ダンジョンの男女
「あ、着きました。あそこがダンジョンですよ~」
エディさんがダンジョンの入り口に視線を向けてふっと笑った。
「懐かしいな」
「は?来たことがあるんですか?」
冒険者登録したばかりなのに?
「ん?ああ、学園に通っているときに、魔物討伐訓練で何度か」
「学園?学園って、あの、学園ですか?貴族子息や令嬢の他、金持ちが通うという、あの?」
ジャンをいつか通わせたいと思っているところだ。
私は必要ないと言って、家庭教師がつけられただけで学園に通わせてもらえなかった。
まぁ、貴族令嬢の半数は通わないので珍しくはなかったんだけど。
「学園って、どんなところなんですか?ダンジョンに行くって、どうして?」
「学園では、魔法科と騎士科と普通科があるんだけど、魔法科と騎士科は魔法実習で魔物を倒す訓練があって、3年の夏休み明けに数回ダンジョンでの実習するんだ」
へー。そうなんだ。
「じゃあ、もしかして新人教育とか必要なかったのでは?」
と、会話をしている間に、1階層から2階層へと上がる。私が案内しなくても迷うことなくエディさんはダンジョンを進んでいく。
「あ、出た」
ゴブリンだ。ちなみに1階層ではスライムが出るけれど、襲ってこないので無視。
エディさんが剣を抜いて瞬殺し、そのまま足を進める。
「待った!」
エディさんの服のすそを引っ張って止めた。
「ゴブリンはこの鼻の頭の、ほくろみたいな黒いのが魔石です」
……ちなみに、銅貨1枚。パン1個だ。宿に泊まろうと思うと10体は倒さないといけない。
初心者冒険者は主にゴブリンを倒すんだけど、魔石が鼻の頭についていて、小指の爪よりずっと小さな魔石なので「鼻くそ」と呼ばれている。ずっとゴブリンばかりを相手にしている冒険者は「鼻くそ冒険者」と馬鹿にされることもある。……私もきっと、影で私は「鼻くそ冒険者」って言われてるんだろうな。
「え?あ、ああそうか……魔石、そう、お金を稼ぐために倒すんだよな……」
エディさんがはぁと息を吐きだす。
「ここは戦場でもなければ、学園の訓練でもなかったな……」
なるほど?学園の訓練でダンジョンに来た時は銅貨1枚の魔石など無視して魔物を倒すだけだったということなのかな?
いや、貴族が金稼ぎなどみたいな意識もあったっけ?
「次、行きましょうか」
3階層でオーク。
「首の付け根のこれが魔石です。さ、次」
4階層、5階層、6階層と進んでいく。
「学園ではこんなに進むんですか?」
難なく出てくる魔物を倒しながらエディがずんずん進んでいく。
「あ、いや……っと、レッドウルフか」
すでに8階層。レッドウルフは動きが早いから苦手なんだよなぁ。
追いかけて倒すのは無理だから、襲ってくるのをじっと待って、棒で叩く。
なんて倒し方を頭の中で考えていると、エディさんはレッドウルフに向かって突っ込んでいき瞬殺。
「えー、速いっていいなぁー」
攻撃されるまで待つのって退屈だし、慎重な個体だとにらみ合いが続いて時間の無駄なんだよねぇ。
「シャリアさん、レッドウルフの魔石は?」
あ、はいはい。仕事仕事。
「この額の角です。あ、それから尻尾が素材として使われるので持って帰りましょう。毛皮はもろくて使い物にならないので壁に飾っとくなどの目的で依頼がない限り無視していいです」
どんどん毛が抜けるから敷物にもできない、革は破れてベルトにも鞄にもならないという。尻尾だけは毛が抜けないので、飾りなどに使われるそうな。




