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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
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 追憶 ウェイズリシアの記憶

 世界のすべてを憎しみ、恨み、嘆き、悲しみ、負の感情が解け合った泥の塊だった我に、静かにだが優しく寄り添う小さな存在に気が付いたのはいつのことだっただろうか。

 寄生されて何度も限界まで魔力を吸い上げられ、生と死の境をさまよい続けてなお、自分よりも我のことを心配するように寄り添っていてくれた。


 永遠に続くと思われた孤独が、突如として終わりを迎えた時、太陽のような暖かな光が差し込み、永久凍土のように凍り固まっていた心を融かしてくれた。


 我が取り憑いた小娘は名を「ミリアリア・フォクシリウス」と言った。

 鏡に映る姿は体のあちらこちらを闇に蝕まれ、もう人であるのかすら怪しいほどに変質していた。

 長期間呪物の塊である我の毛皮に触れて蝕まれたのだ。正直言って生きているほうがおかしいような状況であった。

 魔力が必要なら自分の物を吸えるだけ吸えばいい、そう言って死期を悟っていた彼女は自身の体を差し出した。


 せっかく出会えた温もりのその命の灯が消えようとしている状態を見過ごすことができなかった。

 彼女の体に取り憑いた闇を祓うため、我はミリアリアと守護契約を結んだ。

 我がミリアに取り憑いて守護する限り、ミリアの体を蝕む闇は今以上に浸蝕することはない。

 だが逆にそれは我が離れれば再び闇に浸蝕されることを意味する。


 闇に喰われて欠損した部分を我の魔力で織り上げた疑似肉体で補完する。

 どす黒く変色した血を我の魔力で練り上げた紅き魔力で置換する。

 何をするにも圧倒的に魔力が足りなかった。

 ミリアから供給される魔力では肉体の修復に十年単位で時間が掛かってしまうことだろう。もしかしたら、百年掛かろうが終わらないかも知れない。

 闇が転移する度、新しく疑似肉体で補完して命を繋いできた。たとえその代償として外見が変わらなかろうが、生きてさえいれば後でどうにでもなる。死んでしまえばそこで終わりだ。

 ミリアに悟られぬよう、外見を最優先して修復し、続いて中身を修復という作業を延々と繰り返してきた。眠る必要のない我には丁度いい暇つぶしでもあった。


 家の裏山にかつての我の魔力によって芽が出た魔力草があることがわかり、このままいけば肉体の修復はあと一年もあれば終われそうな状態ではあった。


 なのに、ミリアの糞親父は彼女を家から追い出しやがった。

 当の本人も冒険者になるとか言う。裏山での戦闘訓練と魔術の練習は冒険者になるためのものではなかったのだが、本人が希望するのであれば仕方がない。我は全力でサポートにまわるまでだ。訓練と練習は肉体の機能と魔力回路に不具合がないかの確認をしていただけで、決して戦いに赴かせるためのものではなかったつもりだ。



 ──ミリアに仲間ができた。

 良かった。これで我の身に何かあったとしても任せられる。

 アーランドとか言う人間の雄が気に入ったのか?

 今修復を最も後回しにしている生命としての原初の機能である『命を紡ぐ』という部分についても、近いうちに手を入れていかなければならないかも知れない。

 まだ幼子だと思っていたが、十五歳ともなれば番う相手の一人や二人いてもおかしくはないだろう。人間の生態については詳しくないが。


 ミリアには筋肉痛として誤魔化したが、あれは違う。単純に肉体が損傷しているのだ。本当に限界に近付いているのだ。

 強化魔法の代償は予想以上に激しかった。今まで以上に修復に手を掛ける必要がある。

 意識を深層に潜らせる必要があるので、ミリアとの意思疎通ができなくなる可能性があるが、彼女が死ぬよりは良いだろう。


 修復が上手く進まない。焦れば焦るほど進まない。今まではミリアと意思疎通をするために意識の一部を表層に置いていたが、今度は駄目そうなので全力を投入することとする。

 きっと番い相手のアーランドが彼女を守ってくれることだろう。


 修復中だというのにミリアが戦闘状態に移行したのを感じた。

 体の損傷が急速に広がっていく。

 慌てて表層に戻ろうとして強い衝撃を感じて意識が混乱する──。

※言い回し一部修正

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