親ばか
慌ててエディさんに近寄って、様子を確かめる。
「心臓は動いてる、生きてる。大きなけがもしていない。えーっと、それから顔色、顔色は……」
うつ伏せで倒れたエディさんの顔をこちらに向ける。
さらりとジャンに似たひよこのような柔らかくい薄黄色の髪が汗ばんだ顔に張り付いている。
そっと、髪をかき上げて顔色を見る。
「はぁー、大丈夫。顔色も悪くない……」
そういえば、3時間面倒をかけるって言って倒れた……いや、意識を失った?
すぴぴと、エディさんの鼻がすぴぴと鳴った。
「うわっ、可愛いっ!」
やばいやばい。
かわいいとか言ってる場合じゃない。
でも、これ、鼻をならして寝てるよっ。
きっと3時間くらい寝るんだ。
あんな魔力を消費しそうな魔法使った後だもの。きっと魔力切れで、寝てしまったんだ……。
「うわー、うわー、うわー……」
ものすごい美青年なのだよ。
鼻筋は高いし、まつげが長くて……本人も女性が群がって迷惑していると言っていたし「かっこいい」ことは間違いない。
はずなのに、かっこいいじゃなくて、かわいいと思ってしまうこの感じはなんだろう。
むにゃって、なにか口が動いてるぅぅぅ、かわいすぎんかぁ?
あれ?これ、ジャンだ。ジャンが寝ているときと同じだからかわいいと思うんだ。
「……単に、私、親ばかが行き過ぎたやばいやつだった……」
ジャンにしぐさが似てるからかわいいとか。ジャンを思い出すものがすべていとおしく思えるとか、もはや末期なのでは……。
「うわぁぁぁぁっ!」
息子がかわいすぎるからいけないのよぉぉぉ!
うちの天使が、天使がかわいすぎて、かわいいと思う気持ちが溢れすぎちゃって……!
「うわぁぁぁ」
とりあえず、こういう時は体を動かそう。
幸いこの場所はダンジョン28階層の最奥。
29階層へと続く階段以外はこの部屋に続く入り口が一つだけで横道はない。
その入り口で魔物の侵入を防げば、フェンリルも倒しちゃったし安全だ。
エディさん一人置いて出ても問題ない。
と、いうわけで、部屋を出て入り口を守るように現れる魔物を倒しては魔物を回収。
「魔石の買取をお願いしまぁす!」
ギルドに戻ってジャラジャラと魔石を出すと、ギルド長がこつんと頭をたたいた。
「おい、お前は新人指導でダンジョンに行ったはずだよな?なんだこの魔石の数、まさか指導そっちのけで魔物を倒していたわけじゃないよな?」
エディが私をかばうように私とギルド長の間に体を割り込ませた。
それからカウンターにどんっと魔石や素材を置く。
「いいえ、28階層で僕が意識を失うまで、彼女は指導役に徹してくれました」
意識を失って可愛く寝ていたときまでね。
魔石を壊して魔物を倒すという勿体ない行動も、臍を噛みながらぐっとこらえて見守るだけに徹してましたよ。
ああ、思い出しても勿体ない。
「意識を失っている間に、魔物から僕を守ってくれました。その時の魔石です」
はいそうです。
「は?28階層?」
ギルド長が私の顔を見た。
いや。3つのうちどうしようとは思ったよね。
3時間の過ごし方。
1、膝枕してあげる
2、担いでダンジョンを戻る
3、魔物倒して時間つぶす
恋愛小説なら、1が正解だろうよ!
なぜ、3にした!……主人公が恋愛脳じゃないからさ!お金大事なママだしな!




