表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ラリー・ラブ!~アイドルと白球の約束~』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
スピンオフ未来編『 ~ずっと一緒に、約束の先へ~ 』
32/41

第1話「ただいま、おかえり」


夕暮れの甲子園球場。

誰もいないグラウンドに、ひとりの男が立っていた。

阪神タイガースの背番号「7」――相馬悠真。その名は、プロ野球界でも一目置かれる存在だった。


高校時代、野球部のエースで四番。全国大会での劇的な逆転ホームランは「奇跡の一撃」として語り継がれている。そして卒業の年――プロ野球ドラフト会議で、7球団が競合するほどの逸材となり、最終的に指名を勝ち取ったのが阪神タイガースだった。


「……あのとき、全部が変わったんだよな」


バットを握る手に、当時の重みが蘇る。

夢だったプロの世界。だが今、その夢は現実の厳しさの中で揺らいでいた。


ここ数年、成績は伸び悩み、今季は“背水の陣”とされるシーズン。

打てなければ終わる。阪神の4番としての責任を、悠真は誰よりも重く感じていた。


そんなとき、スマートフォンが鳴る。

画面に映る名前は、「ひかり」。


「悠真、お疲れさま。今日は早く帰れる?」

「ちょっと遅くなるかも。でも、夕飯は家で食べたいな。……ハンバーグ、食いたい」

「ふふっ、了解。おチビと一緒に待ってるね」


電話越しに聞こえる、家族のぬくもり。

それが今の彼を支えるすべてだった。


* * *


「ただいまー」

「おかえりなさい、悠真くん」


玄関先で出迎えたのは、妻――朝比奈ひかり。かつてのトップアイドル。現在は一児の母として、悠真の帰りを毎日待っている。


「パパきたーっ!」

抱きついてきたのは、2歳の息子・悠翔ゆうと

元気いっぱいにボールを握って、パパの足元にまとわりつく。


「悠翔、パパね、高校のときホームラン打って、プロ野球選手になったんだよ」

「ほーむらん? うってー!」

「よーし、任せろ!」


あの夏の日。

高校球場でひかりに誓った――「プロになって、君のためにホームラン打つ」

その言葉は、時を超えて家族の中に生きている。


悠真はその夜、ベッドで眠る我が子の寝顔を見つめながら静かに呟いた。


「――まだ、終わってない。次の夢は、この子に“本気の背中”を見せることだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