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「ステータスバグで人生が終わった!!」と思ったら前世の記憶が蘇り日本語で書かれたチートスキルを入手したご令嬢の冒険譚  作者: イ尹口欠
逃亡編

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有効打さえ出せれば見掛け倒しか。

 ゴブリンスケルトンの歩哨をワンパンで殴り飛ばして、破壊する。

 

 どうやら人為的にアンデッドを作り出して使役しているようだ。

 見張りを立てている辺り、本格的である。

 

 歩哨と魔力のパスが繋がっていれば、こちらの存在に気づいているだろう。

 まことに厄介なことに、アンデッドの歩哨は優秀だ。

 魔法知覚でこちらの存在に遠くから気づくため、せっかくの隠密補正も形無しである。

 

 と、ゾロリと気配が突然に増えた。

 

 大量のアンデッドを作成したらしい。

 どうやら術者は近くにいるようだ。

 

 闘気法を纏って多数の気配の方へと一気に進む。

 窪地になっているところに、ゴブリンゾンビの集団が生まれていた。

 

 ゴブリンゾンビの集団の背後、黒いローブを羽織った青白い顔の男がひとり、こちらを忌々しげに見上げている。

 どうやら魔族のようだ。

 

「人間め。私のことを見たからには、森から出られると思うなよ」

 

「ゴブリンのアンデッド風情に負ける要素は皆無だわ。そっちこそ、死を覚悟しなさい」

 

「ほざけ! 小娘ひとりに何ができる!」

 

 ゴブリンゾンビが私に向けて殺到してくる。

 それを魔法範囲拡大した〈ブリザード〉で一掃すると、魔族の男は目を剥いて後ずさった。

 

「くっ、何だその〈ブリザード〉は!?」

 

「ただの範囲拡大よ。じゃあ、そういうわけでさようなら」

 

 闘気法を全開にして疾走。

 右アッパーを顎に叩き込み、魔族は昏倒した。

 

「〈ウィンドカッター〉」

 

 首を刈り取り、トドメを刺した。

 一件落着、といきたいところだけど、そうは問屋がおろさない。

 

 森のさらに奥から巨大な気配が接近してくる。

 

 森の下生えを踏みにじり、バキバキボキボキと音をさせて木々を踏み荒らすサイズ感。

 トロールだ。

 しかも浅黒い肌からすると、ブラッドトロール。

 

 日光に弱いはずなのに、なんでこんな真っ昼間に動いているのか?

 

 気配察知には他に何も引っかからない。

 ブラッドトロールは日差しを受けても平然としている。

 

 こちらに向けて、一歩、大きく踏み出す。

 

 疑問は尽きないが、とにかく目の前の怪物を倒さなければ森からの脱出は困難を極めるだろう。

 

 腹を括って、距離をとった。

 

 * * *

 

 まずは魔法範囲拡大した〈ブリザード〉をお見舞いする。

 

「……って、嘘。レジストした!?」

 

 吹雪はあっけなく霧散した。

 当然、ブラッドトロールは無傷である。

 

 ジャンプ。

 

 ドン!

 

 準備運動でもするように飛び跳ねたブラッドトロール。

 地響きと振動で森の鳥がギャーギャーと喚きながら飛び去る。

 

「〈ストラグルバインド〉!!」

 

 地面から魔力の帯が生えてくる。

 その太い脚に絡みつき、動きを止めたかと思いきや、ブチブチと魔力の帯が千切れていく。

 コイツ、魔法に耐性があるの?

 

 主力がことごとく無効化される恐怖。

 ブラッドトロールは軽く前傾姿勢になると、右手を無造作に振るった。

 

 速い。

 

 ゴウ、とそこにあった空気を薙ぎ払う。

 

 私はさらなる後退をし、回避に成功していた。

 ブラッドトロールの動き自体は緩慢だ。

 しかし魔法が効かないとすると、こいつを仕留める方法がない。

 

 ……いや、まだふたつ魔法をレジストされただけ。

 

 手札はまだまだある。

 片っ端から試していくのがいいだろう。

 

「〈ライトニング〉!!」

 

 水平に飛ぶ稲妻が、ブラッドトロールに直撃。

 だがダメージになっている気配はない。

 体表を電流が走り、地面に吸い込まれていく。

 

「次! 〈フレイムランス〉!!」

 

 やはりレジストされた。

 身体に当たりはしたものの、火傷を負わせることもなく炎の槍は霧散した。

 

「〈コールライトニング〉!!」

 

 天から雷が降り注ぐ。

 しかしブラッドトロールは意にも介さず、前進してくる。

 

 私は後退し、次なる攻撃魔法を唱える。

 

「〈マナジャベリン〉!!」

 

 魔力でできた槍が、ブラッドトロールに突き刺さる。

 やった、レジストされなかった!?

 

 〈マナジャベリン〉は無属性の攻撃魔法の中では群を抜いて威力が高い。

 〈マジックアロー〉のような追尾性能はないが、ブラッドトロールの回避能力はお粗末なので、問題ない。

 魔法らしい魔法が効かないというのならば、案外、物理ダメージを与えるような魔法の方が効果が出るのかもしれない。

 

「試してみましょうか。――〈アイスセイバー〉!!」

 

 ドガァン!!

 

 側頭部に切り傷をつけるに留まったが、効果はあった。

 とはいえ硬い。

 やっぱりここは一番、効果の高い魔法で攻めていくべきだろう。

 

「〈マナジャベリン〉!!」

 

「GAAAAAAA!!」

 

 雄叫びが空気を揺らす。

 駄々をこねる赤子のように、拳を叩きつけてきた。

 後退して避ける。

 

 なんだ、有効打さえ出せれば見掛け倒しか。

 

 私は〈マナジャベリン〉を撃ち続け、血まみれになるブラッドトロールから距離を取りながら、長きに渡る戦いに勝利した。

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