チャッピー!
トイウルフに憑依したラスト――もといチャッピーは、先日アリスの懐柔に対抗する鉄の誓いを立てた。立てたはずなのだが......。
一週間後。
「チャッピー! ほら、見て! これな~んだ?」
芝生のグラウンドでアリスがチャッピーに何か見せている。
他の名前も、何度か候補に上がったが、結局チャッピーで定着してしまったようである。
「......骨? の玩具か?」
「そう! 新しいおもちゃを買ってきたの! 噛んだらちゃんと味がするみたいよ! すごいでしょ~。きっと気に入ると思うわ!」
「ふん、そんな子供だましの道具で我が満足すると思うか?」
「えい!」
「ワンッ!」
アリスがおもちゃを投げた瞬間、チャッピーは全力疾走しておもちゃを回収し、再びアリスの元へ尻尾を振って戻ってきた。
「もう取ってきたの? 偉いわね~!!」
「......はっ!」
「うふふ」
我に返った頃にはもう遅かった。
結局その日は散歩日和の公園を満喫し、家に帰った後はチャッピーのために用意された料理を味わい、そしてアリスと共にフカフカのベッドで眠るという、この上なく充実した一日を過ごした。
チャッピーはアリスが寝息を立てている傍ら、現状を分析した。
(......まずい。まずいぞ。心地よい。大変、心地よい。最初は我を軟禁状態にでもするかと思ったのだが、まさか普通に外へ連れ出すとは。適度な運動も充分にできておる。それに我に与える食事も栄養に偏りがないもので、おまけにうまいときた。あのアリスとかいう女、ベタベタと暑苦しいこと以外はかなり気配りが行き届くようだ。かなりのやり手だな)
いつでも抜け出せるという状況は、焦りをかき消し、かえってその環境の沼に沈んでいくという結果を招いたようだ。
(だが、我を甘く見るなよ。我は、揺るがぬ意志で、必ず......)
改めて対抗の意志を固めようとしたが、心地よい睡魔が全ての意識をかっさらっていった。
翌日。窓から流れる風が心地いい、晴れた朝だった。
チャッピーが目を覚ますと、寝言を言いながら相変わらずアリスはあやしている。しかし抱きかかえているのはぬいぐるみで、チャッピーと間違えているようだ。
「いいこ、いいこ......むにゃ」
「おぬしは......寝ても覚めても暑苦しいやつだな」
「.....ん~?」
その声に、アリスは目を覚ます。そして再びチャッピーに近づいてきた。
「ん~!」
「!? むぐ!」
「捕まえた~。逃げちゃったかと思ったわよ~。よかった~」
そう寝ぼけながら言って、顔をうずめてくる。
「全く......」
この暑苦しさに、慣れ始めている自分もいることを、彼は何となく自覚し始めていた......。
その時、アリスが何かに気付いた。
「......臭う」
「?」
「臭う!!」
その瞬間、アリスは驚きながら急に距離を取った。チャッピーもつられて驚く。
「どうした?」
「あ、あ、あなたから獣臭がする!! ロボットのはずなのに!!」
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