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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第2章 冒険者パーティー『ヘルハウンズ』
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第6話 誤解と和解

 変な胸騒ぎを感じて目が覚めた。

 起きて自分のベッドと隣のベッドを見ても、ご主人ズの姿がない。

 ベッドを飛び起きて、食堂へ向かう。

 朝食を作っていた女将さんに聞いても、今日は見ていないという。

 慌てて外へ飛び出し、周囲を見回す。

 宿から飛び出してきた俺を見て、道行く人が怪訝な顔でこちらを見てくる。


「なあ、誰か黒いドレスの三人組の少女を見なかったか!?」


 聞いてみるが誰からも反応はない。

 項垂れて途方に暮れる俺に、一人の老人が歩み寄った。


「黒いドレスの三人組なら北門から出て行ったのをみたよ」

「──助かる!」


 俺は北門を目指して駆け出した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 北門が見える場所まで来ると、衛兵たちが慌ただしく動いて閉門操作を開始していた。

 ゆっくりと大きな扉が閉まっていく。


「待ってくれぇ!!!!」


 出せる限りの大声で叫び、俺は全力で駆けて、締まり切る直前の隙間に飛び込んで街の外へ出た。

 挟まれることなく、顔面から地面に突っ込んで怪我をしたが、これぐらいどうってことはない。


「おい、お前!? 死にたいのか!? 遠くで大規模魔法の発動が観測されているんだぞ!?」

「うるせえ! 俺の主人たちがいるんだ!」


 衛兵に怒鳴り声を浴びせ、立ち上がって駆け出す。


 顔を上げたその先で、大規模魔法の応酬が繰り広げられていた。


 爆炎と黒炎の応酬。

 まだ離れた位置にいるのに爆風と煙が飛んでくる。


 爆風に負けじと駆け続け、視界に傷だらけのケルベロスの姿を捉えた。

 二匹のナインテイルと戦い、体のあちこちに裂傷や火傷を負っているように見えた。


 一匹の血まみれのナインテイルの喉元にロスが噛み付いて離さない。

 もう一匹のナインテイルが助けようとして爆炎を何度も放ってケルベロスの体の火傷が広がっていく。


「充分つええじゃねえかよご主人ズ!?」


 立ち止まることなく、ケルベロスに向かって駆けていく。

 俺なんかがナインテイルになんて敵うわけがない。丸腰だが時間稼ぎくらいは出来るはずだ。


 見ると離れた位置にナインテイルの飼い主らしき冒険者が数人いる。

 飼い主がいるなら話せば通じるはずだ。


 こんな戦いはやめてくれ。

 俺はご主人ズが傷付いて倒れるところなんて見たくはない。


「ストップ! ストーーーーーーーーーーーップ!!!!!」


 大声を上げながら近づくが戦闘は続く。

 ロスがチラリとこちらを見た瞬間に喉元に噛み付かれていたナインテイルが体を捻って拘束を抜け出してもう一匹のナインテイルと共に距離を取る。


 並んだ二匹が爆炎を同時に放つ。

 ロスがこちらに気を取られたせいか反応が遅れたケルベロスが、その体を爆炎に焼かれる。


 もう一度、ナインテイルが爆炎を放つ──その瞬間、俺は全ての力を込めて跳んでいた。

 足首が、膝が、関節が、筋肉が、どうなろうとどうでもいい。限界を超えた力で跳んでいた。

 目の前で傷付いて弱っていくご主人ズを見ていられなかった。


 ご主人ズとナインテイルの間に飛び込み、強烈な爆炎をこの体に受け、火だるまになる。

 自分の体が焦げる匂いを感じながら、俺は消えていくのだろう。


 一撃は防げた。

 その後はわからない。

 ──ご主人ズは怒るだろうか。


 炎の塊になって、体が地面に落ちる。


「「「デッド──!?」」」


 炎上する俺を見て、ご主人ズは得意ではない水魔法を浴びせてくれた。

 なんとか消火されたが、体の半分以上が炭化していて感覚がない。


「「「うわああぁぁぁぁぁぁぁ──!?」」」


 ご主人ズの叫び声が聞こえて、ケルベロスの体が黒炎に包まれたかと思うと三人の少女に分離した。

 身体中火傷や裂傷でボロボロになっているご主人ズが、必死に俺を揺する。


「デッド、嫌だ……」

「デッド、消えないで……」

