見た目からって、そっちじゃなくないかな
箒を床にざっと立てて仁王立ちになる。ちなみに、この箒はシャリアさんが貸してくれた仕込み箒だ。
いざという時に使いなって。さっそくいざという時が来ましたよ師匠。
「初心者冒険者に陥りがちな失敗って知ってますか?見た目から入るってやつですっ!」
あれ?これ、あってる?
かっこいいからと使いこなせもしない剣を持つとか、防御力が高そうだと重たく動きを阻害する防具を買うとか。
「動きやすくて使い慣れた物を使うのは鉄則ですよ!」
大丈夫、間違ってないはずだ?
「は、はい……」
エディさんがしゅんっと落ち込んだ。
「じゃ、行きましょうか」
箒を持って歩き出した私に、エディさんが並ぶ。
「えーっと、シャリアさん、それ、持っていくんですか?」
箒を指さすエディさん。
「いざという時にと、師匠が貸してくれたんです」
街を西側に進むと森に出る。東に進むとダンジョンがある。ギルド長はダンジョンに連れて行けと言っていたから東に向かって進んでいく。
「えーっと、師匠?……箒をいざという時って」
「あ、そうだ、アイシャさんを知ってますよね」
エディさんが顔を傾げた。
「宿を借りたでしょう?」
「あ、その箒、まさか……え?また僕、箒で追いかけまわさられるんですか?」
……ししょう、追いかけまわしたんですか。
「あのおばあさんが、師匠?」
「しっ!」
人差し指を立てて口の前に当てる。
「おばあさんって言ったら、貴族だろうと容赦なく叩きのめされますよ。アイシャさんって呼ばないと」
エディさんが素直に頷いた。……若干顔が青い気がする。
「どうしてあの宿に?1年宿を使うなら、家を借りた方が良いと思いますよ?貴族が使う宿と違って、食事も出ないですし、洗濯も頼めないですよ?」
エディさんがちょっと返答に困ったような顔を一瞬見せ、それから自嘲気味に笑った。
「あの宿じゃないと……意味がないんです」
ふぅーん。……あ、そういえばときどきいるな。
「もしかして、ジンクスにあやかってますか?」
「えっ?」
びくりとエディさんは体を大きく跳ねさせた。
「やっぱり!アイシャさんにあやかって泊まりに来る人がいるとかいないとか。昔すごい冒険者だったんですって。だからあの宿に泊まるとすごい冒険者になれるって噂もあるらしいですね。いや、あの宿に泊まってアイシャさんに見いだされた冒険者は成功するだったかな?」
首をひねる。逆にアイシャさんに箒で追い出されるような者は冒険者として成功しないなんて話もある。
……私もエディさんも追い出される寸前だっけ。
「噂はあくまでも噂ですよ、うん、そう、ただの噂ですからね」
ポンポンと励ますようにエディさんの肩を叩く。大丈夫、たぶん私だって、なんとか冒険者の稼ぎで生活して……いや、半分ギルド職員の稼ぎ……いや、8割方職員としての給料……。
あれ?だ、大丈夫だよね?噂だよね、ただの……。
「あ、いや、別にアイシャさんにあやかっているわけでは……」
ぼそぼそと何かをつぶやくエディさん。




