待てど暮らせどは残酷
え?なにそれ。キープされてるってこと?
もしかして道ならぬ恋とか?人妻?それともずっと年上?
「一目でいいから、もう一度会いたかった……」
エディさんが憂いのある表情を見せる。
会いたかった?その物言いって……。会えないってことだよね。
亡くなったのだろうか?
もしかしたら、戦争に行って、戻ってきて亡くなっていることを聞かされた?
帰ってきたら告白するつもりだったとか。
こんなことなら出兵する前に告白すればよかったとか、そういう後悔でもしてるのかな。
「あのさ……」
ぎゅっと箒を持つ手に力が入る。
「冒険者にはいろいろと期限が設けられているの」
「え?」
私もミーニャさんや他の冒険者に教えてもらった話だ。
「依頼書に、いついつまでと期限が書かれているけれど、書かれていない依頼もあるの」
「そうなんですね、まだ細かく見てなかったんですが……」
「依頼を受けて10日とか、書かれているものは10日以内に達成できないと失敗になるんだけれど、期限が書かれていないものは3か月ごと依頼を受けた者は報告の義務があるの。報告しなければ失敗。そして、1年達成できなければ失敗」
「期限がないのに?」
「1年間依頼を受けないと冒険者の資格はく奪でしょ?達成しない限り新しい依頼は受けられない。1年で資格はく奪だから、依頼も失敗扱い」
エディさんがぽんっと手を叩いた。
「なるほど、確かに!では3か月ごとの報告を怠ったら失敗というのは」
「……生死確認」
エディさんがはっとする。
「依頼主からすれば、亡くなっている冒険者がずっとその依頼を抱えて、新しく依頼を受けてもらえないのでは困るでしょう?」
「……」
エディさんは無言だ。
「依頼中に冒険者が亡くなることはゼロではないの。……だから、3か月ごとの連絡がない場合は、依頼中に何かあったと判断するんです。生きているのか死んでいるのか分からないままずっと依頼主を待たせることはギルドではできない」
エディさんは何を考えているのか分からないけれど、たぶん戦地でも似たようなことはあったんじゃないかな。
「もちろん、生きて帰ってくることを諦めるということではないけれど、期限を設けることで新しく物事を始めることができるようにと……」
ぎゅっと拳を握り締める。
「だから、エディさんも……期間を決めて、その期間の間に会えなかったら振られたってことにしたらどうでしょうか?」
「は?」
いや、私もだんだん何を言っているのかって話なんだけど。
だけど、私はそうした。
戦争が終わって次々と兵が引き挙げてきて。
もしかしたらアイシャさんの宿に一夜の花嫁を探してヒガナカさん……彼が来るかもしれないとアイシャさんに確認していた。
ジャンのことも伝えなければいけないかと。
ジャンだって、父親に会いたがる日が来るかもしれないし……と。
だけど、戦争が終わって、兵が引き挙げてきたと聞いて1か月たっても、2か月たっても、3か月たっても、一夜の花嫁を探す人は現れなかった。
もしかしたら、怪我の治療ですぐには来られないかのかもしれないと思ったりもした。
もしかしたら、今日こそ現れるかもしれない。もしかしたら、もしかしたら……と。
一生、死ぬまでもしかしたらを繰り返すの?とある時思った。ジャンに、父親がもしかしたら現れるかもしれないって期待して、期待が外れてを繰り返させるの?
そう考えたら、なんて残酷なんだろうって。




