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「ステータスバグで人生が終わった!!」と思ったら前世の記憶が蘇り日本語で書かれたチートスキルを入手したご令嬢の冒険譚  作者: イ尹口欠
迷宮攻略編

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私も金ランクの実力に興味があります。

 乗合馬車に乗って街に戻り、冒険者ギルドの鑑定師のもとへ。

 自前で物品鑑定を習得できれば、銀貨を節約できるのだけど……稼いでいるからこのくらいのお金は落としていってもいいか。

 

 さて今回も十品、きっちり鑑定してもらおう。

 

 まずアダマンタイトのインゴット。

 これは特に呪いとか魔法とかかかっていないものだった。

 安心して使えるね。

 

 次に妖精の酒。

 三度目だけど、今回は確保だ。

 アダマンタイトのインゴットに錬成したいからね。

 

 次はリュートだ。

 魔曲という音楽を奏でるのに適した魔法の楽器だそうで、バードのクラス垂涎の品らしい。

 バードのクラスはトリックスターの派生クラスだったはず。

 現状は必要ないし、普通のリュートでも魔曲は奏でられる。

 レベル20にしてスキルを増やしたらおさらばするクラスのために、楽器を確保しておくのは無駄に思えたので売却する。

 金貨20枚になった。

 

 次は枕だ。

 至高の寝具シリーズのひとつで、安眠効果のある枕である。

 コレクターがいるらしいが、枕は出現率が高いそうなので確保しておくことにした。

 ミアラッハ用の枕にしとこう。

 ふたつ目が出たら私用にするけど。

 

 次は高級酒。

 以前も売ったし、今回も売る。

 金貨3枚なり。

 

 次は錠剤の入った小瓶だ。

 ひと粒で一晩、徹夜できるという危ない代物だ。

 しかし悲しいかな、王都の文官たちの間で需要があるらしい。

 ブラック……。

 金貨5枚になった。

 

 次は黒い液体の入った小瓶だ。

 これは錬金術の触媒で、重力属性を付与することのできる薬品らしい。

 アダマンタイトのインゴットにちょうどいいので、確保しておく。

 

 次はミスリルのインゴットだ。

 特に呪いや魔法がかかっていないとのこと。

 不要なので売却することにした。

 金貨20枚になった。

 

 次は燭台だ。

 蝋燭に火をつけて手に持っている間、姿が消えるというマジックアイテムらしい。

 特に使い道もないので売却する。

 犯罪に使われることが多いとのことで、国が積極的に回収しているとか。

 金貨10枚なり。

 

 最後は槍だ。

 騎乗しているとき限定で炎属性を纏うことのできる魔法の槍だそうだ。

 ミアラッハには魔槍があるし、私も魔法武器化で槍は作れる。

 不要なので売却することにした。

 金貨5枚になった。

 

 あとついでに以前、確保しておいた帰還特性をもつ槍も売却することにした。

 魔法武器化が使えるものだと判明したので、不要在庫と化したのだ。

 こちらは金貨10枚になった。

 

 素材も売却して、いつも通り儲かった。

 

 宿に帰ろうとしたとき、「景気が良いねえ」と声がかかった。

 最近では遠巻きにされていることの多い私たちふたりに気安く声をかけてくる存在がまだいたとは驚きだ。

 相手は女性冒険者。

 胸元のタグの色は金色だ。

 

「何か御用でしょうか?」

 

「いや。いつも迷宮産の品々を鑑定師にもってきているから、興味があったんだよ。一体、一日にどのくらい潜ればそんなに迷宮品が手に入るのかな、と思ってね」

 

「運、としか言いようがないですね」

 

「そうかい……まあいいよ。コツなんてものがあったら、とっくに誰かが試しているだろうからね」

 

「はあ。用事はそれだけですか?」

 

「いや。ちょっと訓練場で模擬戦をしないかい? ドレイクの迷宮に潜っているのは知っているんだけど、女ふたりだけっていうのは珍しい。同じ女としてどのくらいの実力があるのか気になるのさ」

 

「どうしよっか……」

 

 ミアラッハを見る。

 相棒も困惑しているようだ。

 

「別に勝ったらどうだとか、負けたらどうだとかは言わないつもりだよ。ただ実力に興味があるだけなんだ」

 

「なるほど。私も金ランクの実力に興味があります」

 

「よし、じゃあ訓練場に行こうか」

 

 ミアラッハは戸惑いながらついてきた。

 

「本当にやるの?」

 

「金ランクがどの程度なのか、一度確かめたかったんだよ」

 

 本音だ。

 実際、私たちは日々強くなっているはずだが、金ランクとどの程度の差があるのか知りたい。

 

 なお金ランクへの昇格は依頼実績をあげなければならない。

 依頼そっちのけで迷宮に潜っている私たちでは、昇格の条件を満たせないのだ。

 

