表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/101

私の秘密、第三弾、聞く?

 翌日は鍛冶の日である。

 今日も今日とて鋼の剣を打ちまくる。

 お土産に『竜の吐息』を渡したら、いたく感激して喜ぶ師匠。


「そういえばクライニア、お前の打った剣が行商人にまとめて買われていったぞ」


「へえ。転売目的ですかね?」


「恐らくはな。安定した高品質な鋼の剣じゃ。どこに持っていっても恥ずかしくない代物じゃからのう」


「えっ、そんなに品質上がってます?」


「おうよ。お前さんの才能には驚かされる。魔法の武器こそまだ打てないが、鍛冶師としては一人前じゃろ」


「そっか。腕は順調に上がっていたんですね」


 師匠に褒められてこそばゆい。

 だが結局、その日も魔法の武器は打てずに終わった。


 翌朝、冒険者ギルドに入ると、様子がおかしい。

 やけに静かなので、気になる。

 依頼ボードを眺めるフリをしながら耳をそばだてると、理由が分かった。


 あの『三魔炎』のパーティが全滅したそうだ。


 第七十五階層の中ボス部屋らしい。

 今日、これから挑むところだ。

 なるほど相手はレッドミノタウロス。

 炎属性に高い耐性を誇るミノタウロスの亜種だ。

 物理的に圧殺され、魔法は効果が薄く、手詰まりになったのだろう。


 ……私たちなら苦戦する要素はないね。


 他人の死は、知った顔が死ぬのは堪えるが、気に病んでも彼らは生き返らない。

 私たちは今日もドレイクの迷宮の攻略に挑むのだった。


 第七十階層からのスタート。

 私は〈ストレージ〉からアダマンタイトの剣を取り出し、光翼で空を飛んでの戦闘を経験しておく。

 光翼は翼に飛翔の魔法がかかった代物で、方向転換が自由どころか、ホバリングも自在な便利スキルだった。


「え、なにその翼は」


「光翼っていうスキルだよ。なかなか便利だね」


「いつどうやって覚えたの?」


「エンペラーのレベル20で習得したんだ」


「もうエンペラーがレベル20になったの?」


 あ、やべ。

 経験値20倍については話していない。

 もう今さら隠すことでもないか。


「私の秘密、第三弾、聞く?」


「……聞きましょう」


「実はね。入手経験値が20倍になるスキルを持ってます」


「え? 20倍? なにそれ……」


「だからあっという間にクラスのレベルが上がるの」


「ちょっと待って。いまクライニアのクラスってどうなってるの?」


「ええとね。下級クラス八種類がレベル20超えてる。上級クラスも六種類がレベル20超えてるね」


 転職を起動して数える。

 つまり合計で十四ものスキルをゲットしているわけだ。


「それはまた……凄いね?」


「でしょ?」


「今まで秘密にするわけも分からないでもないけど……少し寂しいなあ」


「ごめんね。でももう、秘密にする理由もないかな、と思って打ち明けたんだよ」


「そっか……」


「うん」


 実は熟練度20倍とか前世の話とかもあるけど、そこはまだ秘密でいいだろう。


 そんな会話もあったけど。

 遂に第七十五階層に辿り着いた。


「レッドミノタウロスだっけ?」


「そう」


「勝てるよね」


「勝てるね」


 扉を開く。

 地面から湧いて出たレッドミノタウロス。

 ミアラッハが距離を詰めていく。

 私は〈シャドウセイバー〉で援護だ。


 終わってみれば圧勝だった。

 そうか、『三魔炎』はコイツにやられたのか。

 実感が沸かないなあ。

 標準的な銅ランク六人パーティだと、これに負けるのか。


 素材はレッドミノタウロスの持っているミノタウロスアックスだ。

 〈ストレージ〉に仕舞う。

 レッドミノタウロスの死体が消え、宝箱が出現した。

 罠は転移、鍵もかかっている。

 〈ディスペル〉してからスカウト用ツールで解錠した。

 中身は?

 濃い緑色の液体の入った小瓶だ。


「ポーションじゃなさそうだね」


「鑑定してもらわないと分からないわね」


 それじゃ、第八十階層に向けて進もう。


 雑魚は雑魚だ。

 私たちの障害になるような相手は出てこない。


 あっという間に第八十階層にたどり着く。

 扉を開いて、湧いて出たボスとの戦闘が幕を上げた。


 ここの中ボスはレッサーデーモンだ。

 魔法に高い耐性を持っており、様々な魔法を駆使する魔物である。

 攻撃魔法は丁寧に〈カウンターマジック〉で潰していき、ミアラッハの魔槍で屠った。

 やっぱり相手にならないなあ。


 宝箱の出現を待つ。

 罠もないし鍵もかかっていなかったので、普通に開けた。

 中身は?

