昇級チャーンス!
「万年鈍色級のシャリアなら、よく知ってるだろ?」
ギルド長がにやっと笑う。
「万年じゃないですっ!もう少しで銅色になりますっ!」
ぷんすこ。だいたい私は、リセットされてやり直してるんだし。ギルドの職員の仕事があるから依頼を受けられる日が少ないし。
「まぁ、登録してから3年鈍色だが、ちょうど、鈍色ってのがよくわかるはずだ。シャリア、ちゃんとこいつが一人できる限界までついてけよ」
「分かってます。アイシャさんに何度も指導されてますから。あれを真似すればいいんですよね?」
ギルド長がニヤニヤと笑う。
「そうだ。アレを、マネすりゃいい。あ、職員の仕事だが、特別に依頼扱いにしてやる。明日依頼達成で銅色だ」
「え?本当ですか?やった!ギルド長大好き!」
思わずギルド長に抱き着く。
「いや、いくら俺が好きでも、贔屓はしないぞ?」
「……なにそれ、単に喜びを表現しただけですけど?」
「おまえなぁ、子供じゃないんだから、喜びの表現で男に抱き着くんじゃない」
ギルド長が私をぺいっと引きはがして、頭を両手でがーっとかいた。
「ったく、じゃあ明日は頼んだぞ」
ギルド長がこんな時ばかりS級冒険者らしくものすごいスピードで立ち去った。
何よぉ。3年越しに念願の銅級になれるんだから、そりゃ嬉しくて仕方がないよ?
ぷーすか。
エディが冷たい声を出す。
「確か、シャリアさんは大切な人がいると言っていましたが、ギルド長のことですか?そうでなければずいぶんと、軽いですよね」
ありゃ?なんだかすごい冷気が。
「明日の新人教育別の人にしてもらえますか?」
あ、もしかして。モテすぎて嫌な目にあっていた経験上、私がギルド長に抱き着くような女だから嫌だと思ったのかな?
ちょ、だからと言って別の人に替えてはない!
明日新人教育の依頼を受けたら昇級できるっていうのに!
新人教育は通常鈍色に回ってこないんだよ。自分より上の級の依頼をギルド長の許可の元特別に受ける場合、プラス評価がある。しかも今回はギルド長の名指し……指名依頼扱いだろう。だからこそ昇級するというのに。
「ギルド長は私の兄みたいなものなの。誤解しないで!大切な人はもちろん息子のジャン。世界中で一番大切。私は何よりジャンが大切なの」
「息子?……兄?」
エディさんが驚いた顔をする。
「あのね、私は昔恋愛で痛い目にあったの。でもそのおかげでジャンに出会えた。もう、恋愛はいらない。他の女性はどうか分からないけれど……」
にこりと笑ってエディに言い切る。
「子供がいて、自分で稼げてる。男の人はいらないの。むしろ邪魔なの。迷惑なの」
稼げる女に寄生する男がいると教えてもらった。
血のつながらない子供を虐げる男がいると教えてもらった。
私はクリスにすっかり騙されたバカな女だ。
ジャンを傷つける男を見抜けないかもしれない。
だから、恋とか愛とか抜きにしても私の生活に男を近づかせようとはこれっぽっちも思わない。
あ、ところで、剣が買えないのは、高い剣を買おうとしてるから。
安い剣だと「シャリアの力じゃすぐに折れる」とか「シャリアの拳の方が強くて意味がない」とかなので。