「そうだ。名乗ってなかったね。“火蜥蜴”のローレッタだ」

 

「クライニアです。こちらの相棒はミアラッハ」

 

「クライニアとミアラッハね。よし、じゃあかかっておいで」

 

 背中に下げた長剣を抜いて、ローレッタが笑った。

 

 * * *

 

「え? いやふたり同時ってことですか?」

 

「ん? 銀ランクふたりと金ランクひとりなら、こっちがハンデつけないと勝負にならないだろう」

 

「いや、多分、それだと私たちが勝ちますよ」

 

「へえ。なんでそう思ったんだい」

 

「私は剣と魔法が得意なオールラウンダー。ミアラッハは槍に特化した前衛です。ローレッタさんがどれだけ強くても、私が魔法に徹してミアラッハが前衛を務める限り、勝ちは揺るがないと思います」

 

「ふむ……私も魔法は使えるし、剣も達者なつもりなんだがねえ。まあいいさ、なら順番に行こう。クライニアからいいかい」

 

「はい」

 

 私は〈ストレージ〉から剣を取り出して構えた。

 

「よし、いつでもかかって来な!」

 

「では。――〈マジックアロー〉!!」

 

「!?」

 

 シュパ! と魔法の矢がローレッタの膝を狙う。

 ローレッタは落ち着いて長剣で〈マジックアロー〉を斬り裂いた。

 その間に私は接近している。

 闘気法を使い、剣を振るう。

 

 ガキィン!!

 

 アダマンタイトの剣には〈ヘヴィウェイト〉が付与されている。

 想定より重い一撃を受けて体勢を崩したローレッタに、追撃の一撃を加える。

 ただそれは回避された。

 ローレッタも闘気法で身体強化をして、後方に飛んだのだ。

 

「やれやれ……なかなか面白い武器を使っているねえ」

 

「だいたい実力は分かりました。次で決めます」

 

「ほう。言ってくれる」

 

 ローレッタは静かに長剣を構え、動いた。

 

「〈疾空〉!!」

 

 〈空牙〉と同様の剣術だ。

 即ち、剣閃を飛ばす剣術である。

 

 牽制だったのは分かりきっていたので、落ち着いて回避する。

 その間に、ローレッタは接近してきていた。

 

「燃えろ!! 〈フレイムストーム〉!!」

 

「させない!! 〈カウンターマジック〉!!」

 

 ローレッタの〈フレイムストーム〉の発動を打ち消した。

 対応されるのは織り込み済みだったのだろう、長剣を振るうローレッタ。

 しかし剣の間合いなら、もう既に勝負はついたも同然だ。

 

「――!?」

 

 私はルマニールにローレッタの足を掴ませて、動きを止めた。

 アダマンタイトの剣で長剣を弾き飛ばして、私の勝利だ。

 

「なんだい、この足に絡まった黒い影は……」

 

「ごめんなさい。私、サモナーなんですよ」

 

「! そうか、シャドウストーカー……」

 

「御名答」

 

「気づかなかったよ。一本取られたねえ」

 

 本気を出せば、互いに魔法戦になっただろう。

 そうなれば大怪我は避けられない。

 剣で勝負をつけることになるのは途中で分かったので、遠慮なく使えるものは使わせてもらった。

 長剣を拾ったローレッタが、私の背後に立つミアラッハに声をかける。

 

「よし。じゃあ次。ミアラッハだったね。やろうか」

 

「え、はい……」

 

 気乗りしないらしいミアラッハは、しぶしぶ魔槍召喚した。

 

「凄まじい槍だね。楽しみだよ」

 

「お手柔らかにお願いします」

 

「そいつはどうかな――!!」

 

 ローレッタが走る。

 素早い突きがミアラッハから放たれた。

 

 ギィン!!

 

 長剣が跳ね上げられる。

 ミアラッハの魔槍がその隙をついて前進して突きを放った。

 ローレッタは長剣を持ち直しながら、下がる。

 だが縮地を発動したミアラッハに追いすがられて、ローレッタの首筋に槍の穂先が当てられた。

 

 勝負あり。

 

「……驚いた。急に間合いを詰められたみたいだが」

 

「私の勝ちでいいですよね」

 

「ああ。本当に強いな、ふたりとも。はじめにふたりでかかって来いと言ったのが恥ずかしいや」

 

 銀ランクの少女ふたりが、金ランクに勝った。

 いつの間にか周囲で見守っていたギャラリーたちが今の戦いを振り返って語りあっている。

 

 私だって、魔法なしならミアラッハには勝てない。

 私に近接戦で勝てなかったローレッタが、ミアラッハに勝てる道理はない。

 

「それじゃあ、これで失礼します」

 

「ん。ああ、……そうだね。付き合わせて悪かったね。ありがとう」

 

 私たちは今度こそ、宿に帰った。

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