 鎖鉄球。

 フレイルに分類される武器だ。


 私たち向けじゃなさそうなので、売却かな。


 手を繋いで転移魔法陣に乗る。

 今日の探索は終わりだ。


 * * *


 今回の迷宮品は、甲冑、靴、靴、枕、濃い緑色の液体の入った小瓶、種、懐中時計、馬車のミニチュア、王冠、鎖鉄球だ。

 鑑定師はキッチリ十個あることを確認して、鑑定を始めた。


 まず甲冑。

 これは呪われているらしい。

 ダメージを受けた際に、鎧の防御力を無視して装備者がダメージを受けるという、鎧の意味がない悪質な呪いだ。

 特性は一体化。

 装備すると、自分の皮膚のようにピッタリとフィットするらしい。

 カースドナイト向けの鎧としては優秀なので、確保しておく。

 ミアラッハから「そんなの取っておくの?」と言われたが。


 次に靴がふたつ。

 これは両方とも同じ性能の運動靴だ。

 冒険者だけでなく騎士にも珍重されている丈夫で軽くて動きやすい靴。

 ただしそれぞれデザインが異なる。

 これはミアラッハと自分の分に確保だ。


 次に枕。

 至高の寝具の安眠枕、みっつ目である。

 もうふたり分あって不要なので売却することに。

 金貨5枚になった。


 次に濃い緑色の液体の入った小瓶。

 これはあらゆる植物に作用する肥料で、撒くだけで植物が爆発的に成長するのだとか。

 私たちには不要だけど、造園業者などには売れるらしい。

 売値は金貨1枚だ。


 次は種だ。

 以前にも出た果実のなる木が数日で生えるというシリーズだ。

 今回はイチジクである。

 不要なので売却する。


 次は懐中時計。

 文字盤の後ろにメカニカルな歯車が覗くオシャレな一品。

 空気中のマナを吸い、自動で動き続けるらしい。

 やはりコレクターがいるらしく高値で売れると言われたが、便利そうなので確保しておくことにした。


 次に馬車のミニチュア。

 これはなんとなく想像がついた。

 木馬シリーズの馬車バージョン。

 鑑定師も同じことを言った。

 大正解。

 とはいえ馬車なんて使わないから、売却だね。

 王侯貴族に需要があるらしい人気の迷宮品なのだとか。

 金貨50枚になった。


 次は王冠。

 王冠という時点で、縁がない。

 大きな宝石がゴテゴテついていて、【威厳】なるスキルを付与されるという代物。

 王族に需要があるらしいけど、逆に言えばそこにしか需要がない。

 宝飾品としての価値だけで金貨100枚になったので、売却した。


 最後に鎖鉄球。

 長めの柄に鎖がついて、その先に鉄球がくっついているフレイルだ。

 特性は構造物破壊。

 生物でなく、物品を破壊するのに威力を発揮するらしい。

 不要なので売却。

 金貨3枚になった。


 嬉しいのは靴かなあ。

 軽量の登山靴みたいな感じで、足首までガードしてくれて、歩き続けても疲れない代物だ。


 宿に戻って、ステータスを確認する。

 ランサーは下級クラスなので、一日でレベル27になっていた。

 スキルが増えるね、やったぜ。

 新しいスキルは?

 【武器伸長】だ。

 スキルを発動すると武器が伸びるらしい。

 なんじゃそりゃ。


 さて転職を起動する。


《【転職】

 ランサー(レベル27)

 ノーブル(レベル10)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル29)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル31)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル1)

 ウォーロード(レベル1)

 カースドナイト(レベル1)

 チャンピオン(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 ビショップ(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル1)

 パラディン(レベル1)

 モンク(レベル1)

 ルーンナイト(レベル22)

 ハーミット(レベル2)

 エンペラー(レベル20)》


 特にクラスは増えていない。

 仕方ない、トリックスターを伸ばそう。

 なんでもいいからスキルが増えればそれでいいのだ。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス トリックスター レベル 1

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【仙術】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】

     【量産】【剣技】【剣術】【槍技】【槍術】【二刀流】【多刀流】

     【武器伸長】【素手格闘】【関節技】【気配察知】【罠感知】

     【罠設置】【鎧貫き】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】

     【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【魔法武器化】

     【魔力強化】【怪力】【俊足】【光翼】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 スキルも随分と増えたものだ。


 翌日、いつも通り師匠のもとへ行くと、ローレッタがいた。

 どうやら長剣の修理が終わったので取りに来たらしい。


「おはよう、クライニア」


「おはようございます、ローレッタさん」


 挨拶を交わして、特に会話もなく鍛冶に入る。

 ローレッタは愛用の長剣が戻ってきたことに気を良くして帰っていった。


 今日も鋼の剣を打ちまくる。

 素材の費用が気になるが、前回『竜の吐息』を渡したからいいよね?


 結局、その日も魔法の武器は打てず。

 ええい、いつになったら魔法の武器が打てるんだ!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、傲慢じゃない? 才能ある者が数年掛かるって、言われてる(毎日休みなくだと仮定して、軽く1000日以上は通常掛かる)のに、熟練度20倍でも数日に1度程度でそんな回数鍛冶してないだろうに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