壊してはいけない建物
この建物は壊してはいけない。
ある建物の前に、そう書かれた立て札があった。
見張りの人間はいないから、意味を聞く事はできない。
立て札が本当がどうか分からないから、本当に壊していいのか分からない。
建物を見た人達は、ためしに蹴ったり拳でなぐったりしてみた。
けれど、建物は頑丈だったため、試みた人達はすぐに諦めていった。
しかし、どんな所にも諦めの悪い人はいる。
やってはいけないと言われた事ほど、やりたくなる。
そんな性格で、諦めの悪い人が。
その人間は、重機を持ってきて建物を壊し始めた。
壁がガラガラと崩れていく。
窓もぱりんばりん割れていく。
そして、あっという間に中が見えるようになってしまった。
建物の中には、一体なにがあるのだろう。
建物を壊した人間は目をこらした。
その建物の中には。
――ちわっす! 無駄な時間つかって、お疲れ様です(笑)。
という手紙が残されているだけだった。
壊した人間は怒り狂った。
その建物は、「人の言う事を聞かない人にイジワルをしたい」と考えた人間が作った建物、いや罠だった。