ていうかどんなクラスだよ聞いたことないよ。
冒険者ギルドの鑑定師の前に、十の迷宮品を並べる。
鑑定師は慣れた様子で順番に物品鑑定をかけていった。
今回の宝箱からは、白いコート、チェス一式、バスケット、石版、『竜殺しの魔導書』、黒のジャケット、チョーカー、薬瓶、種、黒のニーソックスが出た。
まずは白いコート。
これは耐暑、耐寒の効果を持つ薄手のコートだ。
白いし、ミアラッハにちょうど良さそうなので確保しておく。
次にチェス一式。
駒の造形が凝っていて、盤面も装飾がある美術品だ。
もちろんチェスをして遊ぶこともできる点では実用品ともいえるが。
迷宮産の美術品コレクターに需要があるため、金貨5枚になった。
次はバスケット。
麦わらで編まれたカゴだが、なんと中身に時間停止の魔法がかかるというスグレモノである。
〈ストレージ〉のある私には不要だし、一緒に行動しているミアラッハも使い所はなさそうだ。
王侯貴族がピクニックやお茶会で使う一品として需要があるため、金貨50枚になった。
次に石版。
石には人類共通語で「汝の天職を見つけたり」と書かれている。
鑑定の結果、クラスを追加する効果がある天職の石版と分かった。
いきなり上級クラスが入手できたりする強力な消費アイテムだ。
ミアラッハには不要だが、私に欲しい。
確保した。
次は『竜殺しの魔導書』。
これはタイトル通り、竜に特攻のある〈ドラゴンスレイヤー〉という魔法が書かれた書物である。
基本魔法で使えるらしいので、確保。
いずれドラゴンと戦う日が来たら、使おうと思う。
なお亜竜にも効果があるらしいので、これ使ったらドレイクを瞬殺できそうだ。
次は黒のジャケット。
白いコートと同じく耐暑、耐寒の効果があるらしい。
私の装備が真っ黒なので、私用に確保確保。
次はチョーカー。
猫の鳴き声を出せるようになるチョーカーで、犬バージョンもあるらしい。
好事家が集めているらしく、金貨1枚になった。
集めてどうするんだろうか……。
次は薬瓶。
これはポーションだった。
迷宮産ポーションは品質が高いので確保だ。
次は種。
土に埋めて水を掛けると、数日でリンゴの木がなるというもの。
他の果物のシリーズもあるらしいが、リンゴは人気が高いらしい。
金貨10枚になった。
最後に黒のニーソックス。
これは単純に防御力が上昇するものらしい。
私用の防具として確保しておくことにした。
後は迷宮で剥ぎ取った素材を売却して、宿に戻る。
以前入手してミアラッハが履いている白いタイツを含めて、防具に〈リジェネレート〉を魔法付与しておいた。
これで多少の傷は自動再生する。
さて私は石版を使用しようか。
手を置いて、石版を消費する。
さてクラスは何が増えたかな?
《【転職】
サモナー(レベル19)
ノーブル(レベル10)
ファイター(レベル24)
スカウト(レベル33)
フェンサー(レベル29)
ランサー(レベル1)
グラップラー(レベル31)
プリースト(レベル20)
メイジ(レベル22)
ブラックスミス(レベル20)
アルケミスト(レベル26)
マーチャント(レベル1)
メイド(レベル1)
トリックスター(レベル1)
ウォーロード(レベル1)
カースドナイト(レベル1)
チャンピオン(レベル1)
アサシン(レベル21)
ビショップ(レベル1)
ウィザード(レベル22)
セージ(レベル24)
ネクロマンサー(レベル1)
パペットマンサー(レベル1)
パラディン(レベル1)
モンク(レベル1)
ルーンナイト(レベル22)
ハーミット(レベル1)
エンペラー(レベル1)》
……エンペラーって皇帝?
マジか、私の天職って皇帝だったのか。
ていうかどんなクラスだよ聞いたことないよ。
ノーブルの上級クラスはロードだったはず。
特殊条件で就くことのできるクラスだろうなあ。
皇帝として戴冠したときとか。
全部すっ飛ばして習得可能になったけど、……性能はどんなもんやら。
戦闘向きではなさそうだよね。
今晩から『竜殺しの魔導書』を読むという日課ができた。
そう分厚い本ではないので、数日もあれば読破できるはずだ。
〈ドラゴンスレイヤー〉は楽しみである。
なおサモナーは19レベル止まり。
新しいスキルはお預けだ。
* * *
師匠のもとで、今日も鋼の剣を打つ。
熟練度が貯まってきたのか、打つスピードが上がった。
それでもまだ魔法の武器には至らない。
結構な数を打ってるんだけどなあ。
夕食後のデザートを期待していたのだけど、どうやら宿の常連たちが群がってきてお菓子はなくなってしまったらしい。
そこは私たち用に取っておこうよ……。
「ごめんなさい。ちょうど大人数で来られたものだから……」
「まあ仕方ないか」
「ねえ。私、たまにはチョコレートが食べたいのだけど」
「うーん。チョコレートねえ」
「駄目?」
「いや、いいよ。私もたまには食べたいし」
「ありがとう!」
ミアラッハにねだられて〈ジェネレイトチョコレート〉を行使する。
ウェハースをチョコレートでコーティングした定番のお菓子である。
この世界ではまだカカオを見ていないため、チョコレートは私しか作ることができない。
冒険者を引退したら、ミアラッハとお菓子屋さんをやるのも面白そうだ。
さて今晩は事件があった。
深夜、寝静まった頃に、扉から物音がしたので目を覚ましたら、気配察知が数人の気配を知らせてきたのだ。
真夜中に乙女ふたりの部屋に入ろうとは、さては盗賊か。
冒険者ギルドで金貨の山を受け取ったのを見られているので、不思議はない。
カチャリ。
鍵が開けられると同時に、音もなく扉が開く。
蝶番に油でも垂らしたのだろうか。
私は起きて、〈ストレージ〉からアダマンタイトの剣を取り出した。
「おい、起きてるじゃねえか!!」
「チ。予定変更だ。おい、金を出せ。そうすれば生きて――ぐわぁ!?」
問答無用でひとり殺した。
「〈ストラグルバインド〉!!」
同時発動した〈ストラグルバインド〉が盗賊たちを絡め取る。
動けなくなった盗賊たちを、順番に処理していく。
最後のひとりを殺し終えたところで、ミアラッハが起きた。
「んー……? うわ、なにこれ」
「盗賊みたい。金を出せってさ」
「まったく気づかなかったよ」
「私が起きたから良かったけど……まったく。冒険者ギルドのせいだよねこれ」
「うん。大金を受け取っているのを見られているからね」
「あーもう。面倒だけど、宿の人を起こして部屋変えてもらおうか」
「だねえ……」
あくびをするミアラッハ。
私たちは着替えて、部屋の荷物をまとめた。