「デッド、我らを置いて先に逝くな……」


 三人とも、自身の怪我よりも俺のことを気にしている。

 滝のように涙を流しながら、朦朧としている俺を揺すっている。


「──大丈夫ですか!?」


 大丈夫なわけがあるか。普通の人間ならとっくの昔に死んでるっつーの。

 冒険者風の男が近寄ろうとして寄ってきて憎しみに震えるご主人ズに襲い掛かられるが、先ほどのナインテイルが間に割って入り、睨み合う状態になる。

 ご主人ズが少女の姿で立ち向かって行こうとするところを見るに、もう魔力切れを起こしているのだろう。


 ご主人ズは血が滲むほど唇を噛み締め、この世界に絶望して血涙を流している。

 俺はそんなご主人ズの姿など見たくなかった。


 ──まだ、一緒に笑っていたかったのにな。


 俺の意識が遠くなりつつあるのに気が付いたご主人ズが慌てて駆け寄ってきて、言葉にならない泣き声を上げる。


「永いこと頑張ってきた結果が……こんなだなんて……」

「愛する者一人すら守れず……」

「何が……冥府の番犬だ……クソ喰らえ……!」


「「「……でも、最後に愛する者と一緒にいられて、良かった……」」」


 三人が折り重なるように俺の上に倒れ込む。

 ナインテイルの爆炎を受けた時点で致命傷を負っていたのだろうか。三人とも虫の息だった。


「ウコン、サコン、止まって!」


 狐パーカーを着た少女がナインテイル二匹を宥めて、その鼻っ面にゲンコツを食らわせた。あのナインテイルがよろめいていた。


 駆け寄ってきてたリーダーらしき冒険者が燃え滓のようになっている俺と傷だらけの少女三人組を見て顔を引き攣らせていた。


「ウコン! サコン! 今すぐ回復魔法を彼らに!!」

「なぜ我らが──」

「うるさい、黙って従え!!」


 ナインテイルたちがリーダーらしき男に一喝されて慌てて回復の呪文を詠唱し始める。

 ご主人ズは助かるだろうが、俺は──。


 遠くなる意識を手放した。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ──両手と上半身に重さを感じ、意識を取り戻す。

 目を開けるといつもの宿屋の部屋のベッドの上だ。

 夢でも見ていたのかと思うと、まだ少し火傷と裂傷の跡が残るご主人ズに抱き付かれたままベッドで寝ていたようだ。

 燃え尽きたはずの部分の体の感覚がある。

 周囲に目を向けると、先ほどナインテイルたちを一喝していた男と狐パーカーを着た少女がベッドのそばの椅子に腰掛けてこちらを見つめていた。


「あ、気が付きましたか? この度はうちの馬鹿狐どもが申し訳ありません……」

「飼い主として、本当にごめんなさい」


 二人が深々と頭を下げた。


「魔獣が現れたと飛び出して行ったウコンとサコンを止められず、このような事態になってしまったわけでして……本当に申し訳ございません」

「私たちはあなたたちと敵対する意思はないよ」

「ウコン、サコンも謝りなさい」


 言われた二匹ナインテイルが枕元に来て、深々と頭を下げた。


『申し訳ない。魔獣が現れたものと思って、主人たちを守るために攻撃してしまった』

『痛かったかもだけど回復してあげたから許してね』


 言いながらまた回復魔法を掛けてくれた。

 ご主人ズの怪我の跡が前より見つけにくくなった気がする。


「こちらこそ、うちのご主人ズが申し訳ない。後でよく言い聞かせておく」

「あ、それは大丈夫です。もうケルベロスさんとお話をして、こちらが全面的に協力することを前提に許して貰えました。先に攻撃したのはこちらですし」

「ならいいが」


 ご主人ズの寝顔を見ると、完全に安心し切った顔で眠っていた。

 ここ数日の焦燥感が全くない。いつものだらけたご主人ズに戻ってくれたようで良かった。


「回復の後遺症で体が怠いと思いますので、また明日話をしましょう」

「またね」


 二人と二匹は部屋を出て行き、またいつも通り部屋には俺とご主人ズだけになった。

 どううまく話が纏まったのかは知らないが、とりあえず今日はご主人ズに甘えさせてやろうと思う。

 睡魔に襲われるまま、意識を手放した。

※更新頻度について

現在、本職の方が忙しいため、執筆に割ける時間が少ない為、更新が遅延しています。

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