第9話:届け、私の想い
<冒頭モノローグ:花村ひかり>
「私は、逃げない。
たとえ涙がこぼれても――
想いは、ラケットに乗せて伝えるから」
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【場面:試合会場・屋外テニスコート】
県予選直前の練習試合。ひかりは強豪校とのシングルスに抜擢される。
「私が出るって……本気で勝たせてもらう!」
周囲の視線、プレッシャー。それでもひかりは一歩も引かない。
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【場面:ベンチ/開始直前】
はるかが水を差し出し、そっと背中を押す。
「私も昔は怖かった。でも、ひかり、今のあなたは本当に強い」
ひかりははるかを見つめ、ゆっくり頷く。
「ありがとう。私、今日こそ伝えるよ」
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【場面:試合開始】
相手は全国レベルの実力者。ひかりは序盤、押され気味。
「スピードも球の重さも違う……!」
だが、持ち前の粘り強さと冷静な判断で少しずつ流れを引き寄せていく。
観客席で悠真が叫ぶ。
「ひかり、攻めろ! 自分を信じろ!」
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【場面:試合終盤】
劣勢からの逆転をかけ、ひかりはフルスイング。
(届け――この一球に、全部込める!)
スマッシュがラインを叩く。
相手のラケットが届かず、ポイントが決まる。
歓声が湧く中、ひかりは勝利を決めた。
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【場面:試合後】
コートの外で、悠真が駆け寄る。
「ひかり、すごかった……本当に、すごかった」
ひかりは目に涙を浮かべながら、ついに言う。
「悠真くん……私、あなたのことが――好き。
ずっと前から、大好きだった」
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【場面:遠くで見つめるはるか】
はるかはその場を離れようとするが、蓮見がそっと声をかける。
「それでも、応援するんですね。あなたって人は、本当にすごい」
はるかは微笑む。
「恋って、そういうものよ」
<ラストナレーション:相馬 悠真>
「伝え合うって、こんなにも苦しくて、でも――こんなにも温かい」




