね」
おそろい?
確かにフェンリルの牙を他の人はあまりぶら下げてないか。すぐに売っちゃうか、そもそもカードに何かをぶら下げて大切に持っておかなくてもお金に困らないか。
私の場合はいざというときに子供に残せるようにと持っているけれど。
「おそろい……ふふ、そうですね」
確かにほかにいないかも。
「おそろいじゃないだろう」
ギルド長がすぐに私のギルドカードを取り上げた。
「え?なんでですかぁ!」
「お前はこれで依頼達成。鈍色から銅に上るから、おそろいじゃなくなる」
にやりとギルド長が笑った。
「あ、そうだった!ありがとうございます!ギルド長ー!」
感激で飛びついて抱き着く。
「シャリアさんっ」
なぜかエディがすぐに私の腕に手を置いて引いた。
あ、すいません、まだいろいろ説明の途中でしたっけ?
「で、お前は一人でフェンリルを倒したんだな?」
ギルド長がエディに尋ねた。
「ああ……そう言いたいが。一人で倒したとは言えない。シャリアさんがいなかったら意識を失うと分かっている戦い方はできなかった。逃げ帰ったと思う」
ギルド長がふんっと満足そうに笑う。
「謙虚さは命を守る。お前が一人で倒したと言ったら俺が直々に訓練をつけてやるつもりだった」
ギルド長がにやりと笑った。
あー、噂の地獄の訓練……。回避できてよかったね、エディ。
と、思ってエディを見ると、まるで子犬がご主人様にボールを投げれ貰うのを待つような顔をしている。
……いや、ちがう、これは……。クッキーをお土産に持って帰った時に、匂いを嗅ぎつけて期待のまなざしを向けて私を見るときのジャンの目だ。
くっ。また、かわいい顔をするなんて、エディさんはいったい何者なの?
「訓練?ぜひともお願いしたい」
ほら、ほら、ギルド長も困惑の顏をしている。
きっと、エディさんのかわいさに驚いているんだよね。
「……はぁ……。わかった。ばぁちゃんにかわいがってもらうように頼んでやる」
うん?アイシャさんにかわいがらせてあげるの?
「え?ばぁちゃん?」
エディさんが戸惑っている。
「あ、ギルド長のおばあちゃんって、アイシャさん、この箒の持ち主です」
説明すると、エディさんが「クッキーは明日ね」と言われた時のジャンみたいな顔をする。
ぐあぁぁぁ、かわいい顏すんやなぁぁぁ!
と、心の中で思っていると、ギルド長が大きなため息をついた。
「はぁー、フェンリルを倒せる鈍色……」
がーっとギルド長が頭を掻きむしった。
「よし、銅色になったわけだし、アイシャ、お前ギルドの臨時職員卒業な」
「え?」
嘘でしょう?
卒業なんて言葉使ってるけど、それって……。
「クビ、ってことですか?」
安定職が……!




