そして3年が経った
「ギルド長っ、他の冒険者にも同じこと言えますか?」
「うっ。いや、だいたいパーティーを組んでいれば、パーティーメンバーが助けるもんだろう?メンバーににらみを利かせろってならすぐにやるさ。男が逃げるつもりなら活を入れるか慰謝料でももぎ取ってやるが……。シャリアは前例がないパターンで……パーティーにも所属していない、夫もいない、両親もいないんだよな?それから、後衛職でもないなんてなぁ。後衛職ならしばらく依頼のランクを落として安全マージン確保させればいいんだろうが……。どうしろって言うんだよ」
「確かに、例外中の例外ですけど。……ほかの新人冒険者なら、食堂など別の仕事を紹介して冒険者を休んでもらえばいいですよね。……でもその場合は冒険者に戻ってこないことが多く。シャリアさんには戦力としてぜひ冒険者は続けて欲しい……。だから、こうしてギルド長に相談してるんですよ?」
二人の言い争いの声は、よく聞き取れないけれど……どう考えても、私のことでもめてるんだよね……。
私のせいで、迷惑をかけている……。
「あのぉ、冒険者として働くのが無理なら、冒険者を辞めて他に仕事を探しま「「ダメですっ!」」」
ミーニャさんとギルド長の声がはもった。
「冒険者を辞めるなんて才能の無駄遣いで、もったいないです!」
「そうだ、ばぁちゃんが弟子にしたんだぞ?その意味が分かるか?」
ああそうだ。アイシャさんにはお世話になって……。
弟子だと名乗ってもいいとまで言ってもらったのに。
たった3か月で冒険者を辞めるなんて……。
「そうだ!ギルドで出産まで働けばいい!」
「え?」
ギルド長がぽんっと手を叩いた。
「ちょうどいい。シャリアは知らないことが多いだろう?ギルドで働きながらいろいろ勉強するといい」
ミーニャさんも頷いた。
「そうです、さすがギルド長!どんな依頼があるのかとか、依頼料の正当金額も覚えられますよ。あとは魔物の分布、季節ごとに出没場所が移動するとか分かってきますよ。あとは魔物の素材も覚えられます。討伐証明部位、素材として売れる部位など。それからえーっと、パーティーを組む人を探すこともできるかも」
ギルド長が頷いた。
「そうだな。ギルドのカウンター業務じゃなくても、併設の食堂の手伝いをしてもいいし。昼間なら問題ないだろう」
「それに、ギルドの職員として働くなら、職員用の寮に入ることができますよ!家族寮なら、子供が生まれても一緒に住むことができますよ!」
「え?本当ですか?」
思わず反応してしまった。
「お願いしても、いいですか?」
と、頭を下げると、ミーニャさんとギルド長がひそひそと会話している。
「これで人材流出阻止」
「囲い込み成功ですね」
そして、気が付けば3年ちょっとが過ぎたのだ。私は気がつけば20歳。
カーン、カーン、カーン。
「あ、5の鐘ですね!じゃ、お先に失礼しまーす!」
「ったくお前は。本当に金を貯める気あるのか?残業すれば残業代が出るってのに」
ギルド長のため息に、あかんべで答える。
「かわいい息子が待ってるのに、残業なんてできませんっ!」
今私は、8時ー5時でギルド職員として働きながら、週1……3時間くらい冒険者をしている。
というのも、冒険者としての依頼をこなさないと、資格はく奪になったり(1年何も依頼を受けなかった妊娠出産時期に資格を失った……前科あり)依頼を数こなさないとランクが上がらなかったり……。
いや、別にプラチナ級とか金色級とか目指してるわけじゃないんだけどねぇ。
鈍色級……一番下の依頼料めちゃくちゃ安いんだよ。
せめて鈍色から銅色。できれば銀色級まで上がりたい。そうすれば、息子を学校に入れるだけのお金はできると思うんだ。
バカみたいに、冒険者のランクをオリジナル設定にしちゃって反省している。
もっとわかりやすくすればよかった。
E鈍色
D銅色
C銀色
B金色
Aプラチナ
Sミスリル
って感じですぅ―。いちおう、鈍色はにびいろと読みます。濃い灰色です。なんかにびいろという響きが気に入っただけです……。




