第七のドレス

8 過去の断片

エリーゼは、ブティックの薄暗い光の中でスツールに崩れ落ち、目の前の開かれたままの古い日記を見つめていた。ミラベルの必死な走り書きと、心に残るスケッチ――「最初の鍵」――が、彼女の疲れた目の前で揺れていた。指ぬきの不思議な輝き、真実の鏡に映るぼやけた姿、そしてカミーユが語る母親の失踪の話が、彼女の懐疑心の端をかじっていた。トランクは今、無視できない、辛抱強い鼓動のように安定して唸り、イザベルの金のピンは、彼女が慌ててそれを押し込んだ引き出しの中で重くのしかかっていた。

彼女は数時間前にカミーユを家に帰し、少女の熱心な笑顔が、しぶしぶ従う態度に変わるのを見送った。今、ブティックの秘密と二人きりになったエリーゼは、疲労が彼女を引っ張るのを感じながら、こめかみを揉んだ。

「記録して、終わり」と彼女は独り言を言った。しかし、ステンドグラスの窓が金色の糸が影の中を通る踊るような模様を映し出し、トランクの唸りが予期せぬうたた寝に誘うにつれて、彼女のまぶたは重くなっていった。

夢は、驚くほど鮮明な、超自然的な精度で彼女の心に縫い込まれたビジョンで彼女を捕えた。

彼女はブティックの下の洞窟の中に立っていた。壁は苔で覆われ、空気は開いた傷のように脈打つ金色の輝きで満ちていた。その中心には、裂け目――現実そのものの裂け目――が輝きを放ち、その端は光の糸にほつれていた。ミラベルはその前に立っていた。彼女の銀色の髪は肩の周りで乱れ、手には恐ろしい力で輝く針を握っていた。

「あなたはやりすぎたわ」ミラベルは叫び、彼女の声が石壁に反響した。

エリーゼは彼女の視線の先を追った。そこにはラファエルがいた――より若く、より鋭く、彼の灰色のコートは完璧だったが、彼の目はむき出しの絶望で狂っていた。

「これは俺が直す」と彼は唸り、金の糸が縫い目に絡みついているドレス――おそらく6番目の作品だろうか？――を握りしめ、裂け目に向かって突き出した。

空気がガラスのようにひび割れ、時が裂ける悲鳴が上がり、ミラベルが飛び出し、彼女の針が生地を貫いた。金色の光が噴出し、彼女を丸ごと飲み込み、ラファエルは後ずさり、彼女が裂け目の貪欲な輝きの中に消えるのを見て呪った。

エリーゼは息を呑んで飛び起きた。日記は彼女がうたた寝をしていた頬に食い込んでいた。彼女の心臓はドキドキと高鳴り、洞窟の輝きが彼女の目の奥にいつまでも残っていた――あまりにも現実的すぎるほどに。彼女は顔をこすり、ブティックの光景が再び鮮明になった。マネキンが沈黙の証人として立ち、カウンターには忘れられた道具が散乱し、トランクは執拗なメロディーを唸っていた。

「夢だ」彼女はささやき、彼女の声は静寂の中で震えた。「ただの夢よ。」

しかし、ラファエルの顔――彼の声――は昨日の灰色の服を着た男と一致し、トランクに対する彼の飢餓感が、完璧な明晰さで彼女の心の中で再生されていた。ミラベルの手紙―― 彼が壊したものを修復する ――そして肉屋が語る断絶の物語が、彼女の思考の中に縫い付けられ、そのビジョンを単に無視できないものにした。

彼女は再び日記を開き、必死に答えを探し、走り書きのメモで動きを止めた。「バランスサイト――下――彼がそれを壊した場所」。下――地下室？彼女の息が止まり、夢の洞窟が突然、無視できないほど近くに感じられた。

ドアの軋む音が彼女の螺旋状の思考を遮った。一人の女性が入ってきた――背が高く、針金のように痩せ細り、髪は鋼のように灰色のタイトなお団子にまとめられ、目は針のように鋭く針金入りの眼鏡の奥で光っていた。彼女は何十年も仕事の染みがついた仕立て屋のエプロンを着ており、彼女の存在はエリーゼが本能的に背筋を伸ばすほどの重みを帯びていた。

