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◇エピソード9:三人の絆の試練
夏、はるかの活動は順調だった。
一方で、悠真のスクールでは大きな全国大会への準備が本格化し、家を空ける時間が長くなっていた。
ある日、陽菜が突然高熱を出し、はるかは仕事の直前で現場を抜け出した。
その日だけでなく、予定の変更やすれ違いが重なり、やがて夫婦の間に言葉の少ない夜が増えていった。
「……こんなとき、どうして支え合えないのかな」
ベビーモニター越しに眠る陽菜を見つめながら、はるかがぽつりと呟いた。
「俺だって支えてるつもりだった。でも、きっと片方の目でしか見えてなかったんだ」
悠真のその言葉が、重く心に残った。
彼らは夫婦であり、親であり、それぞれの夢を持つひとりの人間でもあった。
だからこそぶつかる。だからこそ、選び直さなければならない。
その夜、ふたりは久しぶりに陽菜のアルバムを開き、
生まれた日のこと、一緒に笑った日の写真を見返した。
「忘れたくない。私たちがどうやって“家族”になったか」
「じゃあ……もう一度、一緒に思い出していこう」
ラリーは止まっても、また打ち返せばいい。
ふたりはそうやって、もう一度同じコートに立ち直した。




