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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
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 閑話 ウコン と サコン

 消息の途絶えた族長を探して、我らは長い旅をしてきた。

 もう数百年にも及ぶ長い旅だ。


 人族が大地に蔓延り、長い時が経った。

 昔は我ら魔物の支配地域であった領域の奥深くまで人族が入り込むようになった。


 ウコンとならば、我はどこまでも歩んで行ける。

 まだ数千年はあるであろう寿命の中で、子供は二匹も作れば一族が減ることはないだろう。焦ることはない。

 巣で寄り添うウコンの腹を枕にこの旅の記憶を思い返していた。


『サコン、眠れない?』

『大丈夫だ。昔を思い返していただけだ』


 寝ぼけ眼で顔をこちらに向けるウコンに、優しく返す。


 なぜ族長は我らが聖地を捨て、旅立ってしまったのか。そしてどこへ行ってしまったのか。

 数年前に辿り着いたこの地で、族長の魔力の残滓が流れてくるのを感じて、森の奥深くでウコンとの愛の巣を作り、しばらく休息することにした。

 ここらで子を成しても良いのではないだろうか。近くにはウィップテイルタイガーの群れとクレセントワイルドウルフ率いる群れがいるようだから、喰うことに困ることもないだろう。

 だが、先日ウコンに子を成そうと挑み掛かったら、『ここは人族の領域が近いから、(めっ)っ!』と言いながら雷槍(サンダーランス)氷槍(アイスランス)炎獄(ヘルフレイム)竜巻(トーネード)でぶっ叩かれたが、本当に我が嫁ながら可愛いものだ。怒った顔も耳の形と尻尾の膨らみ加減も最高に惹かれる。


 我らがこの地に巣を作った頃、近付いて来る人族の群れの矮小な魔力を感じた。

 我の狩りで追い立てられたウィップテイルタイガーの群れがその人族に近付いて行ったが、あの程度の魔物を倒せぬようではこの森では暮らしていけない。弱肉強食だ。弱者は強者の血肉となるのが自然の摂理だ。


 族長の魔力の残滓を近くに感じるが、弱すぎて方向を定めることができなかった。

 一瞬強く感じた時があったが、人族の街の方角からだ。まさか街の中にいるわけがない。


 人族なんて矮小な存在に負けるわけがない。我らナインテールは神獣フェンリルに次ぐ強さを持つと自負している。フェンリルが孤高の存在であるのに対し、我々は必ず雌雄二体のペアで動く。だから単純な戦闘力でいえば肩を並べることができるはずだ。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そんなある日のことだった。ウコンと仲睦まじくじゃれ合っていると、近くで族長の魔力が膨れ上がるのを感じた。と言っても全盛期の三分の一程もない魔力だったが。

 それでも懐かしい感覚にウコンと顔を見合わせて四足で立ち上がる。

 長いこと旅をし過ぎて族長探しなんてもう半分どうでも良くなってきていたところへ飛び込んできた朗報だ。逃す手はない。


 魔力を感じた方角は人族の小さな村があったと思う。

 族長はそんなところで何をしているのだ?

 人族など喰らっても骨と皮程度しかなく、含有魔力量もそれほど高くない。

 だから我々は人族を喰うことはしない。鳥や爬虫類でもないのだ、羽虫など喰わんだろう?


 族長の魔力の波動はすぐに途絶えたが、ウコンと話し合った結果行ってみることになった。


 ウコンと走りながら、そのしなやかな肉体に見とれる。

 躍動する筋肉に流れる毛並み、揺れるたわわな九尾。

 地を蹴る度に引き締まった尻が動く。

 我が嫁ながら、本当に美しい。


 久々の発情期が来てしまったのだろうか。

 抑えられなくなったら、ウコンにまた挑み掛かってみよう。


 そんなことを考えながら並んで走り、人族の村の近くに到達する。


 村を囲む防護壁の内側で黒煙が上がっている。

 咽返るような人族の血の匂いも漂ってくる。その中に魔物の血の匂いも混じっている。


 なぜそんな場所から族長の魔力の残滓を感じるのだ?

 もう薄れつつあるが、確かに族長の魔力が発現した跡を感じる。


 飛び越えることもできるが、情報を集めるために防護壁を一周することにした。

 数ケ所に魔物の襲撃の痕跡がある。

 さらに回り込むと一部が破壊されていて魔物が中へ侵入した跡がある。だがふと門を見ると明らかに人の手で最近開門された形跡がある。


 開いている門から中へ入る。門に頭をぶつけてウコンに笑われてしまった。


 村の中は人族の血の匂いが充満していた。

 これはワイルドウルフか? 獣の匂いを感じる。

 ワイルドウルフの群れに襲われて壊滅した人族の村か。なぜそんな場所に族長の魔力の痕跡がある?

 ウコンと話し合ったが理解できなかった。


 村の中心へ向かって歩くと、首と四肢がなく毛皮を剥かれたクレセントワイルドウルフの亡骸が横たわっていた。

 四肢の切断面を見ると、黒く焼け焦げていて族長の魔力を強く感じた。

 我はウコンと見つめ合い、数百年ぶりの確かな手掛かりに歓喜した。


 だが同時に疑問が巻き起こる。

 狩りをしたとするなら肉を喰らうはずだ。それがここに放置されている。

 それに亡骸からは複数の人族の匂いがする。毛皮を剝いだのは間違いなく人族であろう。


 まさか人族と共に行動しているのか?

 あの排他主義者だった族長がそんなことをするわけがない。


 ウコンと話し合ってみても彼女も同じ考えのようだ。


 人族の匂いを辿ると、無傷の民家で過ごした後に村の外へ出て森の方角へ向かったようだ。


 この人族と接触できれば族長がどこにいるのかわかるだろう。

 我は匂いを辿りながらウコンと共に駆け出し──族長の魔力が立ち上るのを感じた。


 立ち止まった我らは見つめ合い、一度だけ頷いて全力で駆け出した。

※魔物の名前を間違っていたので修正

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