「マリー＝クレールよ」とその女性は発表し、彼女の声は切り詰められ、正確だった。「ミラベルのライバル――かつては彼女の見習い。あなたはエリーゼね、そうかしら？」

エリーゼはうなずき、警戒心が背骨に沿ってうずいた。「何がご用ですか？」

「あなたに警告するためよ」マリー＝クレールは近づき、彼女の視線はトランクにちらつき、それからエリーゼの顔に戻った。「あなたはベールを破っているわ、少女――理解していないことを突いているのよ。そのウェディングドレス、ここから聞こえる唸り――それは目を覚ましている。ミラベルはそれを止めようとしたのよ、そして彼女がどうなったか見てごらんなさい。」

「ベールを破る？」エリーゼの眉がひそめられ、夢の裂け目が彼女の記憶の中でひらめいた――金色で、端がほつれている。「それはどういう意味ですか？」

マリー＝クレールの唇は薄くなり、何か――罪悪感？――が彼女のやつれた顔を横切った。「時間の間の線よ。彼はそれを破ったのよ――何十年も前に――そして彼女は10年前にその代償を払った。私はかつて彼女を助けたわ、その代償を見るまではね。あなたは再びすべてをかき回している――ラファエルが見ているわね、そうでしょ？」

エリーゼの胃がねじれ、ラファエルの灰色のコートと飢えたような視線が心によみがえってきた。「あなたは彼を知っているのですか？」彼女は低い声で尋ねた。

「よく知っているわ」マリー＝クレールは言い、彼女の落ち着いた外面を通して苦味がにじみ出ていた。「彼は力を求めていたのよ――運命そのものを曲げるドレスを。私は彼のために縫ったわ、すべてがうまくいかなくなるまではね。ミラベルは彼と戦ったのよ――下の場所で。彼女の道に従わないで――そのベールをさらに広げたら、彼女が失った以上のものを失うわよ。」

彼女は去ろうと向きを変え、ぼんやりとした顔で二人を見つめているように見えるマネキンのそばで立ち止まった。「それを鍵をかけて置いておきなさい」彼女は言い、トランクに向かってうなずき、そして去り、ドアは彼女の後ろで不安な最終性を持ってバタンと閉まった。

エリーゼはゆっくりと息を吐き出し、マリー＝クレールの警告―― ベールを破る ――が夢の裂け目、ラファエルの呪い、ミラベルの必死の抵抗を反映し、肉屋が語る断絶の物語が彼女の思考を縫い合わせ、無視できないものにした。彼女は震える手で日記を握りしめ、「バランスサイト――下」――重いベルベットのカーテンの後ろに隠された狭い階段のページに戻った。彼女は昨日それらをちらりと見たが、重要でないものとして無視したが、今は……。

彼女は日記に鍵をかけようとして立ち上がったが、柔らかなノックがそれを遮った――自信に満ちたマリー＝クレールの足取りとは似ても似つかない、控えめなノック。彼女がドアを開けると、見慣れた姿があった。広場からの難民の女性だ。彼女の1700年代のガウンは端が擦り切れており、彼女はまるで指の間で消えてしまうかのように震える手で布切れを握っていた。

「あなた」エリーゼは驚いて後ずさりしながら言った。「今度は何ですか？」

「お願いです」と女性はささやき、彼女のアクセントは彼女が着ているドレスと同じくらい濃く古めかしかった。「私はあなたを見たわ――それを感じたわ。ドレスは――私を家に呼んでいる。これは――」彼女は布をエリーゼに向かって突き出した。バラの香りと時間そのものを運ぶ、輝く布の切れ端。「それは彼女を覚えているわ――ミラベルを。彼はすべてを壊した後、彼女は私たちを直そうとしたのよ。」彼女の乳白色の目がトランクにちらりと向かった。「あなたはできるわ――私は知っている。」

エリーゼはためらいながら布を受け取った。その織り方は柔らかいが、どういうわけか彼女の指先に生きていた。そしてその中から声が響き渡った――かすかだが、差し迫った様子で、間違いなくミラベルのものだった。「 サイトを見つけて――裂け目を――修復しなさい。 」

