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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
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第13話 狐娘は筋肉痛に喘ぐ。

「──いででででで!いでーーーーーー!?」


 顔面から地面にぶっ倒れたあたしは体を苛む激痛に、苦悶の表情で乙女らしからぬ声を上げた。


「ミ、ミリア‼ どこか怪我をして──⁉」


 慌てて駆け寄ってきたアーランドに抱き起こされて、更なる激痛にあたしは白目を剥く。

 とにかく四肢が痛い。腹筋も背筋も痛い。動かそうとする度にピキッと痛みが走る。


『ウェイズ!? なにこれ!?』

『あー……いや、その、な……』


 ウェイズに尋ねると、なんだか歯切れが悪い返事が返ってくる。


『所謂、筋肉痛だ。強化魔法を最高状態で三十分以上は肉体のほうが耐えられなかったらしい』

『ギルマスと戦った時も最高状態で強化魔法使ったよねぇ?!』

『あの時は五分も戦っていないだろうに』

『あっ──』


 アーランドに揺さぶられて、更なる激痛に意識が飛びそうになる。

 乙女がしてはいけない顔をして白目になって泡を吹いているものだから、必死になって揺さぶっている。


「ミリア! ミリア! しっかりしてください!!」


 涙目のアーランドがさらに激しく揺さぶってくる。


「ミリア、ミリア! 死なないで!」


 アーランドの動揺っぷりがすごい。ちょっと乱暴にあたしを仰向けにして地面に寝かせ、胸のあたりに耳を当てる。その瞬間青ざめた表情になり、あたしの腕を引っ掴むと脈を計るような素振りをする。そしてさらに脈を認識できずに混乱する。顔を見れば泡を吹いたまま白目を剥いたままのあたしがいる。


 何をする気──?

 あたしが尋ねるよりも早く、アーランドはあたしの心臓を目掛けて胸の辺りに手を置き、ドンドンドンと自身の体重を掛ける。所謂心臓マッサージだ。


「ぐえぐえぐえ!」


 思わず声が漏れるが、アーランドは止める気はないらしく、心臓マッサージ三セットが実行され、その度にあたしは蛙が潰されたような悲鳴を上げた。


 そして、心臓マッサージの後にすることと言えば──。


 あたしが拒否する間もなく、アーランドの顔が急速に迫ってきて、唇同士が強く触れ合って息が吹き込まれる。


「──ゴホゴホ、ガハゴホ⁉」


 自分で吹いていた泡その他もろもろを気道に息と一緒に吹き込まれて咽る。


「ミ、ミリアだいじょう──」


 逆にこのままでは殺されてしまうと感じたあたしは無意識に強化魔法を発動してアーランドを平手打ちで吹っ飛ばした。

 奇麗に決まった平手打ちでアーランドは数メートル宙を舞い、頭から地面に着地する。


「こ、殺す気かー!!!!!!」


 あたしの痛烈な叫びが森に木霊した。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 落ち着きを取り戻して涙目のまま頬を赤くしたままのアーランドをジト目で睨みながら、あたしはミルフェから受け取ったタオルで顔を拭いていた。

 アーランドは切り株に腰かけたあたしの側で誠心誠意謝罪の土下座をしていた。


「ミリア、ほら、アーランドだって悪気があってしたわけじゃないし、もう許してあげて?」

「そうだぞ、リーダーはミリアのことを思ってだな」

「ファーストキスか⁉ ファーストキスか⁉」


 宥めるミルフェとガストンを他所に煽るジョイルはまた二人に拳骨をくらった。


「……まあ、あたしも……その……自分の力を最高状態で使い続けると……こんなになるって知らなかったし……」


 事実、あたしは強化魔法を使い続けるとこんなになってしまうなんて知らなかった──ウェイズは知っていたので、戦闘が長引くとわかっていたから発動前に一応尋ねたと言う。あのさぁ! と文句を念話でぶち込んでやるとウェイズは小さくなっていた気がした。

 とにかく危機は去ったわけだし、ウェイズの件は水に流すとしよう。

 ウェイズの毛皮は厚くて心音も聞こえないし脈拍も計れないことがわかった!


 だが、もう一つ。こちらは駄目だ。絶対に許されない。


 第一に心臓マッサージをするためとはいえ、(無い胸に狐パーカー越しに)触ったこと。

 第二に脈の確認とはいえ(無い胸に狐パーカー越しに)顔を(うず)めたこと。

 第三が一番許せない。このミリア様のファーストキスを奪ったこと。


 あたしは筋肉痛で軋んでピキピキいってる体に鞭打って立ち上がり、アーランドに対してズビシッと指差しポーズを決め、口を開く。


()()()()()()()()()()()()()()()()──!?!?」


 あたしが大声で言い放つと、場の空気がピシッと凍り付いた気がした。

 ──あたし何も間違ったこと言ってないよね? 男と女、キスをしたら子供ができるってシルビアが言ってたもん。


 訝し気にあたしを見つめる目玉が合計十個。ガストン、ミルフェ、ジョイル、体を起こしたアーランド、そしてウェイズ。

 みんながみんな、目が点になっている。


「今のご時世に無知娘(むちっこ)か?」

無知娘(むちっこ)ね」

無知娘(むちっこ)だな」

無知娘(むちっこ)だな』

「こ、子供ができてしまったら、せ、責任は取ります、ええ、絶対に!」


 今度は訝し気にアーランドを見つめる目玉が合計八個。ガストン、ミルフェ、ジョイル、ウェイズ。


 ガストンとミルフェはため息しながら頭を抱え、ジョイルは腹を抑えて馬鹿笑いしながら転げ回っている。

 とりあえずガストンとミルフェはジョイルに拳骨をした。


「こっちは無知野郎か……」

「こっちは無知野郎ね……」


 呆れるガストンとミルフェ。ジョイルは何がおかしいのか、まだ腹がよじれていそうなほど笑っている。


 あたしが間違っているというのだろうか。シルビアがあたしに嘘を教えるはずがない。


「じゃあ、子供はどこから来るの?!」


 あたしの真っ直ぐな問いに、ガストンとミルフェが困惑して見つめ合った後、沈黙の時間が続き、ミルフェがあたしの側に来て耳打ちした。ガストンも何やらアーランドに耳打ちしているようだった。


(ミリア、街に帰ったら教えてさしあげますわ。本屋さんに行きましょう。それまでこの話題は禁止ですわ)


 ミルフェの言葉にあたしは訝し気な顔をする。


「あ、そうですわミリア。倒したワイルドウルフを亜空間収納して頂けます? 素材としては価値が下がりますけれども、きっとお肉としてなら引き取って貰えますわ」


 自分で作り出した惨状を遠い目で見た後、あたしは筋肉痛の体に鞭打って倒したワイルドウルフを回収して亜空間収納していった。今更ながら、頭をつぶした個体とかを見ると自分がしたことながら気持ち悪くなって吐いた。

 数えていたミルフェによると。合計二百五十匹にもなる大きな群れだったようだ。

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