第2話「それぞれの夢と、隠された決意」
「さぁ、本日の4番、ファースト・阪神タイガース、相馬悠真!」
甲子園が沸き立つ。
開幕から苦しんできた男が、今日こそはとバットを握りしめる。
スタンドには「相馬」の名を掲げたボードが並び、歓声が轟く。
プロ9年目。4番打者。
だが昨年は怪我で不調。今年も開幕からわずか2本塁打。世間では“終わった天才”と囁かれることもある。
けれど彼の中には、今もあの炎がある。
(……諦めるには、まだ早すぎる)
その頃、朝比奈家。
テレビの前でひかりと悠翔が見守っていた。
「がんばれ、パパー!」
「悠真くん……届いて」
ピッチャーが投げた瞬間――
カキィィン!
「打ったァァーーー! これは伸びる! 伸びるぞーーーっ! ライトスタンド一直線、ホームラン! 相馬悠真、ようやく4番の仕事を果たしたーッ!」
甲子園が揺れる。
スタンドの虎党が総立ちで歓声を送る中、悠真はベースを一周しながら、胸元に指を当てた。
それは「家族」への合図だった。
* * *
その夜。
「悠真くん、今日のホームラン……すごかった」
「まだまだこれから。悠翔のためにも、君のためにも、もう一度本気でやるよ」
けれど――
ひかりはまだ、心の中で揺れていた。
かつてのステージへの想い。最近届いた“芸能界復帰”の誘い。
彼女には、まだ伝えられていない夢がある。
「……私も、もう一度ステージに立ってみたいなんて、言ったら……どう思うかな」
その言葉は、まだ誰にも聞こえていない。
だがふたりの物語は、確かに“新しいステージ”に踏み出そうとしていた。




