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◇エピソード8:ひかりの新曲と挑戦
ひかり――それは、はるかが復帰後に芸能界で新たに選んだアーティスト名だった。
「“母になったからこそ歌えるもの”があると思ったの」
そう語ったインタビュー記事が話題になり、全国からエールが届いた。
だが、その道のりは甘くなかった。
アイドル時代の「かわいさ」「キラキラ感」を求める声と、
「ママになった女性像」としてのイメージとのギャップ。
一度離れたステージに戻ることの難しさ――。
そんな中、はるかは自ら作詞に挑戦し、「ひかり」という名義で新曲を発表した。
タイトルは『ラリー』。
テニスを通じて得た人生、愛、そして“返し合うことで生まれる絆”をテーマにした楽曲だった。
歌詞には、悠真と陽菜、そして過去の自分への想いが込められていた。
──ラリーが続く 風が吹いても
君がそこにいてくれるから 私はまた立ち上がれる
ライブ当日、客席の最前列には悠真と陽菜の姿があった。
照明が落ち、静寂の中に響き始めたピアノの音。
涙をこらえながら、マイクを握るはるかの瞳は、まっすぐに“今”を見つめていた。




