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こんけるふぇん(仮)  作者: 黄昏狐
第1章 冒険者パーティー『狐火』
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 閑話 ギルマスの考察その2

 寝坊して慌てて出て行ったミリアを見送ってから、俺はため息をつく。

 銅級スタートでも大丈夫だと太鼓判を押せたのは本当に戦闘力だけだったらしい。


 まあ、戦闘力以外は冒険者として活動を続ければ自然と身についてくるものだ。


 それにアーランドに付いて行ってくれるのなら、鬼に金棒だ。

 アーランドならうまく使ってくれるだろう。あいつは戦闘センスはそこそこだが、指揮能力には一目置くところがある。


 その才能が開花したのが、奇しくも妹分だったアニーが魔物に致命傷を負わされた後だったのだから、あいつは悔やんでも悔やみきれないだろう。

 俺はあいつが冒険者をやめると思っていた。けれどアニーの死を胸に深く刻んでそれを乗り越えた。

 今では俺が将来を期待する冒険者の一人でもある。


 血まみれのアニーを抱きかかえてロビーに駆け込んできた時のことは今でも鮮明に覚えている。

 ウィップテールタイガーという魔物の群れに遭遇し、パーティーメンバー全員傷だらけになりながらも帰還したが特に重傷を負ったアニーの治療が一足遅く、出血多量で息を引き取った。

 ウィップテールタイガーは鞭のようにしなやかにしなる四メートル近い細長い尻尾が特徴の魔物で、鞭のように繰り出してくる音速を超えるとも言われる斬撃が厄介で、生半可な防具では容易く切り裂かれて皮膚までダメージを負う。連撃を同じ場所にくらえば肉を切り裂かれてしまうことさえある。その足の速さもあってこちらの攻撃もなかなか当たらない。

 駆け出し冒険者だったアーランドのパーティーは不運にも森の浅部で遭遇してしまい、密集した木々を盾にしてなんとか逃げ延び、たまたま近くを移動していた隊商の馬車に拾われて街まで戻ってきた。


 街の共同墓地にアニーは眠っている。俺はギルドマスターとして、幾多の冒険者の死を見て弔ってきた。

 若い冒険者の死傷はアニーが初めてだった。薬草を採集しに行った安全なはずの森で、あいつらは魔物に出会い、死に物狂いで逃げ、アニーは死んだ。


 孤児というのはこの街では嫌われ者だ。貧民街のほうからメインストリートのほうにやってきては物乞いをしたり残飯を漁ったりする。

 そんな奴らが冒険者になりたいというのは自然なことかも知れない。この街には冒険者が多いし、それで生計を立てているものが実際に多い。それを見た孤児たちが憧れるのも無理はない。

 一応ギルド規約として十歳からしか冒険者登録はできない。そしてその時の試験は各ギルドマスターの裁量に任せられている。


 他の街では孤児減らしの一環で碌なテストもせず冒険者として魔境に孤児たちを送り出しているところもあると聞いたことがある。

 俺のギルドではそんなことはしないし、させない。たとえ孤児だとしても生きてさえいれば必ずいつか良いことが巡ってくると俺は信じて、若い冒険者の戦闘技能テストをして冒険に出たら死んでしまいそうなやつを街に残らせている。その代わりに裏ではギルドの手伝いをさせたり冒険者の手伝いをさせたり、要領のいい奴はギルド職員見習いとして勉強させたりしながら少ないながら生きてはいける程度の給料を出してやったりしている。 

 そのおかげか他の街に比べて何もしてない孤児は少ない。


 実際、レミットもそうやってギルド職員になったうちの一人で、つい3年前に正式なギルド職員になったばかりだ。あいつはゴミとして捨てられていた本を拾って独学で字を覚えた変わり者だ。

 まだ経験が浅いせいか今回のミリアの時のような事件を起こすことがある。


 アーランドだって木の棒片手に俺に何度も戦闘技能テストを申し込んできた、その根性だけは据わっていた子供だった。

 普通は一、二度不適格だと言われると諦めるものだが、あいつは三十回も来やがった。


 俺はあいつの根気に負けて一年間稽古をつけてやり、とりあえず自身の身を守れるだけの戦闘力を手にしたところで俺は合格を出した。

 合格を出した翌日にアニーを連れてきてテストを受けさせ、その翌日にガストン、さらに翌日にミルフェを連れてきてテストを受けさせ、しばらく間を開けてジョイルを連れてきたんだったな。

 あいつは俺にコテンパンにのされた後に孤児院に帰ってからも仲間と稽古をしていたようで、その稽古の相手メンバー全員を連れてきたのだった。


 全員が孤児院出身のパーティーを揶揄する輩も少なからずいて、そのうち『貧民街の英雄』なんてふざけた二つ名まで付けられたものだ。


 だが、実際にアーランドに憧れた孤児との戦闘技能テスト回数が増えたのだから、あながち間違った二つ名でもない。巻き込まれているこちらとしては迷惑だが。


 片や元貴族令嬢、片や貧民街の孤児──。

 生まれは違えど、うまくやってくれるといいのだが。


「あっと、そうだそうだ。折れた剣を修理できるか聞いてこなくてはな。レミー! ちょっと用事で出かけてくるぞ!」


 俺はデカい声でレミに要件を伝えると、物置から折れた愛剣を取り出し、鍛冶屋のクソジジイの所へ向かうのだった。

※誤字脱字訂正(*'ω'*)

※誤字脱字修正・表現修正

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