何のため?
「だが、飛び級はない。どんな実力があろうとも、だ」
ちらりとギルド長が私を見る。おや?私の出番?そうだ、説明。
「昇級には決められた回数の依頼をこなすと昇級試験受験資格が受けられるようになります。試験に合格すれば昇級です。また次の級を目指して依頼をこなしてください。それから……これはとても大切な話なんですが」
ごくりと唾を飲み込む。
「1年間依頼を受けないと、冒険者資格が剥奪になり、また鈍色級からやり直しです」
エディがちょっと驚いた顔をする。
「降格ではなく?再スタートするときにまたやり直し?」
「はい~、そうなんですぅ~」
涙目になりこくこくと頷く。
「1年のうち、依頼を1つでも受ければ資格が剥奪にならないんだ。受けて、失敗した場合は失敗数により降格にはなるが、剥奪にはならない。これには理由があり、引退を申告する制度がないからだ。1年活動がなければ引退扱いってことだ。じゃなきゃ、指名依頼や強制依頼があった時に大変なことになる」
へー、そうなんだ。ギルド長の言葉に私が頷く。あ、すいません。まだ勉強中ですよ。
「ああ、なるほど。怪我で1年依頼を受けられなかった金級の者が再活動するのに、金級の力があるのかって話もあるか。下手すれば銀級の力も出せないかもしれないってことだな。それなのに強制依頼があれば確かに手に余る。だが、飛び級がないのはどうしてなんだ?試験の結果によっては」
「騎士が忠誠を誓うのは誰だ?国か?陛下か?兵は誰のために戦う?国か?家か?名誉か?」
突然のギルド長の質問にエディさんは首を傾げた。
騎士は主となる者へ忠誠を誓うのだけれど、王国騎士団なら陛下。国というより人かなぁ?
兵が戦う理由?兵だから?戦うのが仕事だよね。仕事だからというなら金のため?あれ?
「冒険者は、何のために戦うか知っているか?」
え?
私はずばり、金のため……いや、金のためじゃないな。息子の、ジャンのためだ。
だから、いくらお金がたくさんもらえるからと言って、危険を伴う依頼は受けるつもりはない。
死んだら元も子もないし、怪我をしたってジャンをびっくりさせちゃう。
ジャンがいなかったら、生活のため……ってことになってたかな?
いやまてよ。戦う以外の仕事も冒険者にはあるから、戦う理由か……。
何だろう。
「考えたこともなかったな……」
エディさんがうーんと首をひねる。
ギルド長が、すっと指を依頼書の貼ってあるボードに向けた。
「依頼者のために戦うんだ」
そうだったんだ!
「村に魔物が出て困っている、隣街へ行くのに護衛してもらいたい、依頼はいろいろだが共通してることが一つある」
「共通?魔物と戦うってことかな?でも、薬草採取や掃除の依頼は魔物は関係ないし……えーっと」
ギルド長が私の頭にポンっと手をのせてから、ぎりぎりと絞めた。
「いたたたたた」
「お前は、なんで知らないんだ。一体何年ギルドで仕事してる」
「まだ、2年になるかならないかですよ」
身体強化発動。ふぅ、これで痛くない。
「ギルド長なのに職員が何年働いてるかも把握してないんですか?」
にやっと笑っていい返してやる。
ギルド長がぎろりと私をにらむ。にらまれたって怖くないもんね。身体強化重ねがけ8重に死角はない。ふんふんふーん。
あけおめ




