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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
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第19話 帰還作戦開始

 日の出とともにあたしたちは外に出て、前日に用意していた荷車にクレセントワイルドウルフの首と毛皮、あと少々の食料を積み込み、全員で押しながら足早に村の門へと向かう。

 入ってきた時に通った破壊された外壁部分では荷車の通過が難しかったのでこちらを選択した。


 ガストンが(かんぬき)を外してその辺に放り投げて開門する。

 みんなで荷車を押して街道へと滑り出した。


 街道は静まり返っていた。

 あたしたちの押す荷車の車輪が出す音と足音以外何も聞こえてこない。

 前日同様、動物の鳴き声もなにも聞こえてこなかった。


 街道を進み始めてしばらくして、アーランドがあたしの息が上がっていることに気が付いた。

 今日の朝から体が重い感覚があったのだが、心配させないためにあえて言わなかったのだが、ここまで影響が出るとは思っていなかった。


 あたしはアーランドに脇に手を差し込まれて持ち上げられ、荷台に乗せられた。


「ちょっ! あたしも押す!」

「体がまだ治り切っていないようですから、今日はその上に乗っていてください。魔法は使えたりします?」


 アーランドに言われて、右手の手の平に力を込めてみると、ファイヤーボールが形成できるのが確認できた。


「アーランド、魔法なら使えそう!」

「じゃあ、ミリアはそこで固定砲台役ですね」

「むぅ……わかった!」


 作戦変更、あたしは荷車の上で固定砲台になることになった。


 街道をひた走るが、魔物との遭遇はまだない。不気味なほどに静か過ぎる。

 村での戦闘の件もあり、あたしたちは過剰にまで魔物との遭遇に怯えていた。

 

 ウェイズが消耗している今、あたしは近接戦闘ができないと思ったほうが良い。

 魔法だって、何発撃てるのかは未知数だ。


 思いながら荷車の上に陣取って魔力草を噛み続ける。とりあえず、持っている魔力草全部を食べ切る勢いで噛み続ける。即効性がない分、先手を打っておくことは重要だ。


 途中でミルフェの息も上がってきたので、彼女もまたガストンに荷車に乗せられた。

 荷物側になってしまうのが申し訳なく感じたのか、彼女は疲労軽減の魔法を唱え、全員に掛けた。そういう魔法もあるのか、とあたしは感心した。


 走る必要はないのではないかとも思われたが、今日中に森を抜けておきたいというのが全員の総意だった。

 この辺りは何かがおかしいと皆が肌で感じていた。

 思いたくはないがクレセントワイルドウルフ級の魔物がまた出た場合、今度こそ本当に全滅の可能性がある。


 荷車で揺られるあたしとミルフェ。

 ふとミルフェが近付いてきて耳打ちした。


「……ミリア、(わたくし)は街に帰ったらガストンに好きだと告白しようと思いますの……」


 ガストンは村を出てからずっと先頭で荷車を引いている。

 あたしはその後姿をちらりと見て、今そういう事言うのやめてくれない? と普通に思った。絶対良くないことが起こるから!


「へ、へー……応援してるよ」


 冷汗を搔きながら頭をポリポリと掻く。


「……ところで、ミリアはリーダーのこと……アーランドのことどう思ってますの……?」

「なっ……⁉」


 思わず声を上げて顔を真っ赤にしてアーランドのほうを見てしまう。その声に荷車を押すアーランドは首を傾げてこちらを見た。

 まだ出会って数日でよく知らない仲だ。まだそんな感情を抱くわけがない! そうに決まっている。


「……私が見ている限り、相思相愛ですわ。応援していますわ……」

「……まだ出会ってそんな時間も経ってないし、そんな風に思うわけないじゃん……!」


 顔を真っ赤にして俯くと、あらあらまあまあと言いながらミルフェがニヤ付いた表情をこちらに向けた。


「何にしたって、とにかく街にたどり着かないと話にならない──けどね?」


 あたしは鞭のような何かを叩きつける音がした気がしてふと顔を上げた。


「どうしましたの?」

「いや、なんでもない」


 ──何の音だろう?

 あたしは疑問に思ったが気にも留めず、そのまま荷車に揺られ続けた。


 ガストンが先頭で荷車を引き、後ろからアーランドとジョイルが荷車を押す。

 あたしは荷車の上で周囲を見回しながら魔力草を噛み続け、いつでも魔法をぶっ放せるように準備する。その隣でミルフェは適当なタイミングで疲労軽減魔法を皆に掛け続け、彼女もまたあたしが渡した魔力草を噛み続ける。


 このまま順調にいけば何事もなく街へ帰れる。

 あたしたちは行きとは違って不気味に感じる森へと突入するのであった──。


 先程の音に胸騒ぎを覚えつつ、あたしは魔力草を噛み締める。

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