表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
35/48

第28話 面会謝絶

 私は、アーランドに抱えられてウコンの背に乗ってギルマスルームの窓から外へ飛び出して行ったミリアの身を案じていた。

 この数日間であの小柄な体に、人智を超えた変化を何度も受けたのだから、どこか調子が悪くなってしまっても仕方がないのではないかと思う。


『アレは辛いぞ。人の身で我らのアレを体験すると、下手をすれば廃人になりかねん』


 念話が聞こえてきたので、周りをキョロキョロと見回すと、サコンが真っ直ぐに私を見つめていた。

 他のメンバーが、リーダーが帰っちゃ話にならないだのなんだの話していて反応がない中での念話なので、対象が私だけに限定されている……?


 念話の返し方がわからないので、とりあえずサコンに向けて意識を集中して、言葉を紡いでみる。


『アレとはなんですの?』

『アレとはアレだ。人間には無かったか?』


 サコンはなんだか喉の奥に魚の骨がつっかえたような表情で念話を続けた。


『このパーティーでミリア殿と同じ人間の雌はミルフェ殿だけだから声をかけてみたものの、ミルフェ殿にもわからぬか。生物として生きる上での抗えぬ本能──我らは定期的にアレが来るのだ。我の場合は大体百年周期ぐらいだな』


 人間にはない定期的に来るアレ……? でもサコンは雄だし……?

 私は眉間に皺を寄せて考え込むが、答えが出ない。


「──ミルフェ、どうした?」

「なんでもないですの」


 考え込んでいる私に気が付いたガストンが声を掛けてくれたが、なんでもないと返す。

 答えのないクイズをしているような感覚でムズムズする。


『肉体的相手への本能的好意の究極版だ』

『は!? なんですのそれ!?』

『言葉を丸めたつもりだが、しょうがない。ストレートに言えば発情期だ。裏山にあった族長の魔力の残滓を掻き集めた弊害だ』


「はつじょ──!?」


 思わず声に出してしまって慌て口を両手で塞ぐ。


『なんでそんなことになるんですの!?』

『族長殿自身の魔力を回復させた時に、族長殿自身の体の一部も修復されたのだ。その影響で族長殿の体の活動が活発化している。二、三日もすれば落ち着くとは思うが、その間ずっとミリア殿は族長殿に引き摺られる形で人外の欲求に晒されることになる。前よりもさらに魂の繋がりが深くなっているようだからな。我らは交尾する際に魔力のやり取りも行うことで、肉体的・精神的・魔力的に満たされることですぐに発情期は終わるが、今の族長殿には全てにおいて解消する方法がない。族長殿が耐え忍んで克服するのを待つしかない』

『そんな……』

『ミリア殿の精神が持てばいいが……。手っ取り早くミリア殿の精神を安定させるには最も好意を寄せている人間の雄と三日三晩でも交尾すれば良いと思うのだが』

『ちょ、ちょっとあなたねぇ!?』

『人間と獣は違う。故にミリア殿は苦しむことになる』


 反論する言葉が出てこなかった。

 私が見ていても、やはりミリアはアーランドに好意を寄せているとは思う。

 けれど、初めてがこんな形でなんて、きっと本人は望まないだろう。

 ミリアの身を案じて彼女たちが出ていった窓を眺めた。



 リーダー不在ということでお開きになった後、私達はフォクシリウス家に戻った。

 心配になったのでミリアの部屋の前へ行くと、ドアに面会謝絶という手書きの板がぶら下げられていた。


 部屋の中から、時折ミリアのくぐもった声とアーランドの慰めるような声が聞こえる。

 ドアをノックして声を掛けようとして、思い留まった。


 きっとウコンも付いていることだろうし、どうにかしてくれることだろう。そう思って今は距離を置くことしかできなかった。



 ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆



 それから二日間、心を紛らわすためにガストンをデートに誘って街に繰り出してみたりしたけれど、上の空だなと笑われた。

 せっかくのデートを台無しにしてごめんなさいと謝ると、「こういう時でも他人の心配ができる、お前のそういう優しいところが好きだ」と自然に言われた。その言葉を音として聞いて、頭の中で反芻してようやく意味を理解して、顔を真っ赤にしてガストンの胸に顔を埋めて恥ずかしさを誤魔化した。


 ガストンから話は聞いた。クレセントワイルドウルフとの死闘の時まさに自身が消える間際に、街に戻ったら私がガストンに告白しようとしていることを先に教えていたらしい。

 無事に街に戻ってミリアが意識不明の間に、私は逆にガストンに呼び出され、好きだと告白された。

 

 ミリアに教えられなければ自分の心を見つめ直して覚悟を決める時間もなくて、もしかしたら私からの告白を断っていたかもしれないと彼は笑っていた。ミリアによって与えられた時間の猶予で覚悟を決めることができたのだという。


 私達に道を示してくれたミリアだからこそ、私は彼女を助けたかった。

 恩に報いるとかそういうのではなく、単純に友人として親友として、彼女の力になりたかったが、自分に何もできないことが申し訳なかった。


「今はただ、無事に治ることを祈るしかない。大丈夫だ」


 何も根拠なんてない言葉だけど、安心する。私はそんなガストンの笑顔と、大きな背中が大好きだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