新人冒険者受付
……とはいえ、資格はく奪されて依頼数リセットになったから初めからやり直し中。間に合うのか?
大丈夫。いざとなれば……。
首にぶら下げたファンリルの牙とサイクロプスの角とファイヤードラゴンの逆鱗、これを売ればなんとか。
本当は私に何かあった時のためにとっておきたいけれど……。
「ばぁちゃんは喜んでジャンの面倒見てくれると思うぞ?」
むぅー。それはそう。師匠は私の息子のジャンにメロメロだ。
だけど私だって、ジャンにメロメロなんだから、1秒でも早く会ってぎゅーってしたいの!
ぷすっとほっぺたを膨らませると、ぷっと笑ってギルド長は去っていった。
カウンターの下に置いてある籠に手を伸ばす。私物は足元で各自管理しているのだ。
鞄を手にとって、立ち上がると、カウンターの前に一人の男性が立っていた。
年齢は、20代半ばかな。薄黄色のサラサラの髪を後ろで束ねているやたらと整った顔の男だ。
ギルド長も顔は整っているが、どっしりとかがっしりとか言った表現が似合うのに対して、目の前の男は、すらりとか凛としたという言葉が似あう。
背筋がピンとして、動きに無駄がなく洗練されている。
貴族?服装だけを見ると、ギルドにいても不自然さはないんだけど。まとう空気が不自然すぎる。
「あの」
ハッとする。しまったぁ。ぼーっとしてしまった。
帰ろうと思ったのに、これだけ目の前でじろじろ見てカウンターから去るわけにはいかない。
「どういったご用件ですか?」
依頼しにきたのかな。なら受付はすぐに終わるだろうし、急いで終わらせて帰ろう!
「その、冒険者登録をしたいんですが……」
「は?」
思わず声が出てしまった。
貴族が冒険者?いや、貴族というのはこっちの思い込みだし、私も元貴族令嬢で、貴族が冒険者になることに驚きはない。
でも、二十代半ばになって冒険者になろうという人は、非常にまれだ。貧しければ子供のうちから。そこまで貧しいわけでは無ければ家を出る成人になってから……15歳から冒険者になる人が多い。プラチナやミスリルを目指すには依頼の回数をこなす必要もあり、20代半ばでは遅いと言われているから……。
「おかしいですか?」
「あ、いえ。あの、で、ではこちらの登録用紙に記入を」
慌てて用紙を取りだし、男の人の前に置く。
すらすらと、これまた貴族が書くような美しい文字で名前を書く。
そして、私と同じように、途中でペンを止めて思考している。
……苗字をかこうか悩んでいるか、偽名にするか悩んでいるか……。身に覚えがありすぎて、やっぱり貴族なんじゃーんと脳内で突っ込みを入れる。
一応私も15歳で社交界デビューはしている。
16歳でクリスを好きになり17歳で家を出て、クリスに騙されてここに来たわけだけど。
目の前の男性は社交界で見た記憶はない……伯爵令嬢ごときが声をかけられない高貴な方か、社交界に縁がない遠方在住の貴族か、貧乏ゆえに社交場に出てこられなかったか、準男爵や騎士爵など1代限り貴族籍子息か……。
ふっと男の人……記入された名前からすると”エディ”が顔を上げたので、ばっちりと目があってしまった。
さらりと束ねた髪のひと房が顔の横に垂れて揺れる。
薄金色の髪がなんとも色っぽい。うちの子……ジャンも似たような髪の色をしているけれど、将来こんな風に成長するんだろうか?
いやいや。顔は私にそっくりって言われてるから、色気よりも愛嬌特化に成長するんだろうな。
「何か?」
不快そうな顏で尋ねられた。




