ガラスの靴をカジノでかける
私はフェアリーゴットマザーの末娘。私たちフェアリーの役目は、可哀想な娘に魔法をかけてあげて幸せに導いてあげること。
お母様がシンデレラにしたように。私も誰かを幸せにしてあげたい。
そこで私が選んだのは、お父様を早くに亡くし、朝から晩まで継母と義姉の元で働いている可哀想な女の子。
今日はお城の舞踏会。継母と義姉は女の子に雑務を押し付けてとっととお城に行ってしまった。
可哀想な女の子は、「お城にいきたかった」と泣いているわ。だから私は彼女の目の前に現れていってあげたの。
泣くのはおよし。私が貴方を舞踏会に連れて行ってあげる。魔法でホロホロチンカラホイ!
ほら、素敵なドレスと馬車ができた。
初めは戸惑っていた女の子。最後は笑顔で馬車に飛び乗っていったわ。
ああ、よかったこれでこの子は舞踏会で王子と出会って幸せに……。
「国士無双!!」
「ロイヤルストレートフラッシュ!!」
「ブラックジャックよ……!!!」
え、え……?
お城についた女の子は、舞踏会の会場には立ち寄らず、そのまま遊技場に入られました。
女の子の前にどんどんとチップが積み上がっていきます。
「ふふ、城のカジノなら不正もないし。貴族のお遊びなんてたかが知れてるから稼げると思ったのよ。これで親父の借金も倍にして義母様に渡せるわ。なーにが真面目に働けよ。私の才能をもってすればあっという間に億万長者よ」
え、えぇ……?
可哀想な女の子なんていなかった。
そこにいたのは勝負師でした。
「あ、妖精さん。ありがとねー。会場まで連れてきてくれて。義母様、私がここに入らないように留守番とかいったのよ?ひどいわよね、ドレスも隠されたのよ。ドレスコードもあったから作業着じゃ入れないし困ってたのよ。おかげで数枚のコインがこんなに化けちゃった」
「貴方最初のチップをどうやって用意したんですか」
「そりゃ、いいもん貰ったから換金した」
女の子は笑顔でドレスの裾をまくしあげます。そこには彼女の素足がおりました。
「ガラスの靴を売ったのですか!!あ、あれは……とても大切な……ええ?!」
もう、私は力が抜けてしまいそのままその場に座り込んでしまいました。
「おいそこのお前!もう一度勝負だ!!」
女の子の目の前に顔を真っ赤にした涙目の男の子がいます。可哀想にこれ絶対イカサマで搾り取られてますよ。うまいんですよ。この子。相当場数を踏んでいるみたいで。
結果的に女の子は持ちきれないチップを換金し、12時前までにはカジノを出て行きました。
身ぐるみ剥がされた男の子が哀れで、私は着ていたローブをそっと、かけて差し上げました。
数日後、城から御触れが出ました。
【このローブの持ち主と王子は結婚する】
ああ、なんということでしょう。フェアリーともあろう私を、結婚相手として王子が探してる?
舞踏会に飽きた世間知らずの王子様は、カジノにお忍びで遊びにきたところ庶民の女にボッコボコに負けた。そこで優しくしてくれた私にクラリときた?そんなのないよ。
え?私に懸賞金がかかってる?やだやだ。ねぇ、女の子が私をまるで金脈を見るかのように目を輝かせて見つめているわ。
やだやだ。こんな物語ってないでしょう……。
おしまい