第8話「新たな挑戦、家族で迎える春の嵐」
桜が満開の春。
悠翔の通う小学校では、新学期が始まった。
新しいクラス、新しい友達、そして新しい生活リズム。
だが、家の中は少しざわついていた。
* * *
ひかりはリユニオンライブを終えてから、出演依頼が次々と舞い込み、スケジュールは過密を極めていた。
一方、悠真もWBC代表選手としてのプレッシャーと、阪神タイガースの開幕戦に向けた調整に忙殺されていた。
「今日、悠翔の学校の参観日なんだけど……」
ひかりがスマホを見ながら呟いた。
「またか……俺も明日から連戦だ。行きたいけど、無理かもな」
「……そうね、子どもの行事、ちゃんと顔を出したいのに」
二人の声には、疲労と少しの焦りが混じっていた。
* * *
ある日の夜。
悠翔が眠りについた後、二人はリビングで話し合いを始めた。
「家族の時間が少なくなってる。これじゃ、悠翔にさみしい思いをさせてしまう」
「お互いに仕事も夢も大切だけど、バランスを取らなきゃ」
悠真は真剣な眼差しで言った。
「俺たちにできることは、時間の質を高めることかもしれないな」
ひかりもうなずき、
「たとえ短い時間でも、全力で向き合う。そうやって、家族の絆を強くしよう」
* * *
翌日。
参観日、二人は揃って学校へ向かった。
悠翔は教室の前で、少し照れながらも嬉しそうに両親を見つめた。
授業中、悠翔が発表した作文は「夢と家族」についてだった。
「僕は、パパみたいに野球選手になりたい。ママみたいに歌手にもなりたい。けど、一番大事なのは家族だって気づいたから」
教室中が温かな拍手に包まれ、悠真とひかりは目を潤ませた。
* * *
夜、帰宅後の家族団欒。
悠翔は自分の宝物のノートを開いて見せる。
「ねえ、これ読んで」
そこには、家族の未来に向けた小さな夢や約束が綴られていた。
「ずっとみんなで笑っていたい」
「お父さんのホームランが見たい」
「ママの歌を聞きながら寝たい」
悠真は力強く頷き、
「おう、そのためにもっと強くなるし、時間も作る」
ひかりも優しく微笑んだ。
「家族のために、もっと頑張ろうね」
* * *
春の嵐が吹き荒れる日も、家族の絆は確かに根を張っていた。
それは、夢を追う二人と、彼らを見守る小さな命が織りなす、未来への物語の始まりだった。