指導、指導!
「ちょっ」
「捕まっていてください」
お姫様抱っこだ。
なんでぇ~、つかまれって、どこにぃ~!
エディさんがものすごいスピードで走り出した。
うわぁ、落っこちるっ!
慌ててエディさんの首に腕を巻き付けた。
「ここまでくれば大丈夫でしょう」
抱っこされたままエディさんに運ばれて、数分。
エディさんが立ち止まり周りを確認してから私を下ろしてくれた。
今の、間違いなくお姫様抱っこで、エディさん……に、私……。
まともに顔が見られない。
「ど、どうして、えっと、あの……」
バクバクと鳴る心臓よ、沈まれ。
「どうしてって、そりゃ、アイシャさんを置いて一人で逃げるわけにはいかないですし」
当然ですって顏してるけど。
ゴゴゴゴという音で、新たなアイアンゴーレムが地面から湧き出てきた。
「しまった」
エディさんが私を再びお姫様抱っこしたけれど、走り出す前に、箒でエディさんの頭を小突く。
「うわ、アイシャさん?」
「おろしてくださいっ!私はあなたの指導役ですよ!」
もう、こんなことでどぎまぎしてる場合じゃないの。
ちゃんと、エディさんがどんな魔物には強くてどんな魔物は苦手で、その苦手な魔物がいたとしても無事に進めるかどうかまでちゃんと理解しないとだめなんだから。それで、教えることは教えないとだし。
「あ、えっと」
ぴょんっとエディさんの腕の中から飛び降り、地面から出てきたアイアンゴーレムの足を蹴る。
いわゆる足払いだ。
片膝をついたところで後ろに回って地面を蹴って飛び上がり背中を蹴った。
ほほほ。身体強化で怪力状態の私。何トンあろうがその辺の人間相手にしているようなもので楽勝よ。
動きが早い魔物じゃなければざっとこんなもんよ!
四つん這いになったアイアンゴーレムの背中にのり、真ん中あたりにある魔石をひっつかんだ。
角みたいにちょっと出てるのよね。
「エディさん、ここに、魔石があるんです。この魔石を引っこ抜くか、壊せばアイアンゴーレムは倒せます」
と、教えてあげる。
エディさんは唖然としていたけれど、すぐに表情を引き締めてあっというまに私の隣に来た。
アイアンゴーレムはやっと背中に乗る私とエディさんを振り払おうと、片腕を上げて体を傾けた。
遅い遅い。
「あ!」
魔石を引っこ抜こうとしたら、エディさんが、剣を魔石に振り下ろした。
「あああっ!」
笑顔でエディさんが私を見る。
「魔石はアイアンゴーレムほどの強度がなくて助かりました。アイシャさんありがとうございます」
ニコニコ笑顔だ。
な、何してくれてんだ。
魔石を壊すなんて……。
だめ。笑わないと。怒っちゃだめ。
だって、エディさんは生きるか死ぬかしかない戦場にいたのだから。冒険者とは違う戦いに身を投じていたのだから……。
「エディさんっ、だめですよ?冒険者のルールとして、別の人が戦っているときに手出しはだめです!」
「え?」
「えーっとですね、戦場では助け合いだったかもしれないですけど、冒険者の場合は獲物の横取りになります。対峙してる冒険者に手助けはいりますか?と聞いてから手を貸す、自分にも危険が及んでいる場合に防衛目的で手を出すようにしてください」
エディさんがああと頭を抱えた。
「なるほど。本当に知らないことばかりですね。学ぶこともせずに飛び級なんてしていたら大変なことになっていました……ああ、もう、恥ずかしい」
また、顏を覆ってフルフルと頭を振り出した。