彼女は息を呑んで布を落とし、その言葉は冷たい水のように彼女の中に沈んでいった。「これは何なの？」彼女は要求したが、その女性はすでに後退し、「彼は私を閉じ込めたわ――灰色の男――金色の光」とつぶやき、外に広がる霧の中に消えていった。

エリーゼは落ちた布を見つめた。その奇妙な輝きはすでに薄れつつあり、ミラベルの幽霊のような声が彼女の耳に残っていた―― サイトを見つけて 。トランクの唸りが突然高まり、低い音で床板がガタガタと鳴り、ステンドグラスの光が鋭く点滅した――金色が影の中を通り抜け、鋭く、そして一瞬で消えた。

彼女はひざまずき、震える指で布を拾い上げた。そして唸りはますます大きくなり、どういうわけか彼女自身の呼吸と同期した。夢の洞窟――下の裂け目――はマリー＝クレールの不可解な警告、難民の必死な嘆願、日記の急いで書かれた走り書きと一致した。ラファエルの灰色の姿が彼女の思考の中に大きく浮かび上がり、根本的な何かを壊していた――ミラベルが戦い、金色の光の中に消えていく。

彼女の実用的な心は、合理的な説明――幻覚、偶然、疲労――を探し求めたが、布の声、ピンの奇妙な感情、肉屋の断絶の物語はすべて縫い合わされ、否定できないものになっていた。

彼女はトランクに向かい、その真鍮の錠が今やぼんやりと光り、刻まれた線が裂け目のギザギザの端のように脈打っていた。彼女は掌を押し当てると、唸りがスパイクした――熱く鋭いエネルギーが彼女の腕を駆け上がり――トランクが再び、今回はより大きく、内部の何かが壊れようと苦労しているかのようにドンと音を立てた。

彼女の周りで、マネキンの頭がわずかに傾いているように見え、影が彼らの空白の顔に伸びていた。そして、かすかな物音が空気をかすめた――絹が動くか、あるいはささやきかもしれない。

「止まって」彼女はつぶやき、彼女の手を引き戻し、心臓はドキドキと高鳴った。唸りは従順に弱まったが、トランクの存在は彼女の感覚に押し寄せ続け、生きて、待っているようだった。彼女は日記をしっかりと握り、再び「バランスサイト――下」――重いカーテンの後ろの地下室への階段のページを開いた。それは、彼女がもはや見ないふりができない糸だった。

カミーユの言葉―― ドレスにつながっている ――とマリー＝クレールの警告―― 彼がそれを破った ――が、冷静を保とうとする彼女の決意と衝突した。ラファエルのスケッチ、トランクに対する彼の計算された視線、「灰色の男」のささやき――それはすべて妄想であるはずがない。

彼女はカーテンに向き直り、窓が開いていないのにその重い生地がかすかに揺れているのを見た。そして、彼女はその向こうの階段をちらりと見た――暗く、狭く、影の中に降りていく階段を。頭上のステンドグラスの光がちらつき、金色が脈打つように明滅し、カウンターの鏡が動きで波打った――金色の手が複雑な模様を縫い合わせ、そして一瞬で消えた。

彼女の胸が締め付けられ、懐疑心が説明のつかない瞬間のたびにさらに大きくひび割れた。「私は彼女ではない」彼女は半分自分に、半分は見守っているブティックにささやいた。「私はミラベルではない。」

しかし、トランクはもう一度ドスンと音を立て、彼女がもはや無視できない呼びかけだった。

彼女は布の切れ端をつかみ、その織り目が今や彼女の肌に冷たく、金色のピンと一緒に日記の中に丁寧に押し込んだ。「明日はカタログを作る」彼女は声に出して言い、その声は確固たるものだったが、その下には震えがあった。「それだけよ。」

それでも、彼女の目はカーテンの後ろの階段に残り、夢の中の金色の裂け目が彼女の心の中で輝いていた――ミラベルの必死の抵抗、ラファエルの苦々しい呪い、彼女がまだ理解していないが、もはや否定できない現実の亀裂。

ブティックは彼女の周りで落ち着きを取り戻したが、沈黙していたが、紛れもなく生きており、そして彼女は、それ――そしてリュミエールそのものが――彼女がどれほど固く不信にしがみついていようとも、走り去ることのできない何かに彼女を引き寄せているように感じざるを得なかった。